- 東京証券取引所様「新株式売買システム arrowhead(アローヘッド)」プロジェクト
「世界と戦えるシステムを創り出す。」
お客様の「夢」をかなえることが、私たちの「約束」だった。
100分の1秒、1,000分の1秒単位で売買注文を繰り返すアルゴリズム取引の出現や投資家の多様化など、ドラスティックに変化し続ける証券市場。こうした市場のダイナミズムに対応するとともに、国際的な競争力を高めていくために、東京証券取引所(以下、東証)は、2006年冬、次世代の株式売買システムの構築へと動き出す。「世界と伍して戦えるシステムを創る」という熱い夢を乗せた<arrowhead 構築プロジェクト(2010年1月稼働)>。
以前から東証とともに仕事をしてきた富士通 金融ソリューションビジネスグループの真内 健は、本プロジェクトにおいても最前線で戦っていた・・・
激流のごとく押し寄せる注文を安定的にさばくポテンシャルがなければ、世界の市場と戦うことはできません。こうした背景のもと、東証様が絶対条件として掲げたのが「注文受付時間10ミリ秒以下の高速性」でした。10ミリ秒といえば、従来比1,000倍にあたるほどの超高速性。とても既存技術だけで実現できるものではありません。
構築ベンダーの選定コンペまでは、約1ヶ月。技術革新に挑戦するにはあまりに短い時間です。しかし、お客様のご要望に応えるためには挑戦あるのみ。全員の知恵と経験を結集し、富士通ならではの技術提案を行いました。たとえば、新たに開発したミドルウェアは、データをすべてメモリ上に展開して処理します。この方式だとデータをディスクに取りにいかずに済むので、これまで以上の高速化が図れるのです。その一方、データはメモリ上にしか存在しなくなるので、万一のトラブル時のデータ保証が難しくなります。この課題に対しては、データの三重化で対応し、高い信頼性を確保することに成功しました。ひとつの課題を乗り越えても、次々と出現する課題・・・。連続するハードルをタイトなスケジュールの中ですべて乗り越えられたのは、お客様のいかなるニーズにも応えていく、という固い決意に加え、「世界一のシステムを創りたい」という大きな夢があったからです。
新技術を満載した私たちの提案は、日本、アジア、欧米から参加した18陣営の中から採用いただきました。後ほど聞いたところによると、東証様は「世の中にないミドルウェアやシステムをつくる」という私たちのスピリットに共感を抱いてくれたそうです。きっと「世界と戦えるシステムを目指す」という東証様の熱意と響き合うものがあったのだと思います。
システム開発には、東証様からご参加いただいた100名以上の方々に、富士通のSE、営業、さらに開発部門やハード、OS、ミドルウェアのエキスパートをスタッフに加えた1,000名近くにもなるチームで臨みました。これほどの人数ですから、1フロアでは到底足りず、別のビルのフロアも借りました。その様子は、まるで新会社が生まれたようでしたね。
オフィスの一番目につくところに貼り出したスローガンは、もちろん<Challenge“10”msec!>です。技術者たちは、プログラムの命令数を少なくしたり、使用する命令を選別するなど、さまざまな創意工夫で処理時間の短縮を図りました。こうした1,000分の1秒の世界をカンナで削ぎ取っていくような努力の結果、当初のご要望であった10ミリ秒をはるかに超える2ミリ秒を達成できたのです。2ミリ秒といえば、人間がまばたきする一瞬(100~150ミリ秒)に50件以上の注文を受け付けられるスピードです。どんなに高くても超えられない壁はない。まさに、ブレークスルーを実感した瞬間でした。新技術の開発や一切の妥協を許さない品質・工程管理など、3年間に及ぶ厳しい作業の中でモチベーションを保ち続けられた理由は、このプロジェクトに携わるすべてのメンバーが高い目標を共有し、その目標を絶対に実現するのだ、との強い気持ちがあったからだと思います。
世界最高水準のスピードと信頼性の両立・・・。東証様のarrowheadプロジェクトをモーターレースの世界に例えれば、F1マシンをゼロから創りあげたようなものではないでしょうか。ここで得た経験や技術は、富士通の財産です。F1マシンで培った技術が一般のクルマの性能アップや安全に貢献していくように、今回培った経験や技術を、この先、さまざまなお客様の基幹システムに活かしていきたい。それが、プロジェクトに参加したメンバー全員の共通した気持ちです。
真内 健
富士通株式会社
金融ソリューションビジネスグループ 保険証券ソリューション事業本部 東証事業部
プロジェクト課長
一女の父。休日には、職場の仲間と趣味のバスケットボールで汗を流すことも。
[2010年10月29日 公開]
富士通はお客様に何をご提供できるのか。富士通がお客様とともに目指す未来について、代表取締役社長 山本 正已からのメッセージです。
東日本大震災発生の直後からの富士通の取り組みをドキュメントでご紹介します。