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2012年1月31日 (火)

BL読者はホモフォビアか?

 さて今日は、ちょっとヘビーな話題です。

 よくBL小説を掲載しているブログやHPに伺うと、「ボーイズラブが苦手な方は閲覧をご遠慮ください」などといった趣旨の但し書きを見かけたりします。

 私は特に、こうした但し書きもせずにブログにBL小説を掲載していますが、いまのところ誹謗・中傷のたぐいはもちろん、いわゆる「荒らしコメント」のようなものも受けたことはありません。

 でもちょっと前は、こうしたBLサイトに風当たりが強かった時代もあったのではないかと思います。

 私はBL小説を書くにあたって、このあたり事情も少しは知らなきゃなーと思って、いくつかのBLに批判的なサイトも時々覗いてみるんです。

 そうすると少し前、いまは亡き栗本薫先生などが人気絶頂だった時代には、こうした「腐女子バッシング」的な動きも多かったことがわかりました。

 これはもう、「アンチ腐女子」の方に言わせれば、我々「腐女子」の側にもいろいろな問題があったことは否めませんが。

 私はあるゲイの男性が、栗本薫先生に送った抗議のメールを読ませていただきました。

 その中には「なるほどなー」と納得できる部分も多々ありました。
 もちろん「それはどうかなー」と思う点もありましたが。

 これは私の感想ですから、必ずしもその方の意図を正確に表しているかはわかりませんが、当時のいわゆるBL小説における「ゲイ」の描き方が、あまりにも現実離れしていて、実際の「ゲイ」の方々のイメージを少なからず悪くしている、という趣旨のように読めました。

 私は、その昔「JUNE」とか「やおい」とか言われていた時代の作品をすべて読んでいるわけではありませんから、あまり正確なことは言えません。

 でも私は、大学生(女子大でした!)の時に一時、漫画研究会に入っていました。

 そのとき先輩たちが描いていたのがいわゆる「不条理漫画」というもので、男同士の恋愛ものでした。

「不条理漫画」、なーんていうと、なんだかすごく暗い、ダークな印象を受けるでしょう?
 それが実際、ものすごく暗くて救いのない作風ばかりだったんですよー(笑)

 それはもう、いまの「ちょっとダークな作品」の比ではありませんでした。
 深いトラウマを抱えて社会的に阻害されている二人の主人公が絡み合い、そのまま心中してしまう、みたいな(笑)
 ほんとにほんとに暗くて救いのない話がほとんどだったんです。

 つまり、私も含めて当時の「腐女子」たちは、「男同士の恋愛に走る」=「何か心に傷やトラウマを抱えていて、通常の人生を送れないような特殊な人」というイメージを抱いていたんですね。

 たぶんほとんどの人が実際の「ゲイ」の方など知らなかったでしょうから、作品を生み出すときに「同性にしか恋愛感情を抱けない男性って、どんな人だろう?」と想像したとき、ついうっかり、そうした暗いイメージになってしまったのでしょう。

 また、当時流行っていた『風木』や『処天』などの作品が、かなり暗いトラウマ的な描き方だったことも大きく影響したことは否定できないと思います。

 しかし、こうした「救いのない」作品が、私たちの心を掴んでいたことも確かです。
 当時の私は、いま思えばそれほどの悩みもなく生きていましたから、かえってそういう暗く救いのない世界に憧れ、ハマってしまったのかもしれません。

 ですがそれは、実際の「ゲイ」の方たちの実像とはあまりにかけ離れています。

 しかも、あたかも「ゲイ」の方々が全員、そうした暗いトラウマを抱えた、「特殊な人」であるかのような描き方が、結果的に実在する「ゲイ」の方々の印象をひどく損ない、また彼らの心を深く傷つけてしまったことは大変申し訳ないことでした。

 いまのBL小説は、その頃のものよりはずいぶんと明るい感じにはなりましたが、それでも必ずしも実際の「ゲイ」の方々の現実の姿を正確に表現しているとは言い難いし、もしかしたらそのことで、実在する「ゲイ」の方々の印象を悪くし、また気分を害し、ご迷惑をおかけしているのかもしれません。

 私は、たとえプロではないにしても、曲がりなりにもBL小説を書いて公式なブログに発表する以上、実在する「ゲイ」の方々の存在を、決して忘れてはいけないのではないか、と思っています。

 みなさんもそうだと思いますし、私もそうですが、BL小説を読む者として、決して「ゲイ」の方々に否定的な感情を持ったり、差別的なものの見方をしているわけではないし、むしろその逆だと思っています。

 しかし、だからといって、「私はゲイの方々にとても理解がある」などと、安易に言ってはいけないということもまた、よくわかっているつもりです。
 
 私たちは小説を書く上で、「BLは、恋愛ファンタジーなのだ」などと言って、「ゲイ」という言葉を気軽に使ってしまいますが、私たちが描く小説の中の「ゲイ」は、本来実在する「ゲイ」の方々とは大きく異なる存在である、ということは、常に考えておかなければいけないのだと思います。

 その上で、あくまで架空の恋愛小説として「ゲイ」や「同性愛」という言葉を使わせていただき、楽しませていただいている、という感謝の気持ちを持って、作品を読んだり書いたりしたいですよね。

「ボーイズラブ」というジャンルが市民権を得て、世の中にもあるていど認められ、これは実際の「ゲイ」の世界とはまったく違うものなのだ、という一般認識ができてきた今だからこそ、私たちはそれほどのストレスなくBL小説を書いたり発表したりできます。

 そのことを感謝しつつ、私たちBL読者、そしてBL作者が「最大のホモフォビアだ」などと言われないよう、作品づくりにも気をつけていきたいな、と思っています。

 さて、次回もちょっとこの話題が続きます。

「ホモフォビアと言われないために……」

 今日の話題を受けて、我々BL作家はいったいどんなことを気をつけなくてはいけないのか?
 私なりに考察したことを発表してみたいと思います。

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コメント

こんばんは!
今回の話題は私自身素通りしていたことですが、でも、みおさんの言葉ではたと思い当たることがありました。
もう長いお付き合いのお友達で、でも彼女は腐女子じゃないのでBLもほぼ未体験。
ただ、彼女はゲイ雑誌の「薔薇族」を読んでたことがあって、それで、
たまにBLの話題になると「リアルなゲイ」をいつも連想されるんです。
彼女の中では「ボーイズラブ」と実際の「ゲイ」の境が、多分明確じゃないってことですよね;

私はのん気に「そうなんだー」って感じで話してたんですが;;
もっと深い意味がそこにあったんですね……あらためて気付かされました!!
うーん、深い。興味深いお話をありがとうございますっ★^^

ほとんどの書き手さんは、読者から転向されているようなので、ほとんどBLを読まない自分の考えとは違うと思いますが、自分は、BLは小説と言うよりただのエロだと思っています。
そして、読者も書き手も現実のホモには興味が無いし、目の前で見たら、どん引きしちゃうのが現実だと思っています。

口では、BLはファンタジーだと言いながら、BLは男同士だから妊娠の心配がない。だから安心してエチシーンも楽しめる、等とリアル丸出しの事を言う。そして、妊娠の恐れのない男の受けにシンクロして疑似セックス(恋愛)を楽しむ。
BL愛好家は、ある種の性同一性障害だと言われるのも解る気がします。

でも、それはそれで良いと思っています。男性がエロ本を読むのと同じ感覚でBLを読む。
女性だって、性の欲望があって当たり前だと思いますから。
多分それは、みなさんも判っているのではないのでしょうか。でも、子供の保護者会や会社、学校で、
自分はBLを書いています。とか、読む本はBLです。とは言えない。
そこで、自分なりに高尚な言い訳を考えて宣っている…のだと思います。

自分のリア友にもホモカプがいますが、暗く陰鬱とはしていませんが、堂々と明るく開放的とも言えません。やはり人目を気にして、二人で歩く時も手を繋ぐこともありません。
それに、必ずアナルセックスをする訳ではありませんよ。
でも、BLではアナルセックスは必ず必要です。と言うより、それが無いと読者は読まない。

現実とBLは全く別です。なので、同性愛者に気遣いをしているつもり…は、
彼らにとって、不快以外の何物でもないと思います

だから、同性愛者に云々…とは言わず、自分はエロが好きで読むし、書いている。
BLは、エロファンタジーそう言った方が、ゲイの方々も納得されるのではないでしょうか。
因みに、自分もBLを書いていますが、出てくるキャラの多くは、リア人物がモデルです。 
エロはほとんど無い…と言うよりエロが書けなくて困っています。

★aliceさん。

 えーっとこういう話題はどうもヘビーでいけませんね。
 でも、私はついつい考えてしまうんですよ、これはもう癖ですね(笑)

 実は私、榎田尤利先生の『普通の~』シリーズを読んで、セクシャリティーについてもちゃんと知っておかなければいけないなーと思ったことがきっかけだったんです。
 あのシリーズでは、実際の『ゲイ小説』ではないにしても、セクシャリティーの専門家にもきちんと話を聞いて書かれたということをお聞きし、さすがは榎田先生だなーと感心したこともあって。

 aliceさんのリア友さんのようなケースもあるんですよね。
 だから、私たちもほんのちょっとそういうアンテナを張って世の中を見てみると、また違った世界が開けるかもしれませんよね。

★アホの子さん。

 まず最初に、こういうヘビーな話題に率直なご意見をいただきありがとうございます。
 アホの子さんには実際にホモカプのリア友さんがいらっしゃるということで、実際のゲイの方の心情に根差したしっかりとしたご意見として受け取らせていただきます。

 実は私も、一組だけ、ホモカプの知り合いさんがいらっしゃるんですよ。
 そのカプは日本人ではないので、日本に観光旅行に来られた時にいろいろとご案内したのですが、外国に来ているからだったのかな?
 堂々と手を繋いでいらして、私はすごく微笑ましくて好感を持ちました。
 これは、私が腐女子だからとか、そういうこととはまったく関係なく、日本もこうしたカプが堂々と手を繋いで歩けるような社会になったらいいな、と心から思っています。

 BLと実際の同性愛がまったく異なるものだ、という考えは、私もまったく同感です。
 ですが、私が何冊か読んだゲイの方の手記や、また時々訪問させていただいているブログのゲイカプの方などの記事から、こうした方々の中にもBL小説やコミックを楽しまれる方もいらっしゃるのだと知りました。
 それなら、私たちが描くBL小説の中の言葉にも、そうした方々への配慮もあったほうがいいのかな、と思っているんです。

 ただ、同性愛者に気づかいしているつもり……といった発言や記事が、彼らに不快な思いをさせてしまう可能性もある、ということもまた、しっかりと心に留めさせていただきたいと思います。

 アホの子さんもBLを書かれるということですが、エロが書けなくて困る、というそのお優しさもすばらしいと思います。
 私はまったく架空の恋愛小説としてエロありの作品を書いていますが、エロのないBLもあっていいと思っています。
 そうした作品もぜひ読んでみたいです。

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