ラブストーリーのように突然なのに、ボクの人生に巧妙に絡みつく「出会い」。これは偶然か、必然か。
その日、社長は社員30余名全員に話をしていた。「…という訳で、我が社は解散することとなりました。」
ザワ。色を失う先輩たち。でもゴメンナサイ。僕だけ心の中でガッツポーズ。
「これで役者の道に踏み出せる。」
就職して尚更、役者への想いは募る一方だった。でも担当の仕事は増え、先輩たちとは仲良くなる。そんな時、人生がグワンと反転した。迷わず1コマ進む。
さて。スタアには憧れるがスカウトは無い。人よりは遠回りした。ならば“劇団”なるところで地力付けるが一番!と決め、演劇雑誌のオーディション欄を開いてみる。おお。あるわあるわ山ほど劇団。その中で“ベニサンピットにて3週間の本公演を予定”という劇団にマルを付ける。名前は知らないが、老舗劇場デビューは悪くない。
何よりオーディション日が余所に比べ一番早い。一刻も早く始めたくて、とにかく度胸試しで応募。今思えば、随分生意気で不謹慎だ。若さって、凄い。
オーディションは3日間。
僕は、何かの映画や舞台を観て衝撃を受けたとかいう劇的な動機を持たない、“気付けば役者志望になっていた”というありふれたタイプで、特技も無かった。つまり何の武器も持っていなかった。でも不思議なことに、面接やら、音楽に合わせて体を動かすやら、台詞覚えて芝居するやらの色々が、実に楽しい。己の中に貯め込んだ表現欲求が嬉々として鳴動し始めたようだ。
最終日、後の同期となる男が「知ってる?ここ男優集団なんだってよ」と教えてくれて飛び上がるほど驚いたのだが、オーディションを通じ、この劇団に既に人生の価値を見出せそうな気がしていた僕には、それも良しと思えた。
後日、この名前も知らなかったStudio Lifeという劇団から「合格」との電話をもらった。
導かれるようにたどり着き、スッと肌に馴染む。出会いの方程式さながらに、まさしく僕は役者人生に出会った。あれから15年。偶然か、必然か。運命の女神が仕掛けた悪戯は、うまい具合に人生を運ぶ列車となった。
日常にいくつも転がる「出会い」。でもそれは一瞬の炎。フッと消えてしまう前にサッと掠め取りたい。そうしてめぐり逢えた出会いたちは、コツコツとボクの血となり肉となる。そんなアレコレを綴ってゆきたいと思う。どうぞお付き合いください。