2012年2月1日03時00分
東日本大震災の被災地で、復興需要の高まりによる人手不足が、建設・土木関連から、小売店など個人消費関連に広がってきた。厚生労働省が31日発表した12月の有効求人倍率で浮き彫りになった。復興の足かせになるかもしれない。
「あと2、3人は欲しい」。約3800人の死者・行方不明者を出した宮城県石巻市。海から1.3キロほど内陸側にあるファミリーマート石巻大街道西店の高橋昇店長(59)は、人繰りに頭を抱えている。
沿岸部のコンビニは今、復旧工事の作業員で大にぎわいだ。朝の人気はおにぎりや缶コーヒー。昼はお弁当など、夕方からは、缶ビールやおつまみが売れる。
高橋さんの店は津波で壊れたが、昨年5月に再開した。元スタッフに声をかけた。でも、遠くの仮設住宅に入ったため通えなくなっていたり、JR仙石線が不通になったため引っ越していたり――。店頭に求人ポスターを出し、新聞の折り込み広告も増やしたが「全く反応がない」。
宮城県の有効求人倍率には、被災地の人手不足の傾向の変化がうかがえる。
31日発表された昨年12月の建設・土木作業の倍率は3.69倍。求人が求職者をこれだけ上回っている。6カ月連続の3倍超だ。さらに、コンビニを含む「販売・営業」の倍率が、徐々に高まってきた。販売・営業のパートの求人は、9月から求職者を上回り続ける。
日本銀行は1月の地域経済報告で「被災地で小売店が新規出店を計画しても、求人難がネックになっている」と指摘した。
原発事故の影響を受ける福島県は、より深刻だ。
南相馬市に実際住んでいる人の数は4万3千人と震災前より3万人減った。同市を含む「相双地区」の昨年12月の有効求人倍率は0.83倍と県内で2番目に高かった。ハローワーク相双の担当者は「求人をあきらめ、閉店時間を早める小売店もある」と話す。
元の場所での規模縮小を迫られた企業もある。
南相馬市で縫製工場を営む「三恵クレア」では、約75人いた従業員が40人ほどに減り、いわき市に新工場をつくった。五十嵐孝夫社長は「南相馬市に元の住民が戻っても企業がなくなり、復興が進まなくなる」と危ぶむ。