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01/08/11,12と
18,19 チャット 財政破綻と恐慌のケーススタディ
アルゼンチンの財政破綻事例
国債価格の暴落が、アルゼンチンで、1ヵ月前の2001年7月10日に起こった。(市中金利は、中央銀行の公定歩合で決まるのではなく、国債の売買市場で決まる。公定歩合は、それを追随するだけです)こうなると政府は資金調達ができず、職員の給料や、モノの購入の支払い、国債の利払いができなくなる。これが国家の倒産、つまりデフォルト(支払い不能)です。民間企業で言えば、銀行が融資を断った倒産状態と同じです。
国債が売れなかった理由
きっかけは、アルゼンチンの通貨(レアル)が、国際金融市場で暴落したことです。つまり、最初に海外の投資家が、アルゼンチン政府が発行する通貨の価値を信用しなくなった。
理由は、政府の赤字と貿易の赤字が、「限度を超えて」大きかったからです。
(1)政府当局は、限度と思わなかったが、
(2)国債を買う金融マーケットは、アルゼンチン経済の現状(財政赤字、貿易赤字)から考えて、もう「限度を超えた」と判断した。
このように、根本では、政府が言うこと、及び約束を、金融マーケットが信用しなくなった状態が、国家財政の破綻です。金融マーケットが、政府の言うことを信じなくなれば、日本でも同じことが起こります。これが、恐慌の根本の原因です。恐慌とは、信用の崩落です。
これで、どういう結果が生じるか?
通貨と国債価格の暴落は、政府信用が失われた状態です。それが起こると、以下のような、経済恐慌のプロセスをたどります。
1.恐慌の発生プロセス
(1)表面金利が暴騰する。金利が100%、200%を超えることもある。
(2)高金利で、負債の過剰な企業は、ほぼ全部が倒産する。
(3)株価は暴落し、企業活動、銀行活動が縮小し、物価は騰貴する。
(4)倒産で失業が増える。(アルゼンチンは16.4%:7月時点)
2.恐慌の治療のプロセス
(1)国際金融の安定に使命をもつIMF(国際通貨基金)が、アルゼンチンに緊急融資するが、条件として政府に緊縮財政を要求する。(IMFの資金は、先進諸国の出資でまかなわれます)
(2)アルゼンチン政府は、IMFの要求で緊縮経済を敷き政府予算を縮小する。
(3)さらに、失業と倒産が増える。
(4)通貨下落で輸入ができず、物資が不足する。
3.恐慌の収束プロセス
(1)国民が従来の生活水準を低下させ、
(2)実質賃金を低下させ、
(3)政府支出が、税収とバランスし、
(4)輸入が減り、貿易収支がバランスする「見込み」が出たところで、底を打つ。
(5)このプロセスで企業は世代交替し、次世代経済に向かう。
1997年〜98年の経験
アルゼンチンと同じことは、1997年〜98年に、タイの通貨危機が端緒で、マレーシア・インドネシア・韓国に波及、ロシアはデフォルトを起こした。これはある日、誰かが市場の歪みに気がついて、突然に起こる。それが、信用(=通貨)崩落の怖いところです。ドルペッグ(米ドルとの実質固定相場)を敷いていたタイの通貨崩落は、誰よりも速く歪みに気がついた<ヘッジファンド>がバーツ売りで仕掛けた。タイ中央銀行はバーツ買いで対抗したが、数日で手持ちドルが枯渇しヘッジファンドに利益を与え負けた。タイの富はヘッジファンドに移った。東南アジアでは、通貨崩落の連鎖が起こった。
日本で起こるのかどうか・・・
日本で、国家財政と円の信用下落が起これば、世界第2の経済大国ですから、即日に世界恐慌になる。
<円−ドル−ユーロ>の世界経済は、金融の貸借の面で、深く相互依存。3つのうち、どれが崩れても、世界は瞬間にパニックになる。諸国が、金融と貿易の相互依存、つまり100人101脚競争で脚を縛りあって走っていると想像したらいい。このなかで45%の比重が、米国+日本です。
円の信用恐慌が起こるかどうかの鍵
鍵は、1030兆円(先週のチャットテーマを見て)の実質負債を持つ日本国の財政を、(1)国民と、(2)海外投資が信用し続けるかどうかです。財政赤字と不良債権が、今後も増えるようなら、信用崩落につながる。国民の預金取り付け騒ぎも、起こる。国際金融市場は、大幅な円安(円の下落)を予想し、円を売ります。当然、円の国債、株価も暴落する。
(2001年7月現在、東証の50%の売買を行う外人組みは、円安なら日本株(円での計算)の保有では為替差損が生じるからです。)
不良債権処理の意味
一方、国の総借金である1030兆円が減少に向かう兆し、可能性が見えれば、国家財政の信用は、崩落しません。しかし、それは通貨の増発を行わないことを意味しますから、国内経済は金融が締まって、デフレ基調が更に強くなる。これが不良債権処理です。
マネーの本質は発行者信用であり、恐慌とはその信用の下落
民間と政府の不良債権処理、構造改革は、それなしで済ませる問題ではない。それを行わないと、今はまだ信用を保っている国家財政と円の信用が、低下する。マネーの本質は信用です。紙幣が流通する理由は、それを発行する国家の信用があるからです。恐慌とは、その国家信用が、無くなった状態を言う。
日本発の恐慌論に関して
経済ジャーナリストで日本発恐慌を唱えている人もいますね。読むと、表面的な論述で留まっているのが多い。ここで、恐慌を考察します。 恐慌が起こるかどうかは、どこで判断できるか?
以下の3つです。
(1)政府の赤字で円が信用を失って、円売り(ドル買い、またはユーロ買い)が起こり激しい円安になる。
(2)国債が暴落し、市中金利が上昇し、マネーサプライが減って銀行活動が縮小する。
(3)国民が、銀行・生保・年金を信用しなくなり、銀行から多額の預金引き出しを行い、生保を解約し、年金を払わなくなる。
以上の3項目のうちいずれかが起これば、恐慌になります。一方(1)円と、(2)国債と、(3)金融機関の信用が崩れなければ恐慌は起こらない。 じゃ、恐慌が起こるとどうなるか? これを説明している人も、意外に少ない。
ハイパーインフレ型恐慌
(1)円の増発で、紙幣(通貨)が、信用を失う。
(2)円を使った経済取引がスムーズにできなくなる。
(3)結果として、企業の生産活動、流通活動が縮小する。
(4)生産物の不足で、物価が騰貴する。
※現在、トルコがこのハイパーインフレです。
デフレ型恐慌
(1)不良債権で銀行を通じたマネー供給に障害が起こり、信用乗数が低下、マネーサプライが縮小する。
(2)市中で、商取引と投資のための円が不足する。
(3)円不足の結果として、生産活動、流通活動が縮小する。
(4)生産物は、過剰なものと不足なものが同居する。
(5)対策として中央銀行は円の増発を行い、その結果、通貨が信用を失い、逆に、ハイパーインフレ型恐慌に向かう。
以上2つはいずれも、本来は正常に生産・販売を続けることができる企業を倒産させ、失業を数倍にする結果を生みます。東南アジア・韓国で1997年に起こったことです。
日本の恐慌の可能性は、ゼロではない。政府と日銀が経済運営に失敗すれば、起こる。日本の恐慌は、インフレ型であれデフレ型であれ、今後、政府・日銀が経済運営に成功するか、失敗するかにかかっているのです。政府及び日銀が信用を失うかどうか、ここが焦点。信用を失う兆しが見えれば、国際金融はそれをチャンスと見て、円の過剰評価分の利ざや取りを狙った、円売りを仕掛けます。それが前兆になる。
来週のテーマは日本経済で、この2〜3年のキーになる指標はなにかを見ます。
《参考》 国債(及び債権)の、現在価値の計算方法について
【国債の5年後の、表面価値の計算】
100円額面の、表面利率10%の5年もの国債は、
(1)政府が毎年10%(10円)の利払いをし、
(2)5年後には100円を返済することを約束した債権(借金の証文)です。それが、100円で売れれば問題はない。
例えば、5年間での「期待受け取り額(利息+元本)」は以下の計算です。
10円×(1.1の4乗+1.1の3乗+1.1の2乗+1.1の1乗+1.1)+100円(元本償還)=10円×6.1+100円=161円
(1)ここで、マーケットの予想金利(=予想インフレ率+リスクプレミアム)が10%なら、
(2)市場は{5年間の福利(61円)+元本100円}=161円を期待し、この国債は100円で正常に売れます
【国債の5年後の現在価値の計算】
ところがマーケットが予想するインフレ率が20%で、リスクプレミアムが10%あると判断すればどうなるか?
<予想インフレ率の上昇>とは、通貨への信用が失われた状態です。
<リスクプレミアムの上昇>とは、国家財政信用が失われた状態。
この2つを理解してください。
期待金利は30%(=20%+10%)になる。そうなると、5年間の国債で受け取る元利合計の161円の「現在価値」は、161円÷(1.3の5乗)=161÷3.7≒44円に下落します。これは100円額面の国債が44円、あるいはそれ以下でしか売れないことを意味します。「国債価格の暴落」です。国家財政を、国民と投資家が信用しなくなった結果です。
8/13チャット報告 12日は何度もアクセスを試みたがエラーが出てオープン出来なかった。よって11日だけの報告 来訪者は5名で参加者は2名でした。チャットは低調でした。来週もこのテーマにしたいな!
8/20チャット報告 18日は訪問者が5名で参加者が4名でした。19日は訪問者は0名です。参加者がほんとに詳しく知っており今の状況を愁ている事です。要点を載せられると良いと思うが難しい点もあり、今後の課題です。 しば9
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