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研究者の不正行為についてのお詫びとご報告

 

平成24年2月3日

 

社会の皆様、並びに本学関係者の皆様へ

 

                                                  獨協医科大学

                                                   学長  稲 葉 憲 之

 

研究者の不正行為についてのお詫びとご報告

 

 先に、新聞等の報道にありましたとおり、本学において「研究者の研究論文における不正行為」が発生いたしました。研究活動における不正行為は、本学の信用を著しく損なうだけでなく、科学の信頼性を揺るがしかねない大問題であり、極めて遺憾であります。社会の皆様をはじめ、在学生並びにご父母、卒業生、本学関係者の皆様には、多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを衷心より深くお詫び申し上げます。
 ここに今回の問題の概要と今後の改善措置について下記のとおりご報告申し上げるとともに、本学すべての研究者が、研究倫理の向上に務め、今後、このような事態を二度と起こさないよう全学をあげて再発防止に取り組み、信頼回復に努めて参る所存であります。

 

 

 

1.告発者による指摘の概要
         昨年1月末に学外の告発者から、本学研究者の研究論文に捏造、改ざん、二重投稿の疑いがある旨の指
     摘があり、本学に対し調査を行うよう要請があった。これを受け、予備調査を行った上で「研究者の不正行為
     に係る調査委員会」を設置し、研究者の事情聴取を含め調査を行った。
         告発の内容は、獨協医科大学の10人の研究者の27編の論文に対し43件の指摘項目が挙げられている。
     それらの指摘のうち、1番から40番までの指摘項目ではデータの「流用」があるとし、これらを捏造としている。
     また、41番から43番では、二重投稿について指摘している。

 

2.調査委員会による調査の経緯
         告発者による指摘を受け、予備調査を行った上で2月4日に学外者2名を加えた10名による「研究者の不正
  行為に係る調査委員会」(以下「調査委員会」という)を設置した。委員構成は次のとおりである。

 

職 名

氏 名(肩 書)

委員長

寺野  彰(学長)

委 員

稲葉 憲之(副学長)

吉田 謙一郎( 〃 )

新江  進(学外委員)

錦織 雅司( 〃  )

増田 道明(医学部教授)

正和 信英(  〃  )

井上 晃男(  〃  )

平石 秀幸(  〃  )

中田 英夫(事務局長)

   なお、調査委員会の最終構成は、学長交代などがあり、次のとおりとなった。

 職 名

氏 名(肩 書)

委員長

稲葉 憲之(学長)

委 員

吉田 謙一郎(副学長)

北島 敏光( 〃  )

新江  進(学外委員)

錦織 雅司( 〃  )

増田 道明(医学部教授)

正和 信英(  〃  )

平石 秀幸(  〃  )

中田 英夫(事務局長)

  調査委員会は告発者の指摘事項及び指摘事項以外の範囲を対象に、「競争的資金に係る研究活動における不正行為対応ガイドライン」(文部科学省)、「研究活動の不正行為への対応に関する指針」(厚生労働省)及び本学における研究活動に係る不正行為の基準を基に、該当研究者の事情聴取を含めて調査を重ねてきた。
  調査委員会による調査の経緯は、次のとおりである。

 

 

平成23年1月 31日(月) 告発状が送付される
               2月 2日(水) 予備調査を実施
               2月 4日(金)「 研究者の不正行為に係る調査委員会」を設置
               2月 9日(水) 第1回委員会を開催【研究者への事情聴取実施】

             ※以降、10月までに計8回の委員会を開催し、研究者への事情聴取をはじめとする実態調査を行った。
                 また、同委員会委員1名に委員以外の学内研究者1名を加えた「ワーキンググループ」を組織し、「研
                 究者の事情聴取と保存データの確認」「告発者の指摘以外の論文等に関する調査」を実施した。

 

3.研究論文の捏造等の疑惑に関する調査結果

 (1)研究活動に係る不正行為の定義
             調査委員会では、上記文部科学省のガイドライン及び厚生労働省の指針に準拠し、発表された研究成
          果の中に示されたデータや調査結果等に「捏造」、「改ざん」、「盗用」の一つ又は複数が存在する場合、
          「不正行為」と定義付けした。ただし、故意によるものではない場合は不正行為には当たらないものとす
          る。

※参考        
          文部科学省のガイドラインにおける不正行為等の定義

   本ガイドラインの対象とする研究活動は、文部科学省及び研究費を配分する文部科学省所管の独立行政法人の競争的資金を活用した研究活動であり、本ガイドラインの対象とする不正行為は、発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造と改ざん、及び盗用である。ただし、故意によるものではないことが根拠をもって明らかにされたものは不正行為には当たらない。

 (1)捏造

       存在しないデータ、研究結果等を作成すること。

 (2)改ざん

       研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工す
      ること。

 (3)盗用

      他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な
      表示なく流用すること。

          厚生労働省の指針における不正行為等の定義

    本指針の対象となる研究活動は、厚生労働省が所管する競争的資金並びに国立高度専門医療センターが所管する委託費及び助成金を活用した研究活動であり、本指針の対象となる不正行為は、論文作成及び結果報告におけるデータ、情報、調査結果等の捏造、改ざん及び盗用に限られる。なお、根拠が示されて故意によるものではないと明らかにされたものは不正行為には当たらない。

  (1)捏造

         存在しないデータ、研究結果等を作成すること。

  (2)改ざん

         研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工す
      ること。

  (3)盗用

         他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な
      表示なく流用すること。

 (2)指摘事項に対する調査結果
          1)元データの確認
         2004年からの実験日誌の存在を確認したほか、異なる実験に代用していた画像のうち6点について
      はオリジナル画像を発見できなかったが、それ以外についてはデータが電子的に保存されていること
      を確認した。
    2)指摘事項1番から40番に対する調査結果
        類似している複数の画像があり「データの捏造」が疑われるという指摘について、保存されたデータ
      と比較・検討を行い、以下のような結論に達した。
                   なお、指摘事項ごとに整理した結果、改ざんが疑われる箇所が69件に分解でき、その件数により調
      査結果を示した。
      ○不正行為と判定した件数                 ・・46件
       内訳 
                 ①    見栄えを良くするため画像を代用しているケースで、オリジナル画像を発見できなかったもの
                         (本件区分を改ざん①と呼称する)                     ・・5件
                 ②    見栄えを良くするため画像を代用しているケースで、オリジナル画像があるもの(本件区分を改
                         ざん②と呼称する)                                   ・・33件
                 ③    見栄えを良くするため、方法論も同じ代表的な実験データを流用したもの(本件区分を改ざん③
                         と呼称する)                                           ・・8件
                 ①    ~③のいずれにおいても、学術誌において査読後に受理されるまでの期間を短縮して論文数を
                 増やしたいために、不正行為であることを認識しながら行われていたことが確認されたため、「改ざ
                 ん」と判定した。調査の結果、これらの改ざんにより論文の結論に本質的な影響はない。また、医学
                 及び当該学術誌への信頼を損なう行為ではあるが、論文の結論を左右するものではないことから、
                 学術の進展に大きな影響を与えているものでもない.
               ○不正行為に当たらないと判定した画像使用件数  ・・23件
                 ①    比較検討した結果、異なる画像であると判定したもの(18件)
                 ②    不注意により画像を誤って掲載したケース(2件)
                 ③    指摘が不適当と考えられるケース。(3件)

    3)指摘事項41番から43番に対する調査結果
                  三つの論文において画像及び大部分の文章が他の論文と同一であり、二重投稿に当たるという指
              摘がある。調査の結果、いずれも論文全体の約8割が同一内容の論文がそれぞれ二つの学術誌に掲
              載されている。しかしながら、これらは前述した定義上の不正行為(捏造、改ざん、盗用)に当てはまら
              ない。しかも、研究者によれば、いずれも後に投稿した一方の学術誌を研究会の抄録であると誤認して
              いたため投稿したものであり、故意によるものではなかった。

 (3)指摘事項の範囲以外の論文等に対する調査結果
             告発された指摘事項の範囲以外の論文等に関する調査を行った結果、一つのデータを二つの論文に掲
         載しているケースを1件認めた。
             見栄えの良い画像を示すため、実験結果及び画像は類似しているものの、種類の異なる実験の結果を
         代用しているケースである。これについては「改ざん①」に当たるとし、不正行為があったものと判定した。

 

4.不正行為に関しての関係者の責任度合

       指摘された27編の論文の内、不正行為に該当する10編の論文については、7名の研究者が筆頭著者と
           して、また、18名の研究者が論文の共著者として関わっている。
             次に、これらの筆頭著者及び共著者の各論文への関与について調査した結果、告発の主な対象となっ
          ている服部良之研究者(本学内科学{内分泌代謝}教授 当時56歳)のみが、不正行為に関与したと認定
          した。
             認定理由は、筆頭著者となった論文だけでなく、共著者となった論文においても、実験データの選択、
         実験結果の解釈及び英文作成等のすべての業務を担っていたからである。
             服部研究者以外の6名の筆頭著者は、服部研究者の指導を仰ぐ立場にあったので、論文について口を
         挟めるような状況ではなかった。また、17名の共著者は、論文の基本的な内容については服部研究者に
         任せていたので、特段、改ざん等に該当するという認識もなかった。本件のケースは、いずれも真正な結
         果に類似する見栄えの良いデータを代用又は流用したものであることから、論文の結果から特に疑念を抱
         くことはなかった。
            なお、いくつかの論文の共著者である主任教授については、10論文中9論文において、研究上の助言は
        行ったが、内容を把握していなかったことから、不正行為には関わっていない。ただし、主任教授としての
        管理責任は免れられない。

 

5.不正行為と認定された研究に係る論文と補助金の関連性
             不正行為に認定された研究に係る論文と補助金との関連性については、以下のとおりである。
             具体的には、平成20年度科学研究費補助金『基盤研究(C)』の研究計画調書又は実績報告書には、4
          編の論文について記載がある。また、平成16年度厚生労働科学研究費補助金の総括研究報告書には2
          編の論文、平成17年度厚生労働科学研究費補助金の総括研究報告書には1編の論文、平成18年度厚生
          労働科学研究費補助金の総括研究報告書には1編の論文についてそれぞれ記載がある。
             調査委員会では研究者に対し、不正行為に該当する論文と補助金との関連性についても事情聴取を行
          っている。委員会としては、論文の結論に影響を与えるような操作を行っているものではなく、むしろ真正
          の結果に類似する、より鮮明なデータを代用したものであり、オリジナル画像を発見できなかったものにつ
          いても不適切な使用が行われたということは確認されなかったことから、研究活動自体は適切に行ってい
          たものと判断した。

 

6.関係者の処分
            保存データを調査の結果、論文の結論に本質的な影響はないものの、データの改ざんは、本学就業規
        則第59条(15)号『本学の内外を問わず、不法又は不正な行為を行った者』に該当する。以上から、告発の
        主な対象となっている服部教授については、就業規則違反が明白であるため、懲戒委員会の議を経て懲
        戒処分の対象とした。処分内容は、本人の本学へのこれまでの貢献度や反省度合いについても勘案しつ
        つ、不正行為と認定された論文の件数が多いこと、教授として研究規範に責任を持つ者であることから、平
        成23年4月30日付けで諭旨退職とした。他の研究者は、不正行為には関わっていないが、共著者等として
        の責任はあることから学長注意とし、当時の学長と対象講座の主任教授は管理責任により、給与の一部を
        自主返納もしくは減給処分とすることが決定した。

  

7.本件に係る発生要因及び改善措置
  (1)発生要因
            本学では平成19年度に、公的研究費の管理・監査のガイドラインに沿った体制を整備したのを機に、「獨
        協医科大学における研究者の不正行為に係る調査委員会規程」を制定し不正行為が発生した場合に適切
         な対応をとることとしていたが、本学に研究上の倫理意識に欠ける一部の研究者が存在したことは否めな
         く、本件が発生した要因として、科学者、研究者としての自覚が不足していたことが挙げられる。
  (2)改善措置
            本学では平成19年度に、公的研究費の管理・監査のガイドラインに沿った体制を整備したのを機に、「獨
        協医科大学における研究者の不正行為に係る調査委員会規程」を制定したが、今後はさらに、「科学研究
        費補助金の取扱いに関する説明会」等において不正防止計画推進室長から、研究倫理の遵守について強
        く注意を促すとともに、機会ある毎に通知等を配付することとする。また、研究者への自覚を促すために、研
        究倫理を守り絶対に研究活動上の不正行為を行わないよう従来の誓約書の内容を改善して全員に再提出
        させる。

 

以上