また、万が一異常値が出ても、原材料の産地などを把握していればそれを追跡し、原因をつきとめることもできる。
もう一つのメリットは、給食検査によって累積の内部被曝量のデータを蓄積することができることだ。
国は放射性物質を含んだ食品を摂取することによって起こる内部被曝で健康に被害が出ないとする値を、生涯累積で100ミリシーベルトと定めている。それにもかかわらず、原発事故後の約10ヵ月間、われわれが実際に食べた食事にどのくらい放射性物質が入っていたのかについては、ほとんどデータがない。
給食検査では、これまでの内部被曝の状況はわからないが、少なくとも今後は、日常的にどの程度放射性物質を摂取しているのかがわかるようになる。
「まずは子どもを優先させ内部被爆の実態を、ある程度の期間継続して調べることが必要」と、自治体の給食検査体制づくりなどを支援してきた早野龍五・東京大学教授は話す。
本来であれば、こうした実際食べるものの検査は、学校給食のみならず、広く一般的に行われるべきだ。国では1980年代から各自治体で日常食検査(各家庭で食卓に上る食事中の放射能検査)を行ってきたが、2008年に廃止されてしまった。
今のところ、廃止された国の日常食検査が復活する予定はない。今回予算計上される給食検査ですら、「全ての自治体に強制するものではなく、実際にかかる費用を国と自治体が折半する形になる可能性が高い」(文部科学省)という。
給食検査に予算がついたことはまずは前進といえる。だが、長期的な視点で国民の内部被爆を抑えるための体制にはほど遠い。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)