経済

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電気料金:東電の見直し方針 政府や企業の強い反発で

古川元久国家戦略・経済財政担当相(左)を前に深々と頭を下げる東京電力の西沢俊夫社長=内閣府で2012年1月31日午後4時55分、岩下幸一郎撮影
古川元久国家戦略・経済財政担当相(左)を前に深々と頭を下げる東京電力の西沢俊夫社長=内閣府で2012年1月31日午後4時55分、岩下幸一郎撮影

 東京電力が企業向け電気料金について、見直す方針を示したのは、不意打ちの値上げ公表に対し政府や企業に強い反発が広がったためだ。東電は料金メニューの多様化などで、値上げの影響を強く受ける中小企業などに配慮する構えだが、値上げについてはどの程度の見直しを行いたいのかは判然としない。電気料金の値上げをめぐる政府と東電の攻防は、公的資本注入後の東電改革の主導権争いという側面もはらみながら今後も続きそうだ。

 「値上げが経済に及ぼす影響をどう考えているのか」。古川元久国家戦略・経済財政担当相は31日、東電の西沢俊夫社長に強く問いただした。西沢社長は「厳しい経済状況の中、苦渋の決断だった」と応じ、値上げに理解を得るため顧客への説明を尽くすと強調。会談後、記者団に対し、政府が進める家庭向け料金原価の見直しに合わせて、企業向け料金の値上げ幅を見直す考えを示した。

 ただ、東電に対する政府内の不信感が払拭(ふっしょく)されたわけではない。東電改革を柱とする総合特別事業計画の策定を東電と共同で進める政府の原子力損害賠償支援機構は「値上げを発表当日まで知らされなかった」と反発。枝野幸男経済産業相は先週末、総合計画の策定作業の中断を機構に指示した。枝野経産相は31日の記者会見でも「『値上げは権利』と勘違いしている。電力の安定供給の主体として適切ではない」と東電の企業体質を痛烈に批判、自身が可否の権限を持つ総合計画の認定の可否について問われると「東電次第だ」と突き放した。

 また、東電が昨年末、損害賠償額の増加見通しを受けて機構に申請した約6900億円の追加資金支援も認定のメドが立っていない。認定の権限を持つ枝野経産相が賠償の進展を確認するまで認定しない意向であるためだ。東電は11年4~12月期決算の発表期限の2月14日までに支援が得られなければ債務超過寸前に追い込まれる。

 こうした事態を受け、東電内部には「政府の追加支援がなければ東電はつぶれるだけ」(幹部)との声も漏れる。政府は国民の反発が強い料金値上げを安易に認めない姿勢を崩していないが、東電の経営が立ちゆかなくなれば、賠償や廃炉に支障をきたしかねない。政府と東電の駆け引きは複雑な神経戦の様相を呈している。【和田憲二】

毎日新聞 2012年1月31日 21時00分(最終更新 2月1日 0時06分)

 

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