楽曲放送使用料:JASRAC「無罪」へ…公取委が通知

2012年2月2日 21時2分

 テレビ・ラジオで使う楽曲の著作権を管理する社団法人「日本音楽著作権協会」(JASRAC)が、他業者を排除したとして公正取引委員会から独占禁止法違反(私的独占)で排除措置命令を受けた事件の審判でJASRACは2日、公取委の審判官から命令を取り消す審決案が通知されたと発表した。今後、公取委は調査した審査局の意見も聞き、正式な審決を出す。公取委が「違反事実は認められなかった」とする審決を出すのは異例。

 JASRACは楽曲の放送使用料について、利用回数を基に算出するのではなく、前年度の放送事業収入の一定割合を徴収する「包括契約」を各放送局と結んでいる。公取委は09年2月、この包括契約で各放送局は「新規参入した他業者の楽曲を放送すると追加負担が発生する」と考え新規業者の曲をほとんど利用しておらず、他業者の参入や事業を制限していると認定。被害の実例として新規業者が著作権を管理した人気歌手の特定の曲を示した。

 ところが、JASRACがFMラジオ局などから送られた電子データで公取委の指摘した曲の利用状況を調べたところ、被害に遭ったとされる06年10月の1カ月間に515回も使われていたことが判明。さらに、証人で出廷した放送局の関係者が、新規業者への使用料を追加負担と考えたことはなく、使用料を払うための部署も決めていたと証言した。

 関係者によると、裁判官にあたる公取委の審判官は審決案で、新規業者の楽曲が多数回放送されており、参入を排除したとまでは断定できないなどとして、JASRACの独禁法違反は認定できないとしているという。

 JASRACは東京高裁に命令の執行免除を申し立て、保証金を1億円供託して包括契約を続けている。今回の審決案に対し、「当協会の主張立証に沿って判断をしていただいた。詳細は審決が出た時点で改めて見解を発表する」とコメントしている。【桐野耕一】

 ◇審判制度◇

 課徴金納付や排除措置を命じられた企業や団体に不服がある場合、60日以内に審判を申し立て、公正取引委員会と争える制度。審判官は公取委の職員が務め、裁判の判決にあたる審決の案を作成して企業と調査を担当した審査局に通知。公取委は双方の異議申し立てを聞いた上で正式な審決を出す。企業側は審決に不服があれば東京高裁に提訴できる。行政処分をした機関が処分の適否を判断する仕組みのため経済界から廃止を求める声が強まり、審判制度を廃止して機能を東京地裁に移す改正独占禁止法が国会で審議されている。

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