実験計画法(Design of Experiments)は、実験を効率的に行う方法です。 フィッシャーが農業試験のために考案したのが最初と言われています。
初心者の実験方法というのは、 ベースになる条件の組合せに対して、 1条件ずつを順番に変えて実験し、 それぞれの条件の効果をまとめるというものだと思います。(筆者はそうでした。)
しかし、ベースの条件を使う方法は、 複数の条件を一度に変えた時の実験をしないので、見逃しが起きます。 実験計画法は、見逃しのない実験条件の組み合わせを教えてくれます。
実験計画法は、 シミュレーション (コンピュータによる仮想実験)でも、知っていると役に立ちます。
初心者の実験の失敗を避けるには、すべての条件の組み合わせを試すのがベストです。 とはいえ、すべての組み合わせを試すことは非常に大変ですし、 ある程度見通しのできている実験では、途中から無駄を感じることもあります。
直交表を使うと、すべての組み合わせを試さないで済むことができます。
実験後のデータ解析とつながるのですが、
直交していると他の因子の影響を考えないで済み、各列の水準別に集計をすることによって、
各因子の効果が独立に評価できます。
(交互作用がある場合、つまり、2つ以上の因子の組み合わせ方によって、
増減が複雑に変わるような現象の場合は、交互作用項の評価も必要になります。)
水準を多く取る実験では、水準を多く取ることによって、 データの再現性がある程度評価できます。 そのため、反復はそれ程重要ではありません。
農場に比べれば、工場や実験室の実験環境は均質のため、 工場や実験室での実験では、 局所管理はそれ程重要ではありません。
フィッシャーの3原則は、農業試験を実施する上では重要です。 それ以外の実験では、重要度が多少違って来ます。
実験計画法は文字通り「計画の方法」ですので、
実験で得られたデータをどうするのかは別問題です。
実験後のデータ解析は、それぞれの分野に合った手順が考案されています。
尚、一般的な解説書では、
実験後のデータ解析までを含めて、「実験計画法」という場合もあります。
実験の計画段階とデータ解析段階を分けた方がすっきり説明できるので、
このページでは実験の計画段階の部分を「実験計画法」と呼んでいます。
応答曲面法は、 回帰分析 の一種です。 重回帰式に二次の項を加えます。 二次の項があると、最大値や最小値を求めることができます。
最低でも3水準ないと曲面が作れないので、 応答曲面法をするには、3水準以上必要です。
また、最大値や最小値が、実験した水準の範囲の外側に予想される場合は、 さらに外側の水準も試した方が良いです。
品質工学が提案する実験計画法については、 設計段階の品質工学 のところで解説しています。 簡単に言うと、 下記のアイディアを必要に応じて加える点が、品質工学の特徴です。 これらを加える主な理由は、品質を不安定にさせる要因を調べるためです。
実験計画法は、一般的には理学や工学の分野で出て来る方法です。 しかし、 マーケティング の分野でも、消費者の認識や心理を測るための方法として、実験計画法が使われています。「 コンジョイント分析 」と言われているものがそれです。
「Excelで学ぶ理論と技術 実験計画法入門」 星野直人・関庸一 著 ソフトバンククリエイティブ 2007
実験計画法で使う統計学も基本から書かれていますし、
一通りの内容がコンパクトにまとまっています。
Excelを使った実際の手順にも触れていますので、マニュアルとしても良いと思います。
「すぐに役立つ実験の計画と解析〈基礎編〉」 谷津進 著 日本規格協会 1991
基礎から丁寧に書かれています。特殊な特性の扱い方も、紹介しています。
「データの取り方とまとめ方」 James N. Miller・Jane C. Miller 著
宗森信・佐藤寿邦 訳 共立出版 1991
一連のデータサイエンスの解説の中で、
実験計画法にも触れています。この本は上述の分類だと、「自然科学系」です。
「データサンプリング」 新保雅一 編 北田修一・新保雅一・田中昌一・宮川雅巳・三輪哲久 著
共立出版 2002
各分野の実験計画法の比較を簡単にした後に、各論になっています。
各論の部分は専門的です。
「品質を獲得する技術」 宮川雅巳 著 日科技連
品質工学の実験計画法について、数理的な解説が詳しいです。
この本は実験計画法以外の品質工学の手法も解説しています。
「実験計画法特論」 宮川雅巳 著 日科技連
実験計画法について、体系的にまとまっている本です。
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