蛇口から水が出なくなって約10カ月がたつ。
福島県いわき市の山あい、遠野町。13世帯が暮らす為朝集落に異変が起きたのは昨年4月11日のことだった。震度6弱の余震が発生、これを境に水が断たれた。近くのわき水から共同で水を引いていたが、山が崩れた影響か、水源が枯渇してしまったのだ。
「飲み水にさえ困る状況で、田植えもできなかった」。農業を営む折笠茂子さんは、めいったような表情をのぞかせる。「へたをすると集落が消滅する」。何とかしようと、いくつも井戸を掘ったものの、ダメだった。地滑りが専門の研究者を招いて調査してもらったが、もはや水源は探り当てられなかった。
もともと上水道の区域外のため給水車は回ってこない。水道を利用できる市役所の支所まで2時間かけて交代で生活用水をくみにいく日々が今も続く。不便を解消しようと、近隣の集落のわき水から簡易水道を敷設する準備を進めるが、その費用の工面が難題だ。
既存の給水設備に目に見える破損などがあるわけではないので、行政も“被災”とは認めてくれず、義援金も入ってこない。市には陳情に陳情を重ねてきた。そうして補助金を上乗せして引き出してもなお1000万円の自己資金が必要だという。ただでさえ原子力発電所事故による逆風が農業に吹きつけている。ますます生計は苦しくなる。
実は3月11日の東日本大震災の際、為朝集落は被害があまりなかった。食料も、そして水も豊富にあったので周辺の特別養護老人ホームに配って歩いたほどだ。避難所を車で回り、被災者を家に招いて風呂に入れたりもした。お茶を飲み、畳をなでて、涙を流す人もいたという。「3月のあのころ、語弊があるかもしれないが、私たちは本当に余裕があった」と折笠さん。「それが4月になったら……」
被災地のインフラの復旧は少しずつでも進んでいるように映る。が、取り残されている人たちもいる。「見えない」被災者がいる。そのことを忘れないでいたい。(舘野真治)
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