振り込め 尽きぬ罠 被害者にアリバイ工作指南 仲間にも全貌秘密
産経新聞 2月6日(月)7時55分配信
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詐欺グループの組織図(写真:産経新聞) |
昨年11月、東久留米市の70代の無職女性に、息子を名乗って電話をしてきた振り込め詐欺の犯人は、会社の損害を弁済するため800万円を用立てるよう求めた後、こう付け加えた。
「会社に迷惑がかかるから、金融機関には、家のリフォーム代だと言ってほしい」
銀行などでは、高齢者が窓口で一度に多額の現金を引き出す場合、係員が理由を確認しており、被害者が「息子のため…」などと説明すれば、詐欺被害を警戒される。そのため「リフォーム代」と説明するように、指南したのだった。
無職女性は指南通りに、窓口で「リフォーム代」と答え、800万円が引き出された。800万円は、そのまま、「息子の同僚」と偽って自宅を訪れた詐欺グループの仲間の手に渡った。
▼リフォーム代
親族を装った振り込め詐欺で、警視庁が昨年10〜12月に起きた414件の手口を分析したところ、犯人が電話口で被害者に何らかの指示を出したケースは120件。このうち44件は、金融機関の窓口で声をかけられた際に、嘘をつくなどの対応を指示していた。
具体的には「家の新築・リフォーム代」(25件)が最も多く、「東日本大震災で被災した親族のため」と説明するよう求めた例もあった。金融機関への嘘だけではなく、自分たちの仲間で、現金を受け取りにいく役の「受け子」に対しても「現金だと分からないように書類などと言って渡してほしい」と、被害者に指示するケースも多くあり、27件に上った。
受け子はインターネットで募集したアルバイトで、事情を知らされないことも多い。詐欺の発覚を防ぐため、犯罪の全貌を、仲間にも知られないようにしているとみられる。
警視庁は被害防止のため、電話での会話を自動録音する機器を高齢者宅に無償で貸与する試みを4月以降に始める方針。録音した音声をデータベース化し、犯人の絞り込みや逮捕された容疑者の声と照合するなどして摘発強化を図る。
■ノルマ・役割細分化「まるで会社」
振り込め詐欺などの摘発を強化している警視庁は、昨年1年間で詐欺グループに所属する計404人を逮捕した。こうしたグループは末端メンバーに厳しいノルマが設定される一方、細かく役割分担されるなど組織の厳格化や細分化が進んでおり、捜査関係者は「まるで会社だ」と指摘する。
昨年10月、不良債権の買い取り手数料や社債販売名目で現金をだまし取ろうとしたとして詐欺未遂容疑で逮捕された男ら27人は、東京・四谷のマンションを拠点に活動。「シマ」と呼ばれる3つのグループに分かれ、学校の同級生や先輩後輩のつながりで集まった被害者に電話をかける複数の「架け子」を「番頭」が管理する体制だったことが判明した。
シマを管理する番頭は、架け子らに個別のノルマを設定。達成できない者にはたばこを吸わせないなどのペナルティーを科して、一般の会社顔負けの厳しい「労務管理」を行っていたという。
また同5月に交際相手を妊娠させたと嘘の電話をして示談金名目で現金をだまし取ったとして男ら12人が逮捕された事件では、暴走族のOBらで構成されたグループが関東近郊のビジネスホテルをアジトとして活動。指揮役や架け子、携帯電話や名簿の調達・運搬役、現金の回収役など、役割が細分化されていた。
警視庁幹部は「摘発したグループ末端の者はまるで会社員として働いているような錯覚に陥っており、罪の意識が薄い状態だった」と話している。
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最終更新:2月6日(月)16時48分
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