2012年2月4日 19時36分 更新:2月5日 0時51分
【モスクワ大前仁】3月4日投票の大統領選を1カ月後に控えたロシアで4日、政権に抗議する野党勢力が国内各地で公正な選挙の実施を求める大規模な集会を開いた。反政府集会は昨年12月の下院選結果をめぐって抗議運動が本格化して以来3回目で、今年に入って初めて。参加者は政権与党候補プーチン首相(59)の大統領返り咲き阻止を訴えた。一方、プーチン支持派も独自に集会を開いた。
首都モスクワでは、気温が氷点下20度近くに冷え込む中、反政権民主派連合「国民自由党」が中心となった抗議行動に12万人以上(主催者発表)が参加。警察発表でも約3万6000人と「ソ連崩壊後最大規模」とされた前回の昨年12月24日(約3万人)を上回った。参加者はデモ行進に続いてクレムリン近くのボロトナヤ広場で集会を開き、下院選の結果見直しやチューロフ中央選管委員長の解任など政府に対する五つの要求を採択した。
反政府デモは第2の都市サンクトペテルブルクや極東のウラジオストク、シベリアなどでも開かれた。主催者側は次の集会を大統領選直前の2月26日に開く方針。
一方、モスクワの戦勝公園で開かれたプーチン首相支持派の集会には、警察発表で約14万人が参加。主催者は「(野党勢力による)革命を許してはならない」と訴えた。
抗議集会の主体となった民主派勢力は、全国規模で開かれた集会を通じて、大統領選に向けた「反プーチン」の機運盛り上げを狙った。野党候補4人のいずれかへの投票を呼びかけ、第1回投票でプーチン首相の得票率の過半数割れを実現し、決選投票へ持ち込む戦略を描いている。
大統領選の第1回投票で、プーチン氏の優位は変わっていない。先月発足した市民組織「有権者連盟」に参加する著名エコノミストのイリーナ・ヤーシナ氏(47)は、「有権者が個々に支持する(野党)候補に票を入れることで(票を分散させて)、プーチン氏を決選投票へ引きずり出したい」と訴える。
さらに「(第1回投票で過半数を得られずに)決選投票で選ばれた大統領(の意味合い)は違ってくる」と指摘。プーチン氏が最終的に当選した場合でも、次期政権に政治改革を実施するよう圧力をかけられる環境作りを視野に入れている。集会参加者からも「大規模集会を繰り返し、抗議の声を伝えていく」(19歳の男子学生)との声が上がった。
今回の抗議運動で主体となっているのは、ロシアで「中間層」と呼ばれる人々だ。政府推計で98年当時は人口の5~10%程度だったが、現在は20~30%を占める。モスクワでは、平均月収4万~5万ルーブル(約10万~12万5000円)が一定の目安になるという。
モスクワで昨年12月24日に開かれた抗議集会の出口調査では、調査対象791人のうち7割が大卒以上の学歴を持つと回答。職業別では、専門職の社会人が46%、実業家や役職に就く社会人が25%を占めた一方で、学生や主婦など所得のない市民は14%だった。高学歴で一定の収入を持つ階層が参加していることを裏付けている。
4日の集会に参加したドミトリー・マトビエフさん(38)は、04年からインターネット上で電子機器を販売する企業を経営しているという。下院選直後から抗議運動に加わっており、次期政権に対しては「メディア規制を緩和し、司法制度を改革すべきだ」と求めた。