東日本大震災や東京電力福島第1原発事故に関する政府の議事録が作られていなかった問題で、枝野幸男経済産業相は2日の衆院予算委員会で「事務方が出席しており、作られていると思い込んでいた」と釈明した。政府は議事録作りのため、出席していた官僚のメモなどを公文書扱いとし、保管を徹底するよう指示。ただ野田佳彦首相は、「メモ類の開示」に消極的で、野党は巨大災害、事故についての記録不備と情報公開への姿勢をさらに追及する構えだ。【松尾良、田中成之】
この日の予算委でやり玉に挙がったのは、震災発生時に官房長官だった枝野氏の昨年5月の記者会見だ。「原子力災害本部には一定の議事メモは残っている」という発言を、公明党の高木陽介、みんなの党の柿沢未途両氏が取り上げ、「その後8カ月も知らんぷりをしていた」と追及した。
政府の重要会議に関する書類の作成、保管、廃棄の基準を定めた公文書管理法は震災直後の昨年4月1日に施行された。枝野氏は同法制定の与野党協議を担当していただけに、「(議事概要を作ったか)確認すべきだった」と繰り返し陳謝。当時の政府高官は「緊急事態で余裕がなく、議事録を確認することさえ思い浮かばなかった」と振り返った。
内閣府によると、自社さ政権だった95年の阪神大震災以降、災害関連の重要会議の議事録は作られていない。こうした「慣習」(平野達男防災担当相)は、「情報公開」を旗印にしていた民主党が政権をとっても改まらなかった。首相は1日の衆院予算委で「猛省しなければならない」とした上で、再発防止について「会議の録音も一つのアイデアだ」との考えを示した。
政府は、議事概要のなかった原子力災害対策本部など5会議について、出席官僚らのメモを集めて再現する方針。柿沢氏は予算委で「政府が後から作った歴史ではなく、メモをそのまま情報公開すべきだ」と求めた。だが首相は「客観的な検証を経ていない1次資料(のメモの開示)が適切とは限らない」と否定的な考えを示した。
毎日新聞 2012年2月2日 21時38分(最終更新 2月2日 22時48分)