44. リバウンド・フットワーク&スプリング・コントロール

(2004/09/14アップ。9/23修正改良)

 いきなりですが、まず次の動画をご覧下さい。

動画:超高速フットワーク
超高速フットワーク
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 BPM140の『片足連打』と、BPM260の『両足シングルストローク』という、ほとんどギャグ(!?)のような超高速フットワークです。(こんなこと出来たからってどーすんねん!)

 実演奏ではほとんど使うことのない超高速フットワークですが、皆さんも手の練習の際、スピードアップのために、あまり実演奏では使わないルーディメンツ等を練習したりしていると思います。
このパターンはあくまでそういった“練習用のパターン”と思って下さいね。(動画では小野瀬も坂野上も、ふざけて遊んじゃっていますが、彼らも普段は、こういった演奏は全くしません。)

 ちなみにこの動画では、バスドラムにトリガーも使っていませんし、収録マイクも家庭用ビデオカメラ本体のマイクです。(マイクとは呼べないかもしれませんね。) つまり、皆さんが旅行や運動会で撮影する時と全く同じ方法で、撮影・録音しています。

 通常、高速フットワークを行うには、足のスライド奏法や、アップダウン奏法で行うと言われているようです。また、速く踏めるようになるためには、「どうしても筋力が必要で、スネやフクラハギの筋肉を鍛えなければならない」とも、よく言われているようです。

 ですが、この動画では全く別の方法で行っているのが、おわかり頂けたでしょうか?

 よくよく考えると、実際にトレーニングをして、皆さんはできるようになった事があるでしょうか? それどころか、無理してトレーニングをした結果、腰痛になったり足を痛めたりしてしまった人も多いのではないでしょうか?

 今回は、フットペダルを理科で考える(!?)事で、本当に小さな力でもフォルテの音量・音圧が可能な方法である「スプリング・コントロール奏法」と、バディ・リッチやデニス・チェンバースがバネを外してまで練習していた、「リバウンド・フットワーク奏法」という2つの足奏法を紹介します。 この動画では、その方法と足モーラー奏法を合わせる事で、力を使わずに高速フットワークを可能にしているのですよ!

フットワークに筋力を鍛える必要など絶対にありません!! 筋力が必要になってしまう人は、『小中学校で習った理科』を、ペダルの動きに応用できていないだけなんですよ!!


■STEP1 手の指三本!?

 ところで皆さんは、ペダルの「フットボードを割るつもり」で、また「バスドラのヘッドを破るつもり」で、つまり、そんなにキックを強く踏んだら手が叩けなくなるくらいに、『フットボードを脚で思いっきり踏んだ音圧・音量』と、『フットボードを、たった“手の指3本”で押したバスドラムの音圧・音量』とでは、どちらが勝ると思いますか?

「そんなの脚に決まってるだろー!」と思い込んでいる人も多いと思います。
しかし、K's MUSICの「初回レッスン」で必ず行っているメニューのひとつに

「主宰の小野瀬の手の指たった3本に、入校された生徒さんが、脚のフルパワーで対抗する」

というものがあるのです。

 その際、生徒さんには『ペダルを壊したりヘッドを破いても構わないので、遠慮せず思いっきり大きな音を出して下さいね!』と、あらかじめ指定までしてあります。

 では次の動画で、その初回レッスンの模様をご覧下さい。

動画:手の指3本vs脚のパワー
手の指三本v思いっきり脚
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(MPEG-1 221Kbps 1.43MB)
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 いかがでしょうか? この動画は実際の初回レッスン時の模様で、もちろん「ヤラセ」などではありません。(各生徒さんの許可を得て、使わせて頂きました。)

 生徒さんが身体が揺れるくらい思いっきり踏んでいるのに、小野瀬の手の指3本に音圧も音量も及ばないのをご確認頂けたと思います。(これもマイクとは呼べないような、家庭用ビデオカメラ本体のマイクで録っているので、勝手にリミッターがかかって、同じくらいの音量に録れてしまっていますが、実際の音は小野瀬の方が1.5倍くらい大きいのが、各生徒さんのリアクションで、お分かり頂けると思います。)

 実は入校されたアマチュアさんやレッスンプロの方の7割~8割は、小野瀬が手の指3本でコントロールするバスドラムの音圧・音量にかなわないのです。(現役プロの方でも4割~5割ぐらいの方は、入校時には小野瀬の手の指3本にかなわないという結果になっています。)
 それは決して「小野瀬の指の力がとてつもない」からでも無く、もちろん「ペダルやバスドラムに仕掛けをしている」わけでもありません。(ちなみに、小野瀬の握力は40kg程度です。)
 ですので、今回登場頂いた三宅晃史さんや上田健史さんや山背弘さんも、K's MUSICのレッスンを受けて、現在では、手の指3本以上の、とてつもない音圧を、どこも力む事なく出せています。

 ではなぜ、手の指3本という、「とーっても小さな力」で、普通のドラマーさんの「脚のパワー」に勝ててしまうのでしょうか???


■STEP2  スプリング・コントロール

 実は小野瀬は「スプリング・コントロール」という足の奏法を、手の指3本に置き換えることで、大音量を可能としていたのです。

 「スプリング・コントロールって何!?」って人のために、まずは一緒にフットペダルを小中学校の理科を使って、考えてみましょう。(実はフットペダルの構造上、下の図のように、正確な扇形にはなりにくい事を、あらかじめお断りしておきます。)

 
0°ポジション

 写真①は、フットペダルを真横から見た写真です。

 バスドラムにセットして何も触れなければ、ビーターは、約2時を指すこの状態になっています。

 この状態を0度ポジションとします。

+60°ポジション

 写真①の状態から、写真②の様に、手でビーターを+60度の所まで押してみて下さい。

 スプリングによる力で、写真③の-30度ポジションの方向へ戻ろうとしているはずです。
 (ここでパッと素早く手を離したら、スプリングの力で一気に-30度のポジションまで移動します)

-30°ポジション

では今度は写真③の-30度のポジションへ手でビーターを押してみて下さい。

 今度は写真②の+60度のポジションの方向へ、スプリングの力で戻ろうとしているはずです。
 ここで手を離すと、ビーターは一気に+50~+60度ポジションに移動します。

 つまり、『フットペダルのスプリング作用』は、-30度から0度は、踏む方向へのサポート力(下り坂?)になるのに対し、0度から+60度までは、踏む方向への反発力(上り坂?)となっているのです。
 したがって、0度からフットボードを踏むためには、スプリングの抵抗を受けながら、ビーターを加速させなくてはならないのです。
しかし、フットボードに軽く足を乗せ(乗せるだけで、足の重さで+50~60度ポジションになります) 素早く足を離すと、ビーターは-20~30度ポジションまで移動します。
そこまでビーターが戻ってきた瞬間、-30度から0度まで、フットボードをスプリングの力に沿って、後押ししてあげれば、ビーターは『スプリングが戻ろうとする力との相乗効果』で、物凄い勢いで加速をし始めるのです。

 小野瀬は、まず指の力で、フットボードを押して+50~+60度ポジションをとった所から、素早く指を離し、ビーターが-30度ポジションにきたところで、-30度から0度までという、ごく短い時間だけスプリングの力に指の力を添えて、ビーターを加速させているだけなんですよ!

 つまり、動画の生徒さん達は、0度から+60度まで、体重を乗せ、足の力をも全部出しきって踏んでいるのに対し、小野瀬は-30度から0度まで指で押しているという事なのです。
たとえて言うなら、生徒さん達は、急な上り坂に対して『原チャリでフル加速』しているのに対し、小野瀬は急な下り坂を『ママチャリで加速』している様なものだったのです。

●スプリング・コントロール奏法●
スプリング・コントロール・ペダル奏法
まずは、フットボードの動く角度に要注目! フットボードは全体で約20度動きますが、コントロールに必要なのは、水色の部分の「わずか4~5度だけ」です(もちろん出したい音によっては踏み込んでクローズにする事も可能)
ヒットの瞬間、足はペダルから離れている事にも要注目です!(ですので、1997年2月発表の、ドラミングアドバイス第8回『みかんとフットワーク』にあるように、フットボードに置いたみかんを潰さずに、フォルテの音量で演奏する事が可能なのです!)
スプリングコントロールのできていないドラマーにとっては、“今までに体験した事のない程の音圧”が出せる。
ビーターをたくさん返すことで、振り幅が約90度前後となり、ビーターにより強く遠心力をかける事ができる。
踏んでビーターを動かすというより、抜く(離す)ことの連続動作が基本。
●日本的奏法●
44_jahu1.jpg
ヒールアップ奏法①
44_jahu1.jpg
ヒールアップ奏法②
44_jahu1.jpg
ヒールアップ奏法③
日本的フットワークでは、足がフットボードから完全に離れてしまうなど、言語道断とされている。
スプリングによる力を、ビーターを戻す事にしか使えない
バネの反発力に逆らいながら踏むという「キツイ条件」の中で「スプリング・コントロールの約2倍」の15度近くも、フットボードを動かさなくてはならない。
スプリングの反発力に加えて、足裏の接触面が「クッション」の役割をしてしまうので、連打も難しくなり、パワーのロスも大きい。
速く、強く踏もうとすればするほど、スプリングの反発力に対抗するための力が必要になるので、筋肉を鍛えざるを得ない。(しかし悲しいことに、いくら鍛えてもスプリングコントロールを行うドラマーの音圧には到底及ばない(T-T)
遠心力を利用したくても、振り幅がたった60度前後では、ほとんどその恩恵にあずかれない。
小さい音を出す時や、ゆっくりな音符を踏むにはベストマッチ!!

 スプリングコントロール奏法をマスターしてしまえば、誰だって「手の指3本」という、とっても小さな力で、大音圧・大音量を出せてしまうのです。
それを「手の指の何十倍も力のある足」で行うのですから、一体筋肉のどこを鍛えればいいのでしょうか?
逆に言えば、この方法さえマスターすれば、超脱力した状態で、身体のどこも痛くならずに、ごく小さな力で大音圧でプレイできてしまうのですよ!

 ではここで、実際にバスドラムを『フルパワーで演奏した日本的フットワーク』と、『脱力した状態でのスプリングコントロール奏法』の音圧の違いをご確認下さい。

 あえて、スネアもシンバルも、これ以上ないくらいの大音量で叩いていますので、それをバスドラムの音量の目安にして頂けると、音量差がわかりやすいと思います。

動画:日本的奏法と
スプリングコントロール

日本的奏法vsスプリングコントロール
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 いかがでしょうか?

 スプリング・コントロールの音圧・音量を確認して頂けた事と思います。 非常に楽に行えるにも関わらず、音圧・音量もバスドラムが鳴りきってしまうくらい出てしまうのですよ!

 超一流ドラマー達だけでなく、海外のプロドラマー達にみられるフットワークの原理も、実はこの「スプリング・コントロール奏法」によるものが、ベーシックになっているのですよ! そのせいもあって、日本人ドラマーのほとんどがクローズド(ヒット後ビーターがヘッドに着いたまま)になるのに対し、海外のドラマー達の多くが、日本人ドラマーの倍ぐらいの音圧をオープン(ヒット後ビーターがヘッドから離れる)で出せているのです。

 スプリング・コントロール奏法を行っている有名なドラマーとしては、バディ・リッチ、チャド・スミス、デニス・チェンバース、デイブ・ウェックル、etc, 例を出すと本当にキリがありません。 逆に海外のプロドラマーで、スプリング・コントロール奏法を使っていないドラマーさんを探す方が、かなり大変です。

 もちろん、クローズドがダメと言っているわけではありません。 ですが、クローズドしか出来なかったり、音量や音圧を極端に下げてしかオープンにできなくては、もったいなくありませんか? 日本にも山木秀夫さんのように、オープンと、クローズドを使い分けてリズムパターンを叩き、非常に遠近感のある表現をしている人もいます。

 また、スプリング・コントロール奏法で踏み込んでクローズドにすれば、『音のひずんだ大迫力の音圧』も可能なのです!
スティックワークに剛性コントロール奏法があるように、フットワークにも剛性コントロール奏法があるのですよ! ですから、皆さんも、スプリング・コントロール奏法をマスターして、ご自分の表現の幅を広げてみてはいかがでしょうか?

 ドラム歴4~5年以上になるドラマーさんでも、スプリングコントロールによるバスドラムの大音量と大音圧を体験しているドラマーさんの方が圧倒的に少ないのは、K's MUSICに入校された、たくさんのドラマーさんの例からしても、明白です。 現役プロドラマーの方でも、K's MUSICでそのあまりの音圧を体験し、驚かれる人も多いのです。
バスドラムは、本当は、もっともっと鳴る楽器です。スプリングコントロールをマスターすれば、あなたのバスドラムも、今の2倍・3倍の音圧と音量で鳴り始めるんですよ!

 このスプリング・コントロール奏法を「無意識にやっているよ!」とか「知ってたよ!」と思う人もいるかも知れませんが、日本ではほとんど使えている人がいない方法なのです! ですので、もし本当にできているかどうか確認したい方は、友人ドラマーに頼んで思いっきり脚で踏んでもらい、そのパワーに、手の指3本で勝てるかどうかをテストしてみて下さいね! 足よりも手の方が器用なので、最初は手でできるようにした方がつかみやすいかも知れませんよ!


■STEP3 みかんとフットワーク

 1997年2月発表のドラミングアドバイス第8回『みかんとフットワーク』の、

「その気になれば、バスドラムのペダルボードにみかんを固定し、みかんをつぶさないで、バスドラムをフォルテの音量で演奏する事も可能なのです。」

 という説明を読んだドラマーさん達から、ドラミング電話無料相談で「本当にできるのですか??」という質問をたくさん頂いています。 もしかしたら、皆さんの中にも『いくらなんでも、できるわけない!!』と思っている人が多いでしょうか?

 ですが、スプリングコントロール奏法を使えば、みかんを潰さずにフォルテで演奏できてしまうのです。 なぜなら上記にあるように、踏んでいるのは水色の部分だけなので・・・

え?

ウンチクはもういい?・・・わかりました(笑)

 それでは、論より証拠! 次の動画をご覧下さい。この動画も、あえてシンバルとスネアを大音量で叩いていますので、それを『目安』にすると、キックの音量がわかりやすいと思います

動画:みかんとフットワーク
みかんとフットワーク
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 いかがですか? 実際にやってしまうと「ギャグのネタ!?」になってしまいますが、スプリング・コントロール奏法を使えばこんな事も可能なんですよ! フットボードに両面テープでみかんを固定しているので、その“みかんの重さ”のせいで、ペダルの動きがかなり鈍くなっていますから、とても確認しやすいのではないでしょうか?

 スプリング・コントロール奏法を、あなたが本当にできるようになっているかどうかを確認する方法のひとつとして、興味のある方は、実際にみかんを置いてやってみてはいかがでしょうか? ですが、動画にもある通り、日本的奏法で踏むと、みかんは一発で潰れてしまいますので、よく注意してやって下さいね!(今回は触れませんが、重心位置もかなり重要になってきます。)

 「みかんを潰してスタジオのお兄さんに怒られた!」 「みかんの汁でペダルが錆びた!!」 「食べ物を粗末にするなと怒られた!!!」等の、責任は一切K's MUSICでは負いかねますので(笑)、自己責任で行って下さいね(笑)


■STEP4 リバウンドフットワーク奏法

 勘のいい人ならすでに気づいているかも知れませんが、スプリング・コントロール奏法では、一番最初の動画のような超高速フットワークは、物理的に無理なのです。

 そこで、スティックにリバウンド奏法があるように、フットワークにも「リバウンド・フットワーク」があるのです!
ところで皆さん、リバウンドフットワークと言うと、「スティックをビーターに置き換えて考える人が多い」ためか、「ヘッドとビーター間のリバウンド」というものを、まずイメージしてしまうのではないでしょうか?
しかし、よーく考えて下さい。 ビーターはスプリングによる力で、勝手に返ってくるのですよ。
ですから、バディ・リッチやデニス・チェンバースが、フットペダルのスプリングを外して練習していたのは、
フットボードと足裏間のリバウンドを得るための練習法だったのです。  
一番最初の“超高速フットワークの動画”はこの「リバウンドフットワーク」を行ってプレイしているのです。

 もちろん「スプリングコントロール奏法」だけでも、ロックからフュージョンに至る、ほとんどの曲に対応出来ます。ですが、一番最初の動画のように、極端に速い連打になると、ビーターが最大限戻ってくるための時間が、物理的に足りなくなってきます。

-30度
ビーターがここまで返るには時間がかかる
+20度+40度
極端に速い連打では、この辺りまでしかビーターが返らない

つまり「-30度」の場所まで戻るのを待っていては、テンポに間に合わないので、「+40度」~「+20度」くらいのところに来た時に、“つつく”動作になるのです。 ですので、フットボードと足裏は、離れている時間の方が長いのです。 ペダルと足裏の接触面積を減らして、フットボードと足裏との間でリバウンドを起こす事で、「普通は不可能と思われるスピードの連打が可能」になったり、通常なら極端にパワーが下がってしまうプレイも「メゾフォルテ~フォルテぐらいの音量で演奏」できてしまうのです!

そこで次の表をご覧下さい。

 
フットボードに対する
脚のポジション
フットボードと
足裏の接触面積
特徴
足はペダルボードに対して
外旋(ガニマタ)

44_mas.jpg
靴の外側ヘリを使う
44_kutu2.jpg
赤い部分が接触面です。)
靴のツマ先部分を使う事で、ペダルボードと足裏の関係を意図的に不安定にさせる。
ビーターが異常な速さで跳ね返っていくため、音も太く、スピードプレイも可能。
小さな音が出しづらい。
股関節を有効利用する円運動フットワークを行う際の、外旋(ガニマタ)のフットワーク。
靴の外側のヘリを使ってペダルボードと足裏の接触面積を少なくする。
デニス・チェンバースやデイヴ・ウェックルに代表されるフットワーク。
ペダルボードの外側ヘリを使う
44_kutu3.jpg
赤い部分が接触面です。)
青文字の特徴は同上
これも外旋(ガニマタ)フットワーク。
「わざと」ペダルボードのヘリを踏む事で、ペダルボードと足裏の接触面積を少なくする。
普通のドラム教室では“絶対やってはいけない”とされる踏み方かも知れませんが、非常に楽に踏めるので、皆さん是非お試しあれ!!
小野瀬のBPM260超高速ツインバスの動画では、このフットワークで行っています。
フットボードに対する
脚のポジション
フットボードと
足裏の接触面積
特徴
脚はペダルボードに対して
内旋(内マタ)

44_mas.jpg
靴の内側ヘリを使う
44_kutu5.jpg
赤い部分が接触面です。)
青文字の特徴は同上
円運動フットワークを行う際の、内旋(内マタ)のフットワーク。
靴の、ツマ先の左のヘリを使ってペダルボードと足裏の接触面積を少なくする。
ヴィニー・カリウタに代表されるフットワーク。
これもパッと見では気付けない人が多いようですが、よーく見てみると、確認できると思いますよ!
ペダルボード内側のヘリを使う
44_kutu4.jpg
赤い部分が接触面です。)
青文字の特徴は同上
これも内旋のフットワーク。
わざとペダルボードのヘリを踏む事で、ペダルボードと足裏の接触面積を少なくする。
これも「禁じ手」(笑)と思うかも知れませんが、主宰の小野瀬はワンバスの時、この踏み方をメインとしているのですよ!
坂野上の、BPM140シングル超高速連打の動画では、このフットワークを使って行っています。
フットボードに対する
脚のポジション
フットボードと
足裏の接触面積
特徴
足はペダルボードに対して
ほとんど真っ直ぐ

44_mas.jpg
靴のツマ先部分を使う
44_kutu6.jpg
赤い部分が接触面です。)
青文字の特徴は同上
脚がほとんど真っ直ぐになっているので、慣れていない人は日本的フットワークと間違えやすい
日本的フットワーク
44_kutu0.jpg
赤い部分が接触面です。)
日本的奏法の基本とされているフットワークで、最も力が伝わりやすいと誤解されている。
足裏の接触面積が多いので、フットボードに対してクッションの役割をしていまい、動きが鈍い。
1発だけなら安定感があるので、とてもやりやすいが、連打になった途端、極端に音量が下がったり、続かなくなる。
ゆっくりとしたフレーズや、小さな音でプレイする時にベストマッチ。
初心者が踏めるようにするためには、とてもやりやすいので覚えやすいが、この方法で練習しても連打は難しい。

「足の裏とペダルボードの接触面積」を増やしてしまうことは、「足の裏にクッション」を付けてしまう事と、全く同じなのです。
このようにフットワークを『理科』で考えると、足の裏のクッションで『フットボードが戻ってくるエネルギーを一旦吸収しゼロに戻して』から、その後に『自分の筋肉で作り出したエネルギーをフットボードに伝え続ける』という日本的フットワークが、いかに、効率の悪い事かおわかり頂けたと思います。
日本的フットワークの連打では(1発だけならいいですが)、かなりの筋力が必要になってしまったり、極端にパワーが無くなってしまったりする「大きな原因」は、ここにあるのです。

 一般的に言われている「基本奏法」とは、本当のドラム超初心者が、BPM100前後の『ゆったりした8ビートを叩けるように考えられたもの』だったのではないのでしょうか?
しかし、慣性力を無視して、いつまでも『2分音符や4分音符のためのフットワークを重視して練習を続ける必要性』は一体どこにあるのでしょうか?

足裏とプレートの接触面積を極限まで減らし、フットボードと足裏の間に、いかにリバウンドを起こさせるかが、高速フットワークを行う上での、重要なポイントなのです!

Q.ペダルをコントロールするには、どんな靴が良いのですか?

A. 前述したように、ペダルの操作は、「踏む」というより「離す」事の連続になりますから、つつくときの「接触面積」をいかに減らせるかという事がポイントです。
写真(1)の靴を見て下さい。この靴のように「角やヘリの部分が角張っていて、つま先も真っ直ぐになっている靴」をK's MUSICはオススメします。 なぜなら、写真のようにヘリや角が角張っていなければ、結果的にフットボードとの接触面積が多くなり、ロスが多くなってしまうのです。 ですから、写真(2)のような靴では、靴底とフットボードの間でリバウンドを起こすのが、少々難しくなってしまいます。
また、この後説明する靭帯や腱を有効に使う為には、靴のサイズについても、注意が必要です。 通常の「歩行用の靴」のように、靴の中で足が前後左右に動いてしまうスペースを設けてしまうと、フットボードとのリバウンドの際に、「レスポンスの遅れ」を招いてしまいます。 ですので、普段より1~2センチ小さいサイズの靴を、是非一度試してみて下さい。 もしかしたら、ペダルのコントロールのしやすさに、ビックリしてしまうかもしれませんよ!(ただし、とても歩きづらいです!) 
『全体重が足にかかる歩行用の靴』と、『座った状態でペダルをコントロールするための靴』は全く別物と考えて下さいね! 実際、ある有名なプロドラマーの方がK's MUSICに入校されて、この事を知り、ツアー用の靴のサイズが、それまで26.5センチだったものが、2.5センチも小さい“24センチ”に変わってしまったのですよ!

とは言え、主宰の小野瀬も今回の動画では「普段歩く時に使っている革靴」で演奏しています。 コツさえつかんでしまえば、そこまで靴にこだわらなくても、ある程度演奏できてしまいます。

カドのある靴

カドの丸い靴

Q.内マタやガニマタにすると、真っ直ぐ踏めないのですが?

A.1998年2月発表の、ドラミングアドバイス第14回『円運動フットワーク』でも触れたのですが、人間の脚の骨は湾曲していますし、各関節も曲がってついています。(足モーラー奏法では、この湾曲を積極利用して、円運動を作っています。) ですから「真っ直ぐ踏む」という行為は、一見正しいように錯覚されがちですが、関節を圧迫してしまう、とても不自然な行為なのです。ですので踏み方もそうですが、イスの位置もおおいにフットワークには関係してくるのですよ!
また、超一流ドラマー達に、フットワークの際、脚が左右にブレて見えるドラマーが多いのも特徴的ですが、これは“股関節と足首を同方向に回転させているため”で、「腰内の内臓筋」と「足の裏の骨格筋」のコントロールがポイントになっているからなのです。(股関節や重心等は、今後のドラミングアドバイスで詳しく説明していきたいと思います!)



■STEP5 足首って?

 「スプリング・コントロール奏法」も「リバウンド・フットワーク奏法」も、足首の使い方がキーワードになってきます。 

ではその足首の構造について、もう一度見つめなおしてみましょう。 

足首部分の構造
人間の足首はこのように、「シーソー」のように動かせるようにできています。
宇宙人の足?
このような人間は絶対に存在しません!

 よく、「カカトを支点に足首を動かす」というセミナー記事も見かけますが、上の図のように、カカトには支点となる関節など、どこにも存在していません。
 ですからつま先が上がる時はカカトが下がり、カカトが上がる時はつま先が下がるという、一種のテコの原理になっているのを知っていましたか? これに気づかず、踏み込む際に無理してカカトを支点にしようとして、足が痛くなってしまった人も多いのではないでしょうか?

 つまり足首を動かす際、

44_asi4.jpg ←こうではなく 44_asi3.jpg ←このように動かせば、どこも痛くなったりせずに、
スムーズに足首は動いてくれるのです。

 また、その足首を動かす際、「スネやフクラハギの筋肉が必要」と思っている人が多いようですが、実はここで大事になるのが、足の裏の靭帯や腱なのです。
「靭帯や腱を使ってペダルなんて踏んだら、断裂しちゃうんじゃないか?」という誤解をしている人もいるそうですが、靭帯や腱ってものすごく強いって事を知ってましたか?

 以前のドラミングアドバイスと重複しますが、もう一度よ~く考えてみて下さい。

 我々人間は生活する上で常に歩いています。その歩くという動作を別の言葉でたとえると「自分の全体重が片方の足首にかかった時にその足首を伸ばす動作」とも表現できます。

 たとえば体重60キロの人が歩くとき、瞬間的に60キロ以上になる体の重さが片方の「足首」にかかっているのですが、特に重さや疲労を感じてはいないはずです。
ドラム演奏時におけるペダリングも同じく足首を伸ばす動作であるはずなのですが、わずか体重の何十分の一の重さしかないドラムペダル(フットボードの踏力は通常2~3キロしかありません)を踏むためにトレーニングをしたり、演奏時に疲労や痛みを感じるなんて、とても変な話ではないでしょうか?

 大変多くの方が「非日常的なフットワーク」、つまり人間として「日常的に使っていない足首の伸ばし方」になっているようです。
人間の通常歩行は主に足首まわりの「靱帯」や「腱」という「筋肉とは別の役割を持つ部分」を主に使って歩いているのです。
全体重がかかった足首を伸ばしても重さや疲労を感じないほど、靭帯や腱は“超力持ち”なのです!

 「歩く」「またぐ」などの「日常的で最も自然な足首の動作」をフットーワークに取り入れたものが「自然体奏法であり正しい奏法」なのではないでしょうか?

 ドラミングだけに必要な筋肉(非日常で使うための筋肉)をわざわざ鍛えるよりも、普段歩いているときの“日常的な動きの感覚”で演奏できたら大変楽ではないでしょうか? また、この方法は超一流ドラマーであるバディ・リッチやデイヴ・ウェックル,ヴィニー・カリウタなどに代表されるフットワークです。

※ここで言う「自然体奏法」とは、よく言われている「脚を持ち上げて落とすだけ」というものとは、根本的に違います。
 「脚を持ち上げて落とすだけ」と「言葉」で言われると、いかにも自然な感じを受けてしまいますが、その実態は「たった一曲の演奏で、数100回~1000回前後も、脚を持ち上げなさい」という筋肉エクササイズです。「モモ上げ100回!!」でも苦しいのに、一回のバンド練習で、1万回以上も脚を持ち上げなくてはならない奏法について、どう思いますか? 勘違いせずに読み進めて下さいね!

足首イラスト


足裏イラスト

一番最初の動画では、靭帯や腱を使い、足とプレートの接触面積を必要最小限にする事で、連打の最中という本当に短い時間の中で、可能な限りリバウンドを起こし、あのような高速プレイを行っているのです! もちろん、身体のどこかが痛くなったりなどという事も、全くありません。

■人体力学トリビア:「足の裏」が下半身と脚のスイッチ

 実際、足首や足裏まわりの靭帯や腱について、意識した事がない人も多いと思いますので、少し説明を加えておきます。

 それでは、まず立ってみて下さい。 その時、多少“足の裏”に力が入っているのを、誰でも確認できると思います。 次にその状態から、足の裏の力を完全に抜いてみて下さい。
いかがですか? 立った状態で足の裏から力を抜き去ると、フトモモやフクラハギ等の筋肉から力を抜いたつもりが無くても勝手に力が抜けて、いきなり、しゃがんでしまいませんか?(わかりづらい人は、立った時に、少し膝を曲げて、やってみて下さい)
  つまり、足の裏の靭帯や腱は、「足と脚全体を動かすスイッチ」の役割を持っているのですよ!! 

 今度は実際にドラムを演奏するつもりで、ドラムイスに座って下さい。 そしてさっきの様に、足の裏の力を完全に抜いてみて下さい。 どうでしょう? 今度は何も変化が起こらなかったのではないでしょうか? ですので、立っている時には誰でも使っている足の裏の靭帯や腱を、イスに座った途端に、「全く使わなくなってしまう人が非常に多い」のです。
  確かに、ただ座るだけなら、靭帯や腱を使う必要はありません。しかし私達ドラマーは、イスに座って常に足を動かさなければならないのですよ。それなのに、足裏のスイッチを「OFF」にしていまい、完全に座り込んでしまう人が非常に多いのです。 ですから、日本的フットワークを行うドラマーさん達は、スネやフクラハギやフトモモの筋肉を使わざるを得なくなっているのですよ!

 ドラマーは、ドラムイスに座った時には、立っている時のように、足の裏の靭帯や腱のスイッチを「ON」にしておく必要があるのです。 また、「足の裏の靭帯や腱」は「大腰筋、腸腰筋」等と繋がっていますので、ボディショットを行う際にも、まず足の裏の靭帯や腱を先に反応させなくては、「腰」も入れる事はできないのです。

 では、BPM220の『両足のダブルストローク』を、靭帯や腱で行っている動画をご覧下さい。

動画:足のダブルストローク
足のダブルストローク
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動画がうまく見れない場合は…
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 いかがですか? ちなみにこの方法は、バージル・ドナッティの行う足のダブルストロークの方法とは、根本的に異なっています。 バージル・ドナッティはスネ、フクラハギ、フトモモの筋肉などを中心にダブルストロークを行っていますが、K's MUSIC講師の喜納は、足首や足裏まわりの靭帯や腱、そして脚の股関節を有効に使う事で、足のダブルストロークを可能にしているのです。

<最後に>

 それでは最後に、もう一度すべての動画を見て分析し、実際にご自分でチャレンジしてみて下さい。


超高速フットワーク


手の指3本vs脚


日本的奏法と
スプリングコントロール


みかんとフットワーク


足のダブルストローク

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 『スプリング・コントロール奏法』も『リバウンド・フットワーク奏法』も、小中学校の理科で考える事のできる人なら、誰もがその仕組みを理解できてしまうほど、簡単な理論です。 ですから、ここまでの内容が本当に理解できていたら、動画の分析ぐらいはできると思いますよ! ただ読むだけで、「できているつもり」や「わかっているつもり」になって終わってしまっていては、本当にもったいないですよ!(実際、K's MUSICの入校当初に、無意識でできていた生徒さんは、たくさんのプロの方々の入校者を含めても皆無に等しかったくらいですから・・・)

 今回の内容が、「足が速く踏めない!」 「バスドラのパワーが出せない!」 「足や腰が痛い!」 「バスドラで遠近感が出せない!」等、フットワークで悩んでいる人の役に立てたならK's MUSICとしても非常に嬉しく思います!

 何度も読んで、また動画も参考にして、ぜひご自分のプレイに取り入れていって下さいね!

今回はペダルと足周辺に「限定」して説明しましたが、足の靭帯や腱は、骨盤や股関節や大腰筋、重心と切り離して考えることはできません。 結果として「股関節や骨盤を使った足モーラー奏法へと発展」していくのです。 それは今後のドラミングアドバイスで詳しく解説していきたいと思いますので、どうぞご期待ください!

※最後に、注意点を挙げておきます

  1. 超高速フットワークを行うための『リバウンドフットワーク奏法』については、モーラー奏法の『肩の動き』を『股関節に置き換えている』ため、手腕のモーラー奏法ができていないとマスターできません。 ですので手腕のモーラー奏法を確実にマスターしてから、リバウンドフットワークの練習をするようにして下さい。

  2. 『スプリング・コントロール奏法』や『リバウンド・フットワーク奏法』を練習する際、必ず足裏や足首周辺の靭帯や腱を先に反応させるように心がけて下さい。 ただし、靭帯や腱にスイッチを入れたまま、日本的奏法のように、スネやフクラハギやフトモモの筋肉を中心に足と脚を動かしてしまうと、かなりの確率で筋肉痛や関節炎、もしくは腰痛になってしまいます。 ですので筋肉自体は極力、脱力した状態で練習するようにして下さい。 もしどこかが痛くなったりした場合は、靭帯や腱よりも先に筋肉を反応させてしまっている等の原因が考えられますので、すぐに練習をやめ、やり方を改めてください。 むやみに練習を行って、身体を壊したとしても、K's MUSICは一切責任を負いかねますので、ご了承下さい。

<K's MUSICから、ドラマーの皆さんへ>

皆さん人それぞれ「憧れのドラマー」がいると思いますが、
「自分には無理だ」とあきらめてしまっている人はいませんか?
ですが、彼ら超一流ドラマー達も、普通のアマチュアドラマーさん達も、

生理的限界に、差はありません。
彼らが特別なのは、超一流ドラマー達だけに共通する
身体の動かし方や、その動かす時に使っている部位、呼吸、
そしてスティックや、ペダル等の

コントロールの仕方が、一般ドラマーとは根本的に違っているからなのです。
スティックワークにしても、グルーヴにしても、
今回のフットワークにしても、繰り返しになりますが、
“生理的限界に差は無い”のですから、あきらめたりせずに、
彼ら超一流ドラマー達と同じ方法を試してみませんか?

K's MUSICドラム人間科学は、
そういった超一流ドラマー達だけに共通する法則の宝庫です!