ヒト・ヱニシ - つながる、ヒトとヒト、ヒトとモノ、ヒトと自然 - yenishi

医療ジャーナリスト 熊田梨恵の「女の生きごこち、ひとごこち」

「暮らし」と「医療」の
間にあるもの

「医療」。なんだかカタい言葉に聞こえますね。でも「ヘルスケア」や「健康」とかだと身近な感じがします。私も日頃から「ヘルスケア」を意識して運動や食事にも気を遣います。情報収集もするし、美容やダイエットに関する話はやっぱり興味津々です!もちろん調子を崩して医療機関にかかることもありますが、窓口で「あれ、以前より少し高いな」と思って院内掲示板を見ると、制度が変わって窓口負担が増えていたりします。田舎に住む実家の両親と近隣の公立病院に行くと、ある診療科が医師不足で閉鎖になっていたり、手術後短期間で退院を迫られて戸惑ったり…。自分の体に興味はあっても、その体に必要な医療を取り巻く環境の変化は意外と気付いてなかったりします。

私は今まで、医療記者として医療関連の行政や政治、現場を取材してきました。

はっきり言ってこの業界は難しく、法や制度はとても複雑です。政治家や官僚でもきちんと理解している人は少ないと感じます。国の会議では専門用語が外国語のように飛び交い、そうこうするうちに制度ができあがり、私たち一人一人の「ヘルスケア」や「健康」に大きな影響を及ぼします。事故や病気でかかるクリニックや病院、買う薬、妊娠・出産・育児、うつ、救急医療、インフルエンザなどの感染症やワクチン接種、身内の介護や看取り…。いざ関わってから慌てたり、知らないことが多くて困ったり。例えば先ほどの窓口負担や入院期間短縮の話。私は制度を取材しているのでなぜそうなっているのか大体想像できますが、一般の方なら「突然どういうこと?」と思うのが当たり前だと思います。医療は私たちの生活と密接に関わりますが、困ってからでないと真剣に考えないし、知らないことだらけだと思います。でも私たちが無関心でいる間に、複雑な制度はせっせと作られ、法改正も行われています。

この“溝”って何?おかしくない?というのが私の考えていることであり、橋渡しをしたいと思っているところです。こんなふうに「生活感」と政治や行政がかけ離れていると、私たちも制度をより良くするためのアクションを起こしにくいと思います。私ができることとして、分かりにくい医療・介護の制度や仕組みを私なりの視点から分かりやすく伝えて、知識を得たり疑問を感じたりしてもらいたいと思います。この繋がりを大事にすることで、“自分ごと”として医療の問題を捉えていけるのかなと思います。

熊田梨恵の主な著作物
『救児の人々~医療にどこまで求めますか』(ロハスメディア)
『共震ドクター~阪神、そして東北』(ロハスメディア)
『女性セブン』(小学館)の連載「闘う女医宋美玄の命の白熱教室」で毎週対談中!
熊田梨恵
[医療ジャーナリスト]
わかりにくい医療・介護をわかりやすく伝える医療ジャーナリスト。患者向け医療情報誌「ロハス・メディカル」論説委員、「それゆけ!メディカル」編集長、社会福祉士、ヘルパー2級。医療・介護現場も経験。