2011年12月10日 2時32分
生活保護制度改革に向けた厚生労働省の中間とりまとめ案が9日、明らかになった。保護費の半分を占める医療費(医療扶助)抑制策として検討していた、受給者の医療費への自己負担導入や、安価な後発医薬品(ジェネリック)の使用義務化案は見送る。想定していた来年の通常国会での生活保護法抜本改正は断念し、医療機関への指導強化といった運用面の改善にとどめる。同省は12日の「国と地方の協議」で中間案をとりまとめる。
生活保護受給者は今年8月時点で過去最多を更新し、約206万人に達した。保護費は今年度予算で3.4兆円。その半分を占める医療扶助には患者の自己負担がなく、過剰診療をする医療機関の存在も指摘されることから、受給者が全国最多の大阪市などが自己負担導入を可能とする制度改革を主張し、厚労省も検討していた。
医療費の自己負担案は、先月の政府の政策仕分けでも提言された。ただ、憲法が保障する「生存権」の侵害にもつながりかねず、自治体や民主党内にも反対意見がある。同党厚労部門会議の生活保護ワーキングチームは先月末の意見書で「今後更に検討すべき取り組み」としたが、同省の中間案では一切、触れないことになった。
医療扶助抑制策として厚労省は、新薬の特許切れ後に発売される後発薬の使用義務化も検討した。
だが08年に同じ趣旨の通知を自治体に出し、猛反発を浴びて撤回した経緯があり、最終的に「義務化」の文言を削除した。
こうした結果、中間案は、レセプト(診療報酬明細書)点検や、医療機関への指導を強化するよう自治体に通知するなどの運用改善策にとどまった。このほか、不正受給対策として、就労先、銀行などに対する収入・資産調査の強化、告発基準策定などを挙げている。【石川隆宣】