- [PR]
事件
【from Editor】「絆」試される がれき処理
「えらいことになってます」
東日本大震災で発生した大量の震災がれきをめぐり、受け入れ方針を示した神奈川県の黒岩祐治知事と住民との対話集会が、知事に対する“つるし上げ集会”になっているという。取材記者の報告を聞き、3度目の集会に出かけた。
1月30日、県庁3階ホールに用意された280の椅子は埋まり、後方には取材記者やカメラマン、テレビカメラが列をなしていた。人いきれはするものの静まりかえった会場は、知事の説明が始まると、ヤジと怒号に包まれた。
「なんで東電の尻拭いを神奈川県民が負うんだよ」
「岩手の知事になったら」
ほかにもいろいろあったが、怒号が反響し合って聞き取れない。説明する黒岩知事の言葉も、もちろん聞こえず、やがてマイクを手に立ちつくし顔を紅潮させた。進行役の絶叫で説明は再開されたものの、質疑応答を含む2時間半に及ぶ集会は不規則発言でたびたび中断し、マイクで発言する住民の声は「反対」一色だった。
がれきの処理は原発事故の影響の大きい福島県が県内処理するのを原則とされ、宮城、岩手両県の約2千万トンの処理が急務だ。県内処理量の10年分に相当する435万トンを抱える岩手県は、うち57万トンの広域処理を要請している。既に同県宮古市のがれき処理を始めた東京都は、国の安全基準(焼却灰の放射性セシウム濃度1キロあたり8千ベクレル以下)に沿って厳格に測定しながら作業にあたっている。
神奈川県の案では横浜、川崎、相模原の3市でがれきを焼却し焼却灰を横須賀市西部の県の産業廃棄物最終処分場に埋める。基準は原子炉等規制法で「放射性物質として取り扱わない」1キロあたり100ベクレル以下のがれきだ。焼却すると濃度は16~33倍になるが、それでも東京都よりはるかに厳しい。
このあたりの黒岩知事の説明も、コンクリートと特殊粘土を重ねた上に遮水シートを二重に敷いた処分場の構造説明も、怒号とヤジの声にかき消された。
会場には反原発運動グループの一員とみられる男女もいたが、会場には来ない一般住民の中にも反対の声は少なくない。理由は不安と不信。子供を抱えた近隣住民の不安はわかる。だが「大丈夫です」と厳格な基準を示して訴える行政の言葉が届かない。特に環境省の説明に住民は厳しかった。
震災から11カ月。共感や励ましで結ばれた日本人の絆は、重い課題で、その強さが試されている。(横浜総局 風間正人)
関連ニュース
- [PR]
- [PR]