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少年付添人

 刑事裁判の被告に弁護人が付くのに対し、非行や犯罪で家庭裁判所に送致された20歳未満の少年には弁護士などが付添人として付く。殺人や強盗などの重大事件で家裁が認めた場合に限り、国が費用を負担する国選付添人制度が適用される。付添人は審判で少年の代弁をするだけでなく、家族との関係修復、就職先を探す支援などもする。福岡県弁護士会が全件付添人制度を始めたのは、少年の凶悪事件が相次ぎ、厳罰化を求める声が高まったことなどがきっかけだった。

(2012年1月31日掲載)

罪と更生=少年守る「弁護士付添」 福岡が先駆け、10年で3倍 年8億円、費用負担が課題

 事件で身柄を拘束された少年に弁護士を派遣する「全件付添人制度」を全国に先駆けて福岡県弁護士会が導入して10年余り。取り組みは全国に広がり、少年に弁護士が付く割合は3倍に増えた。重過ぎる処分を防ぎ、更生につなげようという考えが浸透しつつある。ただ、制度を維持する費用は弁護士側が負担している現状がある。成果を踏まえて国は、国選付添人の対象事件の拡大について検討を始めている。

 「少年にとって、弁護士が最も身近な存在になる。接見を繰り返し、支えてあげてください」

 漫画「家栽の人」の原作者で、少年院の訪問を続ける毛利甚八さん(長崎県佐世保市出身)は、約360人の弁護士にこう訴えた。日本弁護士連合会が、少年事件に精通してもらうため全国の弁護士に呼び掛けて28、29日に大分県別府市で開いた交流会。毛利さんの講演に続き、少年と接する注意点などを経験のある弁護士が説明した。

 会を準備した大分県弁護士会の西畑修司弁護士は「少年事件に関心のある弁護士はまだ少ない。担い手を育成したい」と話す。

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 「私の会社で働かせて自宅で面倒をみます」。昨年、窃盗容疑で福岡家裁に送致された少年の審判で、福岡市の建設会社社長は親代わりとなることを約束した。少年の付添人を務めた知名健太郎定信弁護士が少年鑑別所で面会し、反省の言葉を口にするようになった少年を更生させたいと就職先を探したのだった。社長は「少年の言葉を信じます」と受けてくれた。

 少年審判は更生の可能性があるかどうかで処分の重さが変わる。この少年は少年院送致を免れ、社長の下で働くことになった。知名弁護士は「少年は大人以上に取り調べに誘導されやすい。家族の支援が得られず更生の道が閉ざされることも多い。弁護士の手助けは欠かせない」と説明する。

 2001年に全件付添人制度を始めた福岡県弁護士会は、身柄を拘束されたほぼ全ての少年に弁護士を付ける。全国の各弁護士会も09年までに制度を取り入れ、弁護士が付く割合は01年の20%から10年は62%に増えた。

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 日弁連によると、全国の弁護士が少年事件のために負担する費用は年間8億円。国費による国選付添人の対象が重大事件に限られるためだ。10年に身柄拘束された少年に弁護士が付いた6589件のうち、国選は342件だけ。日弁連は全てを国選の対象にするよう少年法改正を求めている。

 国も検討を始めた。ただ、少年審判では家裁も更生の可能性を探るため「同じような目的の弁護士の取り組みに税金を充てることに国民の理解が得られるか分からない。議論が必要だ」(法務省刑事局)と言う。

 福岡県の制度設計に携わった大谷辰雄弁護士は「少年の権利を守るのは国の役割。ほぼ全ての被告に国選弁護人が付く成人の刑事事件との格差を解消すべきだ」と訴えている。


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