フリーター生活から一念発起 医師の道へ(2012/01/29 14:08)
患者の治療法について看護師と話し合う桐谷浩一さん(右)=23日、むつ市のむつ総合病院
 フリーター生活を経て医師の道へ―。下北地方の拠点病院であるむつ市のむつ総合病院に、そんな異色の経歴を持つ研修医がいる。福岡県北九州市出身の桐谷浩一さん(35)。大学を退学してアルバイトに明け暮れていたが、両親の離婚をきっかけに一念発起し、猛勉強の末に国立大学の医学部に合格。「全国的に危機が叫ばれる地域医療に関わることで、世の中の役に立ちたい」との思いから、医師不足問題が特に深刻な下北の地をスタート地点に選んだ。(岩舘貴俊)
 
 桐谷さんは北九州市南部の小さな集落で生まれ育ち、地元の高校を卒業後、九州大理学部へ進学。日々の暮らしのために始めたアルバイトが次第に生活の中心となり、1年ほどで大学を辞めた。引っ越しセンターや日雇いの派遣労働などで生計を立て、時間があれば「好きな車で峠越え」を楽しんでいたという。
 人生を見つめ直す契機が訪れたのは今から8年前。両親が離婚し、母が地元で一人暮らしとなった。久々に実家へ帰ってみると、病弱で元気のない母や、お世話になった近所のおじさんが都会まで出向き、人工透析を受けている姿を目の当たりにした。
 「やんちゃな生活にピリオドを打ち、恩返しをしなければ」。これまでの生き方を改め、故郷のように医療体制の整わない地域でも活躍できる医師になることを決意した。
 働きながら独学で勉強し2005年4月、28歳で九州大医学部に入学。卒業後の昨年4月、自らむつ総合病院を赴任先に選び、医師としての第一歩を踏み出した。
 同病院は、さまざまな症状を持つ地域の患者を一手に引き受ける。医師の人員も限られ、急患で夜中に起こされることもしばしばだ。
 それでも、桐谷さんは「地域に愛される病院だし、即戦力として経験を積むことができる」とやりがいを感じている。医師の少ない地域に可能な限り高いレベルの医療を提供できるようにと、研さんに励む毎日を送る。
 青森県内をはじめ、全国の地方での医師不足問題は深刻さを増すばかりで、抜本的な解決策は今も見えない状況にある。
 桐谷さんは自らの歩みを振り返りながら、未来を担う若者たちに、こんな熱いメッセージを送る。「自分のような普通の人間でも医師になれた。努力するのに値する仕事だから、ぜひチャレンジしてほしい」
【写真説明】
患者の治療法について看護師と話し合う桐谷浩一さん(右)=23日、むつ市のむつ総合病院

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