昭和19年から20年にかけて、東京への空襲の被害を撮影した写真540枚が、新たに見つかりました。これまで多くは残っていなかった市街地への空襲の直後を撮影したものや、およそ10万人が犠牲となった3月10日の東京大空襲より前の写真もあり、専門家は空襲の全容を知る貴重な資料だとして注目しています。
見つかったのは、アメリカ軍のB29による東京への空襲が始まった昭和19年11月からの半年間、空襲直後の状況などを撮影した540枚の写真です。戦時中、陸軍の下で海外向けの宣伝雑誌を作っていた「東方社」が撮影したもので、保管されていた写真のネガが、去年8月に東京・江東区の資料館に寄贈され、分析が進められてきました。このうち、原宿駅前の写真は、東京への空襲が始まってすぐの昭和19年11月27日に撮影され、壊された住宅から白煙が上がり、市民がバケツリレーをして消火活動に当たっている空襲直後の状況を捉えています。ほかにも、病院が併設されている文京区の日本医科大学への空襲や、全焼した小学校の焼け跡で片づけをする子どもたちの姿を撮影したものもあります。東京への空襲は、およそ10万人が犠牲となった昭和20年3月10日の東京大空襲を境に市街地への空襲が本格化し、それ以前は、軍事施設が第1目標だったとされていますが、見つかった写真は、早い時期から学校や病院、市街地など市民のいる場所が狙われていたことを裏付けています。写真の分析に当たっている東京大空襲・戦災資料センターの山辺昌彦主任研究員は、「東京への空襲の直後を撮影した写真は少なく、今回の写真によって被害の実態がよく分かる。また、早い段階から事実上の無差別爆撃が行われていたことを裏付ける貴重な資料だ」と話しています。