東京電力福島第一原子力発電所の2号機の原子炉で、温度計の1つの値が70度前後と、ここ4日間で20度ほど上昇していることを受けて、東京電力は、6日夜のうちに原子炉への注水量を増やして、その後の温度の傾向を確かめることにしています。
福島第一原発の2号機では、原子炉の底にある温度計の1つが、先月27日には45度前後を示していたのが、その後、徐々に温度が上がって、5日午後4時には71.7度となり、特にこの4日間で20度以上と急激に上昇しています。このため東京電力は、6日午前1時半ごろに、原子炉への注水量を1時間当たり1トン増やして10.6トンとする対策をとりました。ところが、午前7時に73.3度を記録し、その後も、午前11時に71度、午後5時でも69.2度と、温度が高い状態が続いています。
この状況を受けて、東京電力は、6日夜のうちにも、原子炉への注水量をさらに1時間当たり3トン増やして、その後の温度の傾向を確かめることにしています。
一方、原子炉の底にあるほかの2つの温度計は、先月下旬以降変わらず、44度程度を示しているということです。
東京電力は、配管の工事に伴って、原子炉に水を入れる2つのルートのうちの1つをいったん止めて再開したところ、水の流れが変わり、溶け落ちた燃料の一部を十分に冷やせなくなった可能性が高いと説明しています。また、原子炉の周辺で気体の調査をした結果、核分裂が連続して起きる「臨界」のときに発生する放射性物質の「キセノン」は検出限界以下で、「臨界が起きていないことが確認できた」としています。
福島第一原発では、去年12月、政府と東京電力が1号機から3号機の原子炉で100度以下に下がったとして、「冷温停止状態」を宣言していますが、原子炉の状態は依然、詳しく把握できない状況が続いています。
東京電力は「冷温停止状態を受けて定められた新たな規定では、原子炉の温度を80度以下に抑えるよう求められている。注水量を増やして、温度が下がる傾向になるか、様子を確かめたい」と話しています。
今回の温度上昇について、経済産業省の原子力安全・保安院は、「複数の温度計があり、1つの温度計で一時的に80度を超えたとしても、原子炉の冷却に問題が起きているとは考えない」として、「冷温停止状態」が維持できているかどうかについては、「温度の条件だけでなく総合的に判断する」と話しています。
原子炉の冷温停止状態を維持するため、東京電力は先月、「保安規定」を見直し、原子炉の底の部分の温度を80度以下に維持するよう定め、原子力安全・保安院も見直しの内容を了承しました。
これは、冷温停止状態の条件の1つ、原子炉の底の温度が100度以下という方針に対し、温度計の計測に最大で20度の誤差があるためで、仮に今後、80度を超えれば、東京電力は、原子炉への注水量を増やすなど、緊急的な対策を取ることが求められます。
これについて原子力安全・保安院は、ほかにも2か所で原子炉の底の温度を測っており、おおむね45度前後で安定していることなどから、「1つの温度計で一時的に80度を超えたとしても、原子炉の冷却に問題が起きているとは考えない」として、「冷温停止状態」が維持できているかどうかについては、「温度の条件だけでなく総合的に判断する」と話しています。
しかし、今回の事態は、メルトダウンした核燃料など、原子炉の内部の状態を把握できていないことを改めて浮き彫りにしたことになり、こうした状況の中で「冷温停止状態」と判断した根拠などについて、国は納得のいく説明をすることが求められます。
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