米国は、企業を通して技術の移転も許容する政策転換に出ている。初期には日本 他への製品輸出すら制限せんとしていたが、今や輸出も促進へと打って出ている。国富の元として、製品のみならず開発技術も換金して世界をリードする策としている。これまでの戦争の要因が主として石油の取り合いであったことを考えるとき、こう云ったやり方の方が、軍事力頼りの国防よりも効果的となると感じる。米国内では採掘することによる公害解決課題があるが、いずれ解決できると思われる。一番の幸いなことは、シェールガスの埋蔵地域が全世界に満遍なく分布していることである。
米欧から採掘技術 新興国、エネ需要賄う
【北京=多部田俊輔】地中の岩盤層に含まれる「シェールガス」と呼ばれる新型の天然ガスの開発が北米から中国やインドなど新興国に広がってきた。経済成長に伴って急増するエネルギー需要を賄うため、中国は欧米の石油大手などと協力して本格的な開発に乗り出した。これまで技術的に難しいとされてきたシェールガスの生産が軌道に乗れば、世界のエネルギー秩序に影響を与えるのは確実だ。
中国政府はこのほどシェールガスを独立した資源として認定し、資源開発を推進する方針を決めた。政府の試算によると、中国のシェールガスの推定埋蔵量は世界最大の21兆〜45兆立方メートル。2020年までに年800億〜1千億立方メートルの生産を目指す。
政府はシェールガス開発の5カ年計画を詰めており、15年までに1兆立方メートルの埋蔵量を確認し、年65億立方メートルを生産する目標を掲げる方針。昨年初めて実施した探査プロジェクトの入札についても入札条件緩和や、探査企業への補助金支給などの優遇措置を実施して開発を加速する。
シェールガスの採掘は技術力が必要なため、中国は欧米企業とも協力する。国有石油大手の中国石油天然気集団(CNPC)は英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルと共同で四川省などで探鉱、昨年末に鉱床を発見した。
中国石油化工集団(シノペックグループ)はこのほど米石油探査会社デボン・エナジーが米国に持つシェールガス権益の一部を22億ドル(約1700億円)で取得することで合意した。海外資源の獲得に加え、シェールガス開発のノウハウ吸収も目指す。
インド政府もシェールガスの国内採掘に前向きだ。採掘技術、法規制、投資誘致などで協力を取り付けるため、10年11月に米国との間で覚書に署名した。現在は埋蔵量の調査や政策立案を進める。
背景にあるのは天然ガス需要の増加だ。インドのガス需要は12年度(12年4月〜13年3月)見込みの日量2億9千万立方メートルから16年度には4億7千万立方メートルに膨らむ見通し。しかし、供給力は12年度見込みが1億2400万立方メートルで需要超過が目立つ。
ロシアからの天然ガス輸入に頼ってきたポーランドは米エクソンモービルなどにシェールガス採掘許可を発給、15年をめどに本格生産を目指す。同国のシェールガス埋蔵量は推定5兆3千億立方メートルとされ、天然ガス需要の300年分に達する。
ウクライナではシェルと国営エネルギー大手が探査採掘許可を受けており、シェルは8億ドルを投じて開発を進める方針。ポーランドとウクライナはロシアの天然ガスにエネルギーを依存する体質の脱却を狙っている。