【パリ宮川裕章】フランスで昨年の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数)が2.01となり、人口維持の目安となる「2」を4年連続で上回った。経済危機の中、「プチベビーブーム」が人々に明るい話題を提供している。仏専門家は「フランスにおける育児と仕事の両立のしやすさ、手厚い出産奨励策などが低出生率に悩む日本など他の先進国との違い」と説明している。
仏国立統計経済研究所の17日の発表によると、昨年の出生率2.01は、70年代以降で最高水準を記録した10年の2.03を下回ったものの、欧州連合(EU)加盟27カ国中ではアイルランドの2.07に次ぎ2位。日本の1.39(10年)などを大きく上回る。29歳以下の女性では出産の減少傾向が続くが、30~40代で大幅に増える「高齢多産化」が特徴だ。
仏出生率は64年の2.91以降、低下傾向が続き、94年に1.66を記録した後、上昇に転じた。仏国立人口研究所は回復の要因として、(1)男女平等意識の浸透や育児休暇制度、保育施設の拡充などで女性の子育てと仕事の両立が容易になった(2)子どもの多い家庭を優遇する手当と税制度(3)結婚より手続きが簡単で、ほぼ同等の税控除などを受けられるパクス法の制定(99年)で婚外子が増えた--ことなどを挙げる。
国立人口研究所のプリウ研究部長は「日本も含め、女性の家事負担が大きい国ほど出生率が低い傾向があり、『結婚、出産すれば女性は家庭にとどまる』という意識を変える必要がある。フランスでは政府の補助政策の効果が大きく、結局は予算をどうするかの政治的な選択だ」と語る。
4月に大統領選挙を控えるサルコジ大統領は演説でしばしば出生率に触れ、「見よ、この人口(出生率)の躍動感を」と胸を張る。フランスでは米格付け会社による仏国債の格下げや失業率の上昇など暗い話題が続いているが、堅調な出生率が「希望の光」となっている。
毎日新聞 2012年1月23日 19時46分(最終更新 1月23日 20時39分)