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2月の政治情勢 - 原発再稼働と消費税増税の正念場
2月が始まった。松の内が明け、成人の日を過ぎると、時間の流れが急に加速する。そして、3.11の日まで残りあと40日。3月に入ると、マスコミは追悼と慰霊の報道態勢となり、回顧と検証を特集する記事と映像が氾濫し、人々の関心も震災と原発に集中するようになるだろう。その中で、被災地の苦境と困難はさらに深刻化して復興や再建とは遠い現状にあること、原発事故の対応で恐るべき隠蔽や欺瞞があったこと、この二つが訴えられ、政府と東電への批判が高まる状況になるに違いない。新しい事実の発掘がなくても、これまで出ている問題を整理して並べるだけで、人々の憤激を誘うには十分すぎる材料となる。読売や産経など保守マスコミは、民主党政権(菅・野田)を叩く動機でこの報道を煽る動きに出るはずで、特に菅直人を標的にして血祭りに上げる図が予想される。こうした政治環境になると、当然、内閣支持率は下がり、政権は消費税増税法案を国会で強引に押し切ることが難しくなる。野党も妥協できない。また、東電・原子力村を糾弾する世論のボルテージが高まり、原発の再稼働や料金値上げも許されない空気になる。つまり、3月には消費税増税や原発再稼働にはきわめて不利な政治局面が訪れる。ということは、この二つの課題は2月中に早く決着させてしまおうという機会認識となり、政治意志となる。


今月は政治の決戦の時期となるのではないか。まず、原発再稼働の政治日程の方から見てゆくと、昨日(2/1)の朝日紙面(2面)に、再稼働を進める側の手続きと計画が示されていた。経産官僚のリーク記事だ。それによると、1/31にIAEA調査団がストレステストの審査方法を妥当とする報告書を提出、それを受け、2/8に保安院(黒木慎一)が専門家会合を再び開催、最終審査結果を出して安全委(斑目春樹)に提出する。安全委は10人ほどの検討会で審議、その報告を政治に上げ、最後に四者会談(野田佳彦・藤村修・枝野幸男・細野豪志)で政治判断を下す。リーク記事によれば、再稼働の予定は今夏。この政治判断の刻限について、藤村修は2月中の意向だが、枝野幸男が慎重姿勢を構えていて、現時点で官僚側は日程を固められていない。枝野幸男の動向を睨み、マスコミを使って牽制を仕掛けている。先々週(1/20)のBSフジの出演時がそうだった。将来の総理を狙う枝野幸男は、国民の人気取りが必要という事情があり、唯々諾々と官僚に従う態度の標榜は避けていて、再稼働黙認の立場を示していない。「再稼働には安全と安心が必要」と言い、IAEA・保安院・安全委の報告は「安全」の条件は満たすが、「安心」の条件にはならないと説明している。「安心」の可否が政治の判断だという論法で、「安心」の中に「地元の了解」という要素が入っている含みを窺わせる。

政治判断する4人の顔ぶれを見たとき、鍵を握っているのは枝野幸男だろう。再稼働の問題は、3月に出す「特別事業計画」の調整とも密接に絡む。再稼働の前提を認めてしまうと、東電はリストラをせず、相変わらず総括原価方式のままで料金値上げを認可申請する。他の電力会社も旧態のままのコスト体質で経営を続ける。枝野幸男は、再稼働と値上げのバランスとタイミングを測り、「特別事業計画」の中身を策定する実権を握りつつ、東電のコスト体質改善に切り込む狙いのようで、国民と官僚の双方に配慮を見せた巧妙な着地点を探っているように見える。官僚に嫌われても総理になれないし、国民の失望を買うのも得策でないというタイトロープの立ち回りだ。枝野幸男の腹の内は、おそらく、2月に再稼働の結論は出さず、今夏の気象予測や原油価格の動きを見て、逼迫が確実という状況を演出し、世論を固めた後で再稼働に持ち込もうとするのだろう。昨年11/1に今夏-9.2%の需給予測を出した後、春に再び試算をする予定だが、これについて作業や日程の情報が全く出ない。「特別事業計画」の方が先で、それを決めた後で需給予測を数字合わせする段取りなのだ。「特別事業計画」と国有化で枝野幸男と官僚・東電が綱引きをしている。綱引きは銀行を巻き込んで揉め、2月中の四者協議での再稼働の政治判断を先送りさせる方向に力が働くに違いない。また、4月発足の「原子力規制庁」の人事の問題もある。

官僚が目論んでお膳立てした政治日程は崩れるだろう。一方、脱原発の側はこの動きに対抗、2/11と2/19に大きな抗議集会を予定していて、再稼働を阻止すべくカウンターの政治攻勢を準備している。昨年の9/19、明治公園に6万人を動員した「さようなら原発1000万人アクション」は、2/11に代々木公園で再び大きな集会を打つ構えで、大江健三郎らが登壇してスピーチする。同じ日に全国各地で行動が組まれていて、マスコミ報道でも取り上げられるだろう。その1週間後の2/19には、「素人の乱」の松本哉が中心となって企画する「2・19脱原発杉並デモ」があり、ネット上で告知が広まり、注目と期待が集まっている。9/19の明治公園の大集会以降、脱原発の側で目立った動きがなく、マスコミで特に話題にされる出来事がなかった。この時期、寒波の襲来や降雪と重なる恐れが十分にあるが、マスコミが無視できない怒濤の人数が結集する図を祈りたい。安全委が再稼働を認める決定を出し、四者協議の政治判断の場に移った2月中旬が、再稼働の政治決戦の正念場なのである。マスコミは徹底的なキャンペーンを張り、世論を「再稼働容認」へ持ち込もうとするだろう。2月中の再稼働の政治判断を先送りさせることができれば、4月下旬に泊3号機が停止し、脱原発が物理的に成ることになる。その公算が高い。4月末で全基を止められれば、その勝利によって脱原発派の気勢は上がり、そこからの再稼働側の逆襲は難しくなる。

一方、消費税増税の方だが、こちらの政治も正念場を迎えている。野田佳彦と官僚の当初の思惑では、1月中に自公と協議に入り、2月に合意を大綱にして閣議決定し、3月に法案を国会に出すという予定だった。ところが、この「一体改革」の政治は迷走を始め、年金問題の方向へと走り出して深みに嵌り、2月に入っても事態収拾の目途が立っていない。政治日程は大幅に遅れている。岡田克也の政治的無能が混乱に拍車をかけていて、改造人事が裏目に出ている感は否めない。議員定数削減を強く打ち出せば、マスコミの評判はよくても公明党との距離を広げる結果になる。永田町の政局だけに焦点を合わせたとき、3月中の法案成立は不可能に見えるし、政権が本気で動いているのかどうかも怪しく感じるほどだ。ただし、だから安心して状況を眺めていられるということではなく、むしろ逆で、少なくともマスコミに出る議論を見ている限り、消費税増税への反対論というものが皆無の現実がある。反対論が絶無どころか、5%増税で10%など生ぬるく、年金のために17%にしろとか、25%にしろとか、そうしなければ国債暴落だとか、そういう脅迫と扇動ばかりだ。今日(2/2)の朝日の1面は、真部朗の事件を差しおいて日本国債暴落の記事がトップで、三菱UFJが危機管理対策を作ったと書いている。15面(オピニオン面)では、「国債暴落に備えよ」と題して小林慶一郎に「消費税は25%に」と言わせている。朝日だけでなく、全てのマスコミがこの調子だ。

年金問題の議論の泥沼は、国会で「一体改革」の合意を作る政治には水を差したが、国民に消費税増税を受け入れさせる政治宣伝としては効果があったのかもしれない。最近、消費税を上げたときの景気や税収の落ち込みを予測する悲観論が、経済学者から全く情報発信されなくなった。マスコミに反対論や慎重論が上がらないため、報道の世界では、世論調査でどれほど反対論の比率が高くても、その声を異端として堂々と無視するのだ。NW9の大越健介がその典型的である。消費税増税が当然だという報道に終始し、国民の多数が反対している現実には目もくれようとしない。テレビ報道を説教の場だと心得ているのか、上から目線で「早く増税を決めろ」と政治に注文をつけている。日本の常識は「消費税増税に賛成」だという態度を貫いていて、公共放送でありながら、賛否両論のバランスに目配りしようとしない。どれほど国民の多数が反対の立場を維持しても、その世論は一顧だにされず、まともな主張として取り上げられない。次から次へと、欧州の信用不安から、年金問題から、IMFから、日本の将来人口から、ヘッジファンドの仕手戦予告から、何から何まで動員して、手を変え品を変え、消費税増税の正当化の刷り込みの材料に使う。さっさと屈服しろと、まるで国民に精神的な拷問を加え、抵抗の意志を失わせようとするかの如く、あらゆるニュースを消費税増税プロパガンダのネタにする。否、間違いなく、官僚とマスコミは計画的に洗脳のシャワーを行っている。

「社会保障は消費税で賄われる」という認識が、誰も反論をしないため、あるいは反論していた者が沈黙したため、いつの間にか世間に浸透し、観念として定着してしまった。これまで、そのような事実も制度も慣習も言説もなかったのに、これが揺るがぬ普遍的真実に固まってしまい、財政の常識としてまかり通ってしまっている。どう考えても、消費税の税収だけで社会保障の支出は賄えないのに、社会保障=消費税の公式が絶対化し、その考え方を前提とした議論ばかりになっている。消費税収が社会保障支出のベースロードにされている。そもそも、そのベースロードの発想が根本的な間違いではないのか。脱原発については抗議集会の動きがあり、ブログで論じる気力が起きるのだけれど、消費税増税については反対運動も何もなく、マスコミから洗脳工作の拷問を受けるだけで、気が滅入って反論記事をよく立論できない。金子勝や湯浅誠のような、本来なら反対の論陣を張らなくてはならない者が、逆に賛成派に回っていて、官僚の手先となり、社会保障=消費税のドグマを布教している。それを見た私は鬱屈し、ネットの隅で同じ事ばかり言っても無駄だと萎縮する心境に追い込まれる。本当は、反貧困の者たちが、消費税増税反対の国民運動を起こし、この収奪から貧困層を守らなくてはならないのではないのか。この増税の後、必ず次は社会保障の切り下げに出てくる。そのことを、湯浅誠や金子勝が理解できないのは何故だろうか。湯浅誠と金子勝の裏切りに対する批判は、どうして左側で広がらないのだろうか。

社会保障の支出増は直接税の収入増でカバーするのだと、内需拡大と税収増で財政再建もするのだと、そのためには賃金増と消費増だと、内部留保を再分配せよと、そう正論を唱え、支持を集め、抵抗の象徴となる有名人の理論家は出ないだろうか。


by thessalonike5 | 2012-02-02 23:30 | Trackback | Comments(0)
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