【増税のウソ】野田が突き進む財政再建“真ギャクの道”

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2012.02.03


野田佳彦首相【拡大】

 さて、財政再建の達成とは「政府の負債対GDP比率の改善」という定義になるわけだが、野田政権は「増税による政府の負債対GDP比率の悪化」という、真逆の道を突き進んでいる。日本の政府の負債対GDP比率を改善するには、デフレから脱却し、名目GDPを成長させるしかない。デフレ期の増税は、無論、名目GDPの成長を抑制する。

 デフレ期の増税は税の種類と関係なく問題だが、特にまずいのが消費税の増税だ。何しろ、消費税にはスタビライザー(安定化装置)としての機能がほとんどない。日本の法人税や所得税は、名目GDPの動き「以上」に激しく変動する=図参照。すなわち、景気が悪くなった場合には一気に税収が減り、逆に景気が良くなれば大きく増えるのだ。

 「だから何だ」と言いたいかもしれないが、これは所得税や法人税が、景気悪化時に「民間の負担を緩和させる」機能を果たしていることを意味している。

 例えば、赤字になった企業は法人税をほとんど払わなくて済むが、言い方を変えると「赤字企業は法人税支払いの負担から解放される」ということでもある。法人税の負担を免除された赤字企業は、景気回復による黒字化までの時間を稼ぐことができる。

 決算が赤字になったにも関わらず、法人税を黒字期同様に払わされると、企業は耐えられず、倒産するかもしれない。

 また、失業者は所得税の支払い負担から解放される。このように法人税や所得税は、景気低迷時に企業や家計の負担を軽くする、スタビライザーとしての機能を持っているのだ。

 ところが、消費税にはそれがない。図の通り、消費税はGDPの増減、すなわち景気の変動にほとんど左右されない安定財源だ。「安定財源」と書けば聞こえはいいが、別の言い方をすると、赤字企業や失業者も容赦なく支払いを求められる税金なのである。

 すなわち、消費税は所得税や法人税以上に「弱者」を直撃する税なのだ。デフレ不況が深刻化する中において、赤字企業や失業者からも消費税は徴収され、彼らの「復帰」を妨げる。

 消費税が「安定財源」であるという事実は「不景気でも民間の税負担が重い」ことを意味しているのだ。野田政権はデフレが深刻化しているなか、よりにもよって「不景気でも税負担が重い」消費税を上げようとしているのである。増税はデフレを深刻化させる効果があるが、なかでも消費税が最悪だ。

 現時点の消費税増税は、日本のデフレ脱却の足かせになり、名目GDPの成長を妨げ、税収を減らし、わが国をさらなる財政悪化へと導くことになる。

 ■みつはし・たかあき 1969年、熊本県生まれ。大学卒業後、外資系IT業界数社に勤務。現在は株式会社「三橋貴明」事務所社長。著書に「国民の教養(扶桑社)」など。

 

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