プロレス界の悪役マネジャー“将軍ＫＹワカマツ”こと若松市政さん

＜若松市政さん＞

　８０年代から９０年代のプロレスシーンでサングラスにムチと拡声器を手に、リング内外で暴れ回った悪役マネジャーがいた。ナゾの覆面レスラー「ストロング・マシーン軍団」やアンドレ・ザ・ジャイアントを率い、アントニオ猪木を苦しめた元プロレスラーの“将軍ＫＹワカマツ”こと若松市政さんだ。今どうしているのか。

「定数１２のところに１４人が立候補した去年４月の市会議員選挙もおかげさまで６７２票、１０位で当選しました。これで４期連続当選。しかし、前回も定数１４に対して１６人が立候補して、５９５票で１３位だったでしょう。毎回、薄氷を踏む思いですよ」

　札幌と旭川のほぼ中間、かつては炭鉱で栄えた山あいの町、芦別市。そこの市役所２階の議員控室で会った若松さん、まずはこう言った。さすが元プロレスラー、「今年は例年になく大雪」（若松さん）というのに、上半身はＴシャツ一枚だ。

　函館生まれ、芦別育ちの若松さんは国際プロレス、新日本プロレス、ＳＷＳを経て、北海道で「どさんこプロレス」を設立。その巡業の際、芦別市政が破綻寸前なのを知り、９９年、市議選に立候補した。

「もちろん、名前が“市政”だから、市政に携わるようになったわけじゃありません、ハハハ。９０年、観光客を当てにして第三セクターで開業したテーマパーク『カナディアンワールド』が大赤字の末、９７年に閉園に追い込まれましてね。莫大な債務問題が発生するとともに、過疎化と高齢化、それに産業の空洞化で芦別市はニッチもサッチもいかない状態に追い込まれていました。その状況を打破するには旧来の方々に任せててはダメだと思い、芦別市に骨をうずめる決意をしたんです。当時は定数２０で２４人が立候補。ワタシは５３８票で１７位でした」

“アントニオ猪木を震え上がらせた男”はしぶといのだ。

　ここでちょいと閑話休題。

「将軍ＫＹワカマツ」はアメリカで暴れ回っていた当時につけられたリングネーム。また、「ＫＹ」は当然のことながら「空気が読めない」ではなく、「プロレスデビューで大恩があった国際プロレスの故吉原功社長の頭文字をいただいた」そうだ。

　さて、市議になって１４年目。その成果はいかに？　ちなみに、若松さんはどこの会派にも所属していない。

「一匹狼というとカッコいいですが、やっぱり、それなりの苦労はありますよ。とはいえ、自分で選んだ道ですから。芦別市の将来に関しては、正直、暗澹（あんたん）たるものがありますね。なんせ慢性赤字体質がたたり、いまや財政再生団体寸前。５年前に芦別市財政健全化計画を策定して大リストラの真っ最中でして、市役所職員の削減に合わせ、市長は給与の２０％と期末手当を０．２カ月分削減してるのに加え、ワタシたち議員も毎月の報酬と期末手当を約１０％カットしました。報酬は額面月額３１万５０００円ですから、議員といっても左ウチワなんてあり得ません」

　ただ、２０年近く前に夫人を亡くし、２人の子供はとうに独立。市内に一戸建てでひとりで暮らしている分には十分だという。

「もう７０歳。レスラー時代の無理がたたり、足腰はガタガタ。歩くとどうしても足が引きずり気味になってしまいます。でも、議員としてヤル気はまったく衰えていませんよ。まだまだ道半ば。これからも郷土のために一身を捧げるつもりです」

（日刊ゲンダイ2012年2月3日掲載）