国のがん対策基本計画の素案
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国のがん対策基本計画の素案

2月1日 19時17分 twitterでつぶやく(クリックするとNHKサイトを離れます)

日本人の死亡原因で最も多いがんについて、今後5年間の国の対策の柱となる基本計画の素案がまとまり「がんになっても安心して暮らせる社会」を実現するとして、働く世代や子どものがん対策を充実させることなどが初めて盛り込まれました。

がん対策の基本計画は、年間35万人を超えるがんの死亡者を減らすため、国が対策の柱として5年ごとに作るもので、患者も参加した協議会での議論を基に厚生労働省が素案をまとめ、1日の会合で公表しました。素案では計画全体の目標として現在の「がんによる死亡者の減少」と「患者と家族の苦痛の軽減」に加え、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」という項目を初めて盛り込みました。これにあわせ、重点的に取り組む課題として、働く世代や子どものがん対策の充実を挙げています。働く世代では、毎年およそ22万人が新たにがんと診断される一方、就労が可能な人でも仕事を続けることが難しい場合が想定されるとして、相談態勢の在り方を検討するとともに、雇用側と連携して、仕事と治療の両立を支援する、としています。また、専門の医師が少ない小児がんの治療態勢を強化するため、5年以内に拠点病院を整備して地域の医療機関との役割分担や連携を進め、患者や家族の長期的な支援を行っていくとしています。国は素案を基に、ことし6月までに新たな基本計画をとりまとめ、具体的ながん対策に反映していくことにしています。新しい基本計画の素案には、重点項目として「働く世代のがん患者の就労支援」と「小児がんの医療体制の整備」が初めて盛り込まれました。64歳までの働く世代のうち、がんになる人は毎年およそ22万人に上るといわれるなか、「がん患者の就労支援」を盛り込んだ背景には、がんになった人の3人に1人が職を失っているという実態があります。厚生労働省の研究班が調査したところ、回答したがん経験者の30%が依願退職し、4%が解雇されていたということです。このため、新しい基本計画では、がんの正しい知識を職場などで普及させ、がん患者や家族の相談に応じる体制を整えていく必要があるとしています。そのうえで、仕事が続けられるがん患者が、治療と仕事を両立できるような仕組み作りを検討すべきだとしています。「小児がん」については、子どもが亡くなる病気で最も多いにもかかわらず、国の対策が大きく遅れていると指摘されていました。大人のがんと違って、生活習慣とは関わりがなく、年間2000人から2500人が発症するといわれていますが、全国各地の医療機関でばらばらに治療されているため、治療レベルに大きな差があると指摘されています。さらに、成長期に抗がん剤や放射線などの強い治療を受けるため、治療後にさまざまな後遺症や障害が生じ、進学や就職が難しくなるケースも少なくありません。このため、新しい基本計画には、これから5年以内に専門の医師やスタッフを集めた小児がんの拠点病院を整備するとともに、長期にわたって後遺症などの治療に当たったり、患者や家族の相談に応じたりする支援体制を整えるべきだとしています。