2011年12月27日火曜日

簿記2級やTOEIC800を取るより大事なこと

■大資格時代の到来とその終焉

一時期資格ブームがこの極東の小さな島国を熱狂させた。
きっかけは勝間和代あたりであろうか。

会計・英語・ITのスキルを高めれば仕事ができるようになり、幸せになれる。ゆえに資格を取ろう、と。

このブームに便乗したのが資格学校だった。
また類似のビジネス書が多数出版され、社会情勢に対する不信も相まって日本列島は大資格時代を迎えた。

ただ彼女が、勝間和代が訴えたのは単に資格を取りさえすればよいということではなかった。むしろ資格はシグナリングに過ぎないし、試験日というデッドラインを設けることで勉強がはかどる、ということを主張していたにすぎない。
それを曲解し、あるいは資格学校が曲解させ、人々は資格は万能だと信じ資格取得に乗り出した。

しかし最近は資格ブームにもかげりが出てきたように感じる。
「僕は君たちに武器を配りたい」の著者で京大准教授の瀧本哲史氏は従来ビジネス3種の神器とされた「英語・会計・IT」は奴隷の学問だと断言した。世知辛い世の中をしたたかにサバイブしていくには奴隷の学問を学んでコモデティティ化してはならずスペシャリストになれ、と。

また元MS日本法人社長の成毛眞氏は日本人の9割に英語は必要とされておらず、そんな暇があれば本を読め、と言った。



このように資本の論理が徹底して働くビジネスの世界で勝ち組とされてきた人たちが真っ向から資格どころか、資格によって得られる知識そのものを否定しはじめたのだから資格学校も商売上がったりであろう。
追い打ちをかけるように、読者に多くの資格大好き人間を抱えるような某ビジネス誌まで瀧本、成毛を支持するような特集を組んだのにはびっくりした。時代は変われば変わるもんだ。


■就活戦線でなお生き続ける資格神話

さて、このようにビジネスパーソンの世界では終焉を迎えつつある資格神話だが、以前として資格神話が語り継がれている場所がある。
大学、である。
大学に行けば公認会計士、税理士からはじまって簿記、TOEICといった資格のパンフレットが所狭しと並べられて、年に何回か資格学校の。かつて監査業界が好況に湧いて会計士が合コンでモテモテだった時代ならいざ知らず、四大監査法人が軒並み採用人数を絞っているなかで「安定してそう」という理由だけで会計士を目指すなど情報弱者としか言えない状況なのだが、なお資格神話は「大学」というある種外界から断絶した社会では生き続けているのである。(参考:大手監査法人 「冬の時代」
特に就活戦線においても資格神話の持つ力は絶大で、聞くところによれば「簿記2級、TOEIC800」というのがデキル就活生の一つの目安となっているようだ。(参考:外資系への道標
私も就職活動関連のエントリーを執筆しているせいか、
国境なき就職活動
新卒一括採用は自壊する
数十年後、日本の就活はこうなっている
ときどき就職活動関連の質問を寄せられることが多い。やはりその中でも群を抜いて多いのが、資格は取っておいたほうがいいですか?という問いだ。
余談だが私は就職活動経験者ではないのでそんな質問をすることは童貞のAV愛好家に「どうやったら女をイカせることができますか?」と聞くようなものなので、やめといたほうがいいと思う。

■簿記2級、TOEIC800を取るより大事なこと

しかしながら専門の勉強もはじまっておらず、やりたいことも見つかっていない段階では将来への不安から資格取得に走るのもやむを得ない気がする。ただ間違ってはいけないのは、資格はシグナリングに過ぎず資格そのものより知識自体に価値があるということだろう。
たとえば簿記2級の場合、会計やファイナンスの知識を得たいから取得するのだし、TOEICを勉強するのも、英語力を向上させたいから勉強するのであろう。
資格自体に価値はない、ということを常に頭に入れておかなければ資格取得が目的化し、テクニックに走り肝心の知識が、本質が身に付かない、ということになってしまう。

簿記2級について

私は大学1年のときに簿記2級を取ったが、果たしてそれでどれくらいのベネフィットがあったかははなはだ疑問だ。しいて言えば電卓を打つのが速くなったくらいではないか。就活生が簿記を勉強する理由の大半は、会計やファイナンスの知識を身につけたいということなのだろうが、そもそも簿記とはbook keepingの略で「日々の取引を記録する」ことに焦点を充てている。だから会計やファイナンスよりももっとミクロでプラクティカルな学問なのだ。本当に会計やファイナンスの勉強をしたいなら、それについて書かれた本を読んだほうが良いのではないかと思う。
まず会計についてだが、会計は大きく2つに分けられる
会計学=財務会計+管理会計
財務会計とは、外部利害関係者への情報提供を目的とした会計である。財務分析や財務諸表作成などはこちらに分類される。
おすすめの本はこちらだ。




この本の優れた点は「財務3表一体理解法」だ。財務3表とは貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書のことだが、これら3つには連動する「つながり」のポイントが5つあると解説。実際に読者が小さな会社を設立したと想定し、創業時から生じるであろう1回ずつの取引ごとに、財務3表がどのような「つながり」を保ちながら変化するのか(しないのか)を具体的に追う。こうした知識を基にすれば、決算書を材料にして様々な企業の業績を正しく評価することができるようになるのだ。また収益性や安定性、新会計基準の解説があるのも嬉しい。

管理会計とは経営に活かすための会計だ。英語ではmanagerial accountingということから経営者のための会計であることがわかるだろう。管理会計を学ぶときは、自分が経営者になったつもりで勉強することが大事なのではないかと思う。その観点からいくと、おすすめの本はこれだ。

 
著者は稲盛和夫。日本を代表する経営者だ。
彼は会計がまったくわからないまま会社を創業したのだが、働きながら会計を独学で学び、それを経営に活かし成功した人物だ。どのような姿勢で経営者は経理担当者と接するべきか、どのように会計を経営に活かすべきか、がよくわかる良書である。

ファイナンスについてだが、なんといってもおすすめはこれだ。


どこがよいのかというと、「わかりやすい!」これにつきる。ファイナンスの専門書といえばとにかく数字、数式、グラフが多いのだが、この本はそういった複雑な部分をそぎ落とし、平易に解説してくれている。

■TOEICについて

TOEICについても同じで、こんなものはシグナリングにすぎない。しかも測るのはリスニング、ライティングだけではないか。こんなものの対策に時間を費やすくらいなら、1週間でも海外に行って英会話の練習でもしたほうがよっぽど役に立つのではないかと思う。英語を勉強するときのコツは自分が何のために、どのレベルの英語力が必要なのか、を明確にすることだと思っている。TOEICはその過程での一つの指標なのだ。就職のためにTOEICを上げたい、という理由だけで英語を勉強するのはあまりに滑稽な気がするのだが・・・。

1 コメント:

  1. 取ってから使い方
    決めてもいいと思う

    多種多様あるんだから
    今は使わなくても
    後々持ってて良かった
    って来る日はあるかもだし

    それに
    ××になりたいから○○取りたい
    で、○○持ってない人と
    ○○持ってるけど何したいかわからん人
    だったら
    社会でどっちが評価高いんだろ

    基本的に無難な資格取りたい人は
    たいしてやりたい事無いんだと思う
    でも口だけの人だとか
    何もせずにいる人より
    無難でも取ろうと考えるのは
    まともだと思う
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