大学を卒業後、職が見つからずにファストフード店で配達のアルバイトをしているチェ・ジョンスさん(25・仮名)は、旧正月連休にも休日勤務を買って出た。知人には特別手当を受けるためだと言ってごまかしたが、本当は親戚に会うのが嫌だったからだ。チェさんの唯一の願いは、一日も早くまともな職場に就職し、親戚や知人に堂々と名刺を渡せるようになることだ。
20-30代の青年層の不満は、単に職がないということではなく、「良質な」働き口がない点にあると指摘されている。しかし、韓国政府は統計上の雇用増に執着し、問題の中核をとらえていない。現在の政府の雇用統計では、雇用の質がどのように変化しているかを全く把握することができない。
■役に立たない統計
雇用の質と関係がある雇用統計には、▲従事者地位別分類▲労働契約別分類▲就業時間帯別分類―の3種類がある。
従事者の地位別分類は、就業者を常時雇用、臨時雇用、日雇い、自営業者、無給家族従事者(月給なしに家業に従事する人)に分類している。労働契約が1年以上の場合は常時雇用、1カ月から1年未満は臨時雇用、1カ月未満は日雇いとして分類している。この基準に従えば、2年ごとに労働契約を更新する非正社員は常時雇用に含まれる。昨年の被雇用者のうち、常時雇用は前年に比べ57万5000人増え、就業者の増加をけん引した。この動きについて、雇用労働部(省に相当)は雇用の質が改善したと評した。だが、常時雇用の増加分は非正社員が相当部分を占めている可能性が高いのに、統計はそのような実態を全く把握できずにいる。
統計庁は弱点を補うため、労働契約別分類による統計を1年に2回まとめ、非正社員の数がどれだけ増えているかを別途調査している。しかし、この統計も正式な労働契約だけを基準としているため、契約書なしで働く労働者は統計には含まれていない。
また、就業時間帯別分類は、調査時期によって結果に大きな差が出るため、雇用の質的変化を把握するには不適切だ。1週間の労働時間が36時間未満の場合、パートタイムなど不完全な雇用と見ることができるが、連休前の期間に調査を行えば、正常な就業者も不完全就業者に分類されてしまう。昨年8-9月の統計が代表的だ。光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)、秋夕(中秋節)の連休に近い週に調査が行われたため、統計上では労働時間が36時間未満の勤労者が増えた。統計だけ見ると、雇用の質が悪化したように見えるが、実態を正確に反映しているとは言えない。
■賃金水準別の統計必要
雇用統計の問題点を一気に解決できるのが賃金水準別の就業者数調査だ。月収100万ウォン台、200万ウォン台とい基準で区切り、就業者数の増減を調べるものだ。しかし、このような調査は全く行われていない。「デリケートな問題だから」というのが政府の説明だ。これに対し専門家は、政府に良質な雇用機会を創出する意思があるのなら、まずは賃金水準別の就業者数統計を行うべきだと主張する。
現代経済研究院のイ・ジュンヒョプ研究委員は「賃金は雇用の質を示す最も簡明な指標だ。この統計に基づいて雇用政策を立てなければ、政策の実効性を高めることはできない」と指摘した。