2012年02月02日(木) 23時28分58秒

【修学旅行】有事の今こそ日光はやめよ ~被曝回避へ校長は勇気ある決断を

テーマ:被曝

学習と思い出の場である修学旅行先をめぐり、親たちの間で子どもの被曝を懸念する声があがっている。全小学校が、数十年にわたり栃木県日光市を修学旅行先にしている横須賀市では、行き先の変更を求める請願書が12月の市議会に提出されたほか、勇気を出して校長に直談判をした母親もいる。しかし、市議会は反対多数で請願を不採択。母親の訴えを受けた校長も、必死の求めを一蹴した。宿泊を伴う校外活動に対し承認権を持つ市教委は、「日光でなくてはいけないというわけではない」と各学校の「裁量権」を認めており、壁は厚いが校長が決断さえすれば日光以外の修学旅行先も選べる。「観光客の減少を修学旅行で埋めるな」─。母親らの訴えを、各校長は真摯に受け止めよ。真の教育者であるならば、長年の慣行や経済原理に縛られず子どもたちの命を優先せよ。有事の今こそ、勇気ある決断を求めたい



【母親の訴えを一蹴した女性校長】

「限界を感じました。修学旅行先を日光以外に変えさせるのは無理ですね。これからどう動いたら良いのか分かりません」

横須賀市内に住む母親(35)は、疲れ切った表情で話した。

もうすぐ6年生になる娘。秋にも予定されている修学旅行の行き先を日光以外に変更してもらおうと、校長に直接訴えた。さまざまな資料を用意し、必死に話した。緊張のあまり時が経つのも分からなかったが、気付いたら一時間が経過していた。しかし、女性校長の回答はあまりにもあっけなかった。

「お気持ちは分かります。でも、行き先は変えません。検討もしませんよ。日光市の放射線量は基準値以下ですから大丈夫ですよ」

今度は、校長が日光修学旅行のメリットを説く番だった。

小学生が集団で移動するには距離がちょうど良いこと、世界遺産であること、他校と一緒に実施することで費用を抑えられることなどを話した。児童の被曝を不安視する言葉は一つも無かった。挙げ句には「(経済的理由などから)日光に家族旅行に行かれない子どももいる」。最後に、被爆地から県外へ転校した際「原爆、原爆」とからかわれた実体験を引き合いに出し、母親にこう言った。

「分かりますよね、お母さん」

あなたのような心配が風評被害を生むんだ─。そうとでも言いたげな校長の言葉に、母親は愕然としたという。「子どもの被曝よりも、そんなことを考えているのかと。西日本へ行って何かアクシデントが起きたら仕方ないけれど、わざわざ日光に行くことはないんです」

そんな母親の姿に、娘は「そりゃ修学旅行には行きたいけれど、行かない方が良いのかもね」と話しているという。

「かわいそうだと思うし、つらい。でも健康被害の懸念を抱えたまま旅行をさせるわけにはいかない。行き先が変わらないのなら、せめて放射線量の低いルートにするなどのプランを考えて欲しい」

母親は涙を浮かべた。学校や市教委の今後の対応次第では、直前に不参加を決める可能性もあるという。

それでも学校は、苦渋の選択を親に強いるのか。
民の声新聞-陽明門
修学旅行コースの定番、日光東照宮の陽明門。

昨秋は、横須賀市内の全47小学校が日光を訪れた

(日光市ホームページより)


【市議会への請願も不採択】

保護者が個として学校や市教委に掛け合わなくても良い方法を、と市民グループ「NO!NO!放射能ミーティング@よこすか&みうら」(http://noradioactivity.seesaa.net/ )は、昨年11月末から始まった横須賀市議会に、日光以外の非汚染地域へ修学旅行先を変更するよう求める請願書を提出した。

「修学旅行という名目の下、高濃度に汚染された場所へ子どもたちを半ば強制的に行かせることに疑問を持った」と同会。しかし、12月1日に開かれた市議会教育福祉常任委員会の席上、所見を求められた市教委の学校教育部長の答えは「NO」だった。

「日光は歴史・文化遺産に満ち溢れており、長年修学旅行先として採用してきた。日光市では、すべての学校が何の制限もなく通常の教育活動を行っており、現段階では何の支障もない。修学旅行先を変更することによって、さらなる風評被害を起こす」として、被曝回避を理由にした修学旅行先の変更を拒んだ。

市教委は「日光市と綿密に連絡を取り合っており、空間放射線量が高くないことを確認している」と繰り返し答弁するが、同グループが資料として添付した文科省の「航空機モニタリング」については、同省のホームページを見るだけで担当者への直接確認は無し。日光市の安全性を確認した根拠も「地図上、毎時0.1-0.2μSVの範囲だったから」。これには一部市議から「出来る限り、市民の想いに寄り添って答弁してほしい」と注文がついた。「他市での行き先変更の動きは把握しているか」との質問には「神奈川県内の一部地域で変更した事例があるが、地震への不安が理由で放射線量への懸念ではないと認識している」と答えた。

市教委の答弁によると、昨秋に実施された日光への修学旅行には、3人の児童が参加しなかったという。「日光市が公表している空間線量をお伝えしながら対応したと学校からは聞いている。今秋に向けても、安心していただけるような数字は出して行きたい。ぜひ皆で参加できるような体制を整えたい」と、あくまで日光市への修学旅行は変えずに全員参加を実現させたい考えを示した。

請願書は結局、反対多数で不採択とされた。

採択に反対する市議からは「修学旅行の行き先については各学校が決めることで、市議会があそこに行くな、ここに行くなと言う事柄ではない」「日光市で生活している人々のことを考えると、このようなものが出されること自体がやり切れない」などの意見が出され、請願書を提出した市民らを大いに落胆させた。「市議会も世の中と同じで、子どもたちを放射能から守るということに関しての意識の差を痛感させられた」(NO!NO!放射能ミーティング@よこすか&みうら)。

この請願が本会議でも不採択となった5日後の12月19日、環境省は「放射性物質汚染対処特措法」に基づき、放射線量が毎時0.23μV以上の102市町村について「汚染状況重点調査地域」に指定した。関東のホットスポットと呼ばれる埼玉県三郷市や千葉県柏市とともに、栃木県日光市も含まれている。国が、日光市全域を「汚染の状況について重点的に調査測定をすることが必要な地域」として位置づけたのだ。
民の声新聞-請願不採択
横須賀市議会に提出された請願は、反対

多数で不採択となった


【強固に確立された修学旅行村】

横須賀市内で9番目に古い山崎小学校が1972年に発刊した「創立60周年記念誌」に、次のような記述がある。

「1961年から6年生の箱根林間学校が実施され、夏休みに二泊三日で行われた。しかし、66年から日光へ修学旅行へ行くようになり…」

校長経験のある市教委幹部も「日光以外に修学旅行に行ったという話は聞いたことが無い」と話しており、横須賀市内の小学校では、50年近くにわたって日光への修学旅行が実施されてきた。近隣の複数の小学校が「梯団」を組んで専用列車に乗り日光市へ向かう。その列車に別の梯団が乗って横須賀に帰ってくる仕組みが確立している。

各学校のプランを作成する旅行会社は、2年ごとに校長会がプレゼンを受けて決めるという。日光市、校長会、旅行会社の強固な枠組みが出来上がっていて、もはやその「村」から抜け出せない土壌が形成されているように思える。

「そういうことは無いのではないか」と市教委は否定する。校長の裁量で行き先を決められると強調するが、一方で「普段の授業とリンクさせることや距離、歴史的な価値を考えると日光は素晴らしい」とも。「何が何でも日光でなければいけないということではない」と説明するが、最終的に市教委の「承認」を得られて初めてGOサインが出るのが実状。壁は厚い。

市教委は今月中にも、職員を日光市に派遣して空間線量を測ったり、食材の入手先を確認したりするという。調査は秋まで複数回続けられる計画だが、調査結果は学校には伝えられるのみ。ホームページなどを通じて一般市民に公開されるか否かは未定。「どこまでをどのような形でオープンにするかを検討している段階」(市教委)。真の意味で子どもの被曝回避に役立てられるかは疑わしい。

行き先変更を求める親たちは、日光市の観光資源の価値を否定しているのではない。平時であれば、市教委の掲げる理念は誠に素晴らしいものだ。しかし、今は未曽有の有事。平時の理屈は当てはまらない。本当に子どもたちのことを考えれば、西へ行き先を変えることなど難しくは無いだろう。一人が英断すれば、山は動く。学校長には、真の教育者として、厚い壁を乗り越えるだけの勇気と決断を期待したい。

(了)


コメント

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1 ■強制旅行?

この記事の親御さん何か回りくどいことしてません?別に強制でも不参加の罰則がある訳でも無い訳で堂々と不参加宣言すればいいだけでは?言い難いのなら急病、身内の不幸とでも言ってしまえばいいだけじゃない?
っていうかそもそも記事にする様な事ですかね?

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