広島

　マツダ本社工場への突入事件の裁判員裁判は３日目の３１日、広島地裁（伊名波宏仁裁判長）で被害者ら３人の証人尋問があった。４番目にはねられて右目を失明した男性社員（３７）は、家庭での苦労や職場に復帰できていない現状を語った。【中里顕、寺岡俊】

　起訴内容によると、この社員は出勤途中、引寺（ひきじ）利明被告（４４）運転の乗用車に時速約４０キロのスピードではねられ、顔面粉砕骨折などの重傷を負ったとされる。

　検察の質問に対し、社員は入退院を繰り返す苦悩の日々を吐露。８歳と６歳の２人の子どもがおり、一番つらかった出来事を「子どもとのキャッチボール」と挙げ、「子どもの投げたボールの距離感がつかめず、捕れない」と短く話した。事件前はバンパーの成形作業にあたっていたが、「時間内に作業をする自信がない。刃物を使う仕事なので、たぶん無理だろう」と復帰の難しさを説明した。

　社員は今後も手術を控えているが、「運良く後遺症は残っていなかった。引きずることなく前を向こうと思う」と語った。

　弁護側は「面と向かって言いたいことはないか」「事件のきっかけはマツダ社員の集団ストーカー行為で、恨むならその人たちを恨んでほしい」と引寺被告に代わって質問。社員は「特にない」などと短く答えた。

　１日も証人尋問がある。

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　◇男性社員一問一答

　【事件で顔面粉砕骨折などの重傷を負った３７歳の男性社員】

＜検察側＞

検察官　事件当時のことは覚えているか。

証人　　記憶がない。次の記憶があったのは病院の集中治療室で事件から３日後だった。

検察官　奥さんは何と言っているか。

証人　　生きていてくれて良かったと。

検察官　被告に対して思うことは。

証人　　一人の尊い命が失われたが、私には何もできない。裁判員の皆さんに全て委ねる。

＜弁護側＞

弁護人　引寺被告がどうしても聞きたいと言っていることを代わりに質問する。まず被告に面と向かって言いたいことはないか。

証人　　ない。

弁護人　今回の事件はマツダ社員の集団ストーカー行為が原因。恨むのならその人たちを恨んでほしい。それを聞いて思うことは

証人　　特にない。