きょうのコラム「時鐘」 2012年1月31日

 横断歩道(おうだんほどう)は都市のバロメーターだ。通行量で商店街の景気(けいき)が、通行人の歩くスピードで土地柄(とちがら)や市民性まで分かる

JR大阪駅前の横断歩道は、信号が変わるのを待ちきれない群衆(ぐんしゅう)が赤信号の中を動き始めることで有名。浪花(なにわ)っ子の性格や、みんなで渡(わた)ればこわくない大衆心理(たいしゅうしんり)が見え、社会学の定点観測(ていてんかんそく)の場にもなっている

東京駅の丸の内側の横断歩道は、通勤時(つうきんじ)の人の波が経済ニュースの背景にしばしば利用される。マスクを付けた人を写せばインフルエンザ流行の目安(めやす)にもなる。東京と大阪二つの横断歩道を重ねると東西文化の違(ちが)いまで見えてくる

金沢の香林坊に2カ所あった横断歩道の通行量が、最近変化していると指摘(してき)する人がいた。新しい商業ビルの誕生(たんじょう)したことによる移動だ。武蔵(むさし)では近江(おうみ)町市場(ちょういちば)の近代化で横断歩道の通行量が大きく変化した。富山のデパートが改装(かいそう)した時も同じだった

香林坊・片町と武蔵の二大商圏(しょうけん)が連携(れんけい)する話題があった。人の流れは変わる。横断歩道は商圏をつなぐ大切な橋(はし)だ。その都市らしい個性的で渡りやすい「橋づくり」にもっと工夫(くふう)があってもいい。