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東日本大震災:福島第1原発事故 除染、14年3月完了 年50ミリシーベルト以下優先--環境省工程表

 ◇春に本格着手 「50ミリシーベルト超」は計画示せず

 環境省は26日、東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の除染について、国が直轄で進める作業の工程表を発表した。放射線量が年間50ミリシーベルト以下の地域は住民の同意など条件が整った地域から今春以降順次、本格除染に着手し、14年3月末の完了を目指す。年間50ミリシーベルト超の地域では、現在の技術では住民が帰宅できるレベルまで線量を下げられず、帰還の難しさが改めて浮き彫りになった。

 国は放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、現在の警戒区域と計画的避難区域を「除染特別地域」として除染。両区域は4月から(1)年間20ミリシーベルト以下の避難指示解除準備区域(除染対象面積約1万200ヘクタール)(2)同20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下の居住制限区域(同7200ヘクタール)(3)同50ミリシーベルト超の帰還困難区域(同約9300ヘクタール)--に再編する。除染では高圧洗浄機で洗い流したり、表土をはぎ取ったりする方法などが取られる。汚染された物は仮置き場を経て、中間貯蔵施設に運ばれる。これまでは役場など公的機関を中心に試行してきたが、今後は約6万世帯が所有する住宅や店舗などでも実施される。

 工程表によると、3区域のうち年間50ミリシーベルト以下の(1)、(2)の地域の除染を優先。役場、常磐道や上下水道などのインフラ施設の除染を先行した後、民有地の所有者から同意を得て本格除染に着手する。

 (1)の地域では、まず同10ミリシーベルト以上の地域や5ミリシーベルト以上の地域の学校など線量が高めの場所から同10ミリシーベルト未満を目指して除染し、今年中の完了を目指す。5~10ミリシーベルトの地域では来年3月末まで、1~5ミリシーベルトの地域では14年3月末までに除染する。この過程で、来年8月末までに住民の年間追加被ばく線量を約半分に減らし、子どもは約6割減を目標とする。

 (2)の地域では、年間追加被ばく線量を20ミリシーベルト以下にすることを目指し、14年3月末まで除染する。

 年間50ミリシーベルト超の(3)の地域では当面、除染の効果を確かめるモデル事業を実施することのみが盛り込まれた。

 環境省は今年3月末までに自治体ごとの詳細な除染計画を策定する。細野豪志環境相は「帰還困難区域の皆さんには(本格除染の計画を示せず)厳しい状況であるとお知らせすることになった」と話した。【江口一】

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 ■解説

 ◇住民帰還は不透明

 東京電力福島第1原発事故の影響で住民が避難している「除染特別地域」(約2万6700ヘクタール)の除染工程表が示され、放射線量が年間50ミリシーベルト以下の地域では14年3月末までの作業の終了をうたった。だが、除染の効果は今なお不明で、除染後のインフラ整備などの課題も山積している。住民の帰還については、先行きは不透明だ。

 また、工程表では、どこまで線量を下げるかという目標値は明らかにされなかった。現在、内閣府が行っている除染のモデル事業の結果が2~3月に判明する予定で、環境省は目標値はそれを待ってから決める方針だ。

 環境省は、現在の技術で、年間50ミリシーベルト以下ならば年間20ミリシーベルト以下まで下げることが可能としている。「年間20ミリシーベルト超」は、国際放射線防護委員会(ICRP)が緊急時に避難するのが望ましいとする値で、日本はこの基準で住民を避難させてきた。

 一方、帰還困難区域となる年間50ミリシーベルト超の地域について、国は「モデル事業で効果を見ながら対応を検討する」としている。つまり、現状では除染によって帰宅可能なレベルまで線量を下げることは不可能ということだ。

 環境省幹部は「例えば年間100ミリシーベルトの所を、50ミリシーベルトまで下げるために除染を行うことが必要かどうか、地元の意向を聞いて決めることになる」と話す。

 工程表は地域再生の難しさを改めて示した。避難住民が今後の生活設計への見通しを得るためにも、政府は引き続き、除染の効果や現状を丁寧に説明していくことが求められる。【藤野基文】

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 ◆除染工程表の骨子◆

 ▽避難指示解除準備区域と居住制限区域の除染を優先し、14年3月末までに完了する。

 ▽避難指示解除準備区域(年20ミリシーベルト以下)

・13年8月末までに、11年8月末と比べて年間追加被ばく線量を50%(子どもは60%)減少させる。

・年10ミリシーベルト以上の地域はそれ未満を目指す。校庭は学校再開前に線量を毎時1マイクロシーベルト未満にする。

・局所的な高線量地点や市街地、学校や役場、基幹道路などを優先する。

・12年内に年10ミリシーベルト(学校は年5ミリシーベルト)以上の地域、13年3月末までに年5~10ミリシーベルトの地域、14年3月末までに年1~5ミリシーベルトの地域を順に除染する。

 ▽居住制限区域(年20~50ミリシーベルト)

・12~13年度に除染。

・年20ミリシーベルト以下を目指し、20~50ミリシーベルトの地域を段階的かつ迅速に縮小する。

・優先する区域は地元と協議する。

 ▽帰還困難区域(年50ミリシーベルト超)

・国の除染モデル事業で効果的な除染技術を確立してから対応を検討する。

毎日新聞 2012年1月27日 東京朝刊

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