ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
inside
【第680回】 2012年2月3日
著者・コラム紹介バックナンバー
週刊ダイヤモンド編集部

給食の放射能検査に予算計上
それでも不十分な内部被曝対策

previous page
2

 また、万が一異常値が出ても、原材料の産地などを把握していればそれを追跡し、原因をつきとめることもできる。

 もう一つのメリットは、給食検査によって累積の内部被曝量のデータを蓄積することができることだ。

 国は放射性物質を含んだ食品を摂取することによって起こる内部被曝で健康に被害が出ないとする値を、生涯累積で100ミリシーベルトと定めている。それにもかかわらず、原発事故後の約10ヵ月間、われわれが実際に食べた食事にどのくらい放射性物質が入っていたのかについては、ほとんどデータがない。

 給食検査では、これまでの内部被曝の状況はわからないが、少なくとも今後は、日常的にどの程度放射性物質を摂取しているのかがわかるようになる。

 「まずは子どもを優先させ内部被爆の実態を、ある程度の期間継続して調べることが必要」と、自治体の給食検査体制づくりなどを支援してきた早野龍五・東京大学教授は話す。

 本来であれば、こうした実際食べるものの検査は、学校給食のみならず、広く一般的に行われるべきだ。国では1980年代から各自治体で日常食検査(各家庭で食卓に上る食事中の放射能検査)を行ってきたが、2008年に廃止されてしまった。

 今のところ、廃止された国の日常食検査が復活する予定はない。今回予算計上される給食検査ですら、「全ての自治体に強制するものではなく、実際にかかる費用を国と自治体が折半する形になる可能性が高い」(文部科学省)という。

 給食検査に予算がついたことはまずは前進といえる。だが、長期的な視点で国民の内部被爆を抑えるための体制にはほど遠い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

週刊ダイヤモンド

previous page
2
Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事


DOLSpecial

週刊ダイヤモンド最新号

 

医師の秘密
働き方・収入・訴訟リスク・医学部受験 全調査

  • 目次
  • Part 1医師の実像
  • 勤務医、開業医以外にも働き方さまざま
  •    
  • Illustration知られざる医師の働き方
  • 第一線で働く医師に密着!
  • Diagramデータで見る医師の世界
  • Part 2医療界の実態

週刊ダイヤモンド
2012年2月11日号
定価740円(税込)

underline
週刊ダイヤモンド
昨日のランキング
直近1時間のランキング

週刊ダイヤモンド1冊購読

話題の記事

週刊ダイヤモンド編集部


inside

産業界・企業を取り巻くニュースの深層を掘り下げて独自取材。『週刊ダイヤモンド』の機動力を活かした的確でホットな情報が満載。

「inside」

⇒バックナンバー一覧