原発事故の影響で避難区域に指定され、一時、すべての住民が避難を余儀なくされていた、福島県広野町は、来月1日から役場を元の場所で再開することを決め、すべての住宅などで放射性物質を取り除く除染を、ことし中に進める計画です。
福島県広野町は全域が原発からの距離が20キロから30キロの範囲にあり、「緊急時避難準備区域」に指定され、一時、すべての住民が避難を余儀なくされました。
去年9月に区域の指定が解除されましたが、住民の9割以上の5000人余りが町の外で避難を続けています。
町は住民の帰還を後押しするため、隣接するいわき市に移転している役場を、来月1日に、先行して元の場所に戻すことを決めました。
いわき市の役場の仮庁舎では、職員が役場の移転について住民向けの案内文を作る作業に取りかかっていました。
町は、学校や公共施設などの除染を夏までに終わらせ、来年度の2学期からは小学校と中学校を再開するほか、住宅や各企業についても年内に除染を終えたいとしています。
原発事故の影響で役場ごと避難している県内の9つの自治体では、川内村も4月に役場を元の場所に戻すことを決めています。
広野町の山田基星町長は、「放射能の問題をなるべく短期間で払拭(ふっしょく)させることが行政の役割で、地元に戻って、スピード感をもって除染や復旧・復興を進め、少しでも安心できる町づくりを進めていきたい」と話していました。
広野町では、国の委託を受けたJAEA=日本原子力研究開発機構が、役場周辺の除染作業を進めています。
今も250人が町に戻っていますが、人口の1割にとどまっていて、JR広野駅近くの商店街では人通りが少なく閑散とした状況です。
去年9月に緊急時避難準備区域が解除されたあと、すぐに戻って店を再開した美容院を営む松本マキ子さんは、「お客さんは週に2人くらいしか来ないけど、店がやっていないと、町に人は戻ってこないので、元気にならない。役場が戻るのをきっかけに、みんなに帰ってきてほしい」と話していました。
また、町内に戻ってきている80代の男性は、「町の将来のためにも、子どもたちに帰ってきてもらって、にぎやかにしてほしい」と話していました。
一方、広野町からいわき市の仮設住宅に避難し、自宅の掃除をするために戻っていた60代の女性は、「自宅が山沿いで、除染が行われていない。早く帰りたいけど、除染してもらえないと帰るに帰れません」と話していました。
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