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社説:テレビ事業不振 独創性で競争力向上を

 日本の電機メーカーが苦戦している。パナソニックが、12年3月期で過去最悪の7800億円の赤字を計上する見通しを発表したほか、シャープも2900億円、ソニーは2200億円などと軒並み赤字決算を予想している。

 各社に共通するのは、テレビ事業の不振だ。かつての稼ぎ頭が、韓国メーカーなどとの競争で失速する中、新たな収益事業を生み出す独創性が求められている。

 テレビ事業の不振は深刻で、会社全体では黒字を予想している東芝もテレビ事業は赤字を予想する。日立製作所は1月に、テレビの自社生産から撤退することを決めた。

 テレビの販売は、国内外で大きく落ち込んでいる。

 国内では、昨年の地上デジタル放送への完全移行に伴う買い替えや「家電エコポイント」による需要増の反動が大きい。昨年10~12月の販売額は前年同期の2割程度にまで激減した。

 海外市場も欧州債務危機の影響を受け、低迷した。特に欧米では、韓国メーカーとの価格競争が厳しい。円高が、競争力を低下させ、円建てでの価格下落にも拍車をかけた。「売れば売るほど赤字が膨らむ」という嘆きも聞こえる。

 確かに行き過ぎた円高は日本メーカーの競争力をそぐ。市場の過激な動きに対しては、政府の適切な対応が求められる。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などの経済連携協定で、輸出の障壁になる関税を引き下げる努力も必要だろう。

 しかし、円高などの外部要因が解消すれば、日本メーカーの競争力はテレビの世界シェア1、2位を独占する韓国勢をしのぐほどに回復するのだろうか。

 米ラスベガスで1月に開かれた世界最大の家電見本市で、韓国のLG電子とサムスン電子は、世界最大級の55型の有機ELテレビを発表した。大型化が難しいとされる次世代テレビの技術で、日本メーカーは後じんを拝した格好だ。

 「世界最高」を誇ってきた日本の製造業の技術力は、テレビ事業ではもはや過去のものになりつつある。その結果、テレビはメーカーによる差別化が難しいコモディティー(日用品)化している。

 こうなると、韓国メーカーなどに太刀打ちできない。このままでは、国内の空洞化が進みかねない深刻な事態だ。

 日本メーカーが、世界の市場で競争力を取り戻すためには、他のサービスと連携するなどして付加価値の高い事業を生み出し、新たな需要を呼び起こす必要があるだろう。国内製造業の創意に期待したい。

毎日新聞 2012年2月5日 2時32分

 

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