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成人T細胞白血病:新薬「ポテリジオ」、薬事審部会が了承

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第2部会は1日、協和発酵キリンが開発した「ポテリジオ点滴静注」(一般名モガムリズマブ)を成人T細胞白血病(ATL)の治療薬として承認することを了承した。早ければ年度内にも正式承認される見通し。

 ATLは白血病の中でも最も治療が難しい。現状の抗がん剤を組み合わせた治療では、発症した人の約半数が1年以内に死亡するとされており、患者にとっては待望の新薬となる。

 ポテリジオは、動物が自己防御のためにもともと体内に持っている抗体を薬にした「抗体医薬」。9割のATL患者のがん細胞表面に現れる特殊な受容体に抗体として結合し作用する。これまでの臨床試験では抗がん剤が効かずATLを再発した患者26人に投与したところ、8人が血液中からがん細胞が姿を消し、5人の症状が改善した。

 臨床試験に協力した山口一成・国立感染症研究所客員研究員は「ATL治療では、抗がん剤は最初は効くが、すぐに耐性ができてしまういたちごっこを繰り返してきた。今回の薬は治療効果が高く、治療薬や治療方法が確立されていないATL患者にとって、順調にいけば初めての標準的な治療法になる可能性がある」と話している。【斎藤広子、高橋咲子】

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 ■ことば

 ◇成人T細胞白血病(ATL)

 「HTLV-1」というウイルスが引き起こす血液のがん。感染者は国内に約110万人。感染から発症までの潜伏期間が長いのが特徴で、5%程度が発症し、毎年約1100人が死亡する。他のタイプの白血病と比べて骨髄移植や抗がん剤が効きにくく、根本的な治療法は確立されていないが、6割以上は母乳を通じて感染することから、政府は妊婦健診でHTLV-1感染を調べる抗体検査費用を公費で負担している。

毎日新聞 2012年2月2日 東京朝刊

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