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ひと:萱野志朗さん アイヌ民族党を結成し代表に就任

 生まれた時から、家庭ではアイヌ語での日常会話がなかった。民族の証しは言語が担う。だからこそ、アイヌ語にこだわり、独学で身につけた。

 「ニシパウタラ(紳士)、カツケマカツウタラ(淑女)、ウウエカラパワケヤイコプンテク(お集まりいただきうれしく思います)」。1月21日に北海道江別市で開かれたアイヌ民族党結党大会はアイヌ語で始まった。

 大卒後、東京のコンピューター会社で働いていた。父茂氏はアイヌ民族初の国会議員(参院)。反発はなかったが、「商才があるんだから金もうけをした方がいいのに」と冷めた目で見ていた。

 だが、29歳だった87年に父に誘われ、カナダの先住民族(クワクワカワク)を訪ねた。70代以下は英語しか話せず、子どもへの言語教育に取り組む姿を見て、「我々も一緒だ」と目覚めた。父のアイヌ文化・言語保存活動を手伝うため、翌88年に北海道平取(びらとり)町に帰郷、アイヌ語を学び始めた。

 父は、アイヌのユーカラ(叙事詩)の伝承者、金成(かんなり)マツがローマ字で記したユーカラの日本語訳を約30年間続けた。父が他界した06年からは遺志を継ぎ、翻訳している。

 08年にアイヌを先住民族と認める国会決議が採択されたが、差別は消えず、生活困窮者の割合は高い。民族の声を国政に届けるため、13年の参院選で議席獲得を目指す。

 「昼間は議員、夜は編集。父の勤勉さにはかなわない」。しかし、「困難な状況でも絶対にあきらめない」という信念は父に負けないつもりだ。【片平知宏】

 【略歴】萱野志朗(かやの・しろう)さん 北海道平取町生まれ。観光会社経営の傍ら、萱野茂二風谷(にぶたに)アイヌ資料館館長。妻、義母と3人暮らし。53歳。

毎日新聞 2012年2月3日 0時24分

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