1704人の市民らが九州電力玄海原発全4基の運転差し止めを国と九電に求める訴えを起こした31日、原告団は提訴後に佐賀市内で記者会見を開き、裁判に対する意気込みを語った。原告の一人で、40年以上反原発運動に取り組んできた唐津市の成富忠良さん(70)は「九電や国のエネルギー政策に対する市民の不信感を、脱原発への関心につなげる裁判にしなくてはいけない」と声を振り絞った。
成富さんの自宅は玄海原発から13キロ圏にある。同原発の誘致が進められた頃から反原発を訴え、市民グループ「玄海原発対策住民会議」の事務局長を務める。
これまでも原発の危険性を訴え集会などを開いてきたが、福島原発事故を受けて「原発がこの国にあっていいわけがない」と確信。更に九電の「やらせメール」問題など度重なる不祥事に「怒りを覚えた。これで知らん顔をしていたら福島の人たちに申し訳ない」と原告入りを決意した。
原発事故以降、地元では不安を覚えながらも「今でも原発の恐ろしさを声にすることもはばかられる」と現状を訴える。
自身は元高校教諭で、家族らに反原発運動を心配されたが「かわいい孫を持つ身だからこそ、子供たちに負の遺産を残してはいけない」と力を込めた。【田中韻、春田周平】
毎日新聞 2012年2月1日 地方版