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東シナ海ガス田 中国が単独開発か

1月31日 16時4分 twitterでつぶやく(クリックするとNHKサイトを離れます)

日中両政府が共同開発に向けて協議の対象としている東シナ海のガス田で、採掘施設から炎が出ているのが、NHKが上空から撮影した映像で確認されました。専門家は「天然ガスを燃やしているとみられ、中国側が単独で開発を続けている可能性がある」と指摘しています。

NHKは、今月26日、東シナ海の「日中中間線」付近にあるガス田「樫」を航空機で上空から撮影しました。中国が築いた採掘施設の先端からは、炎が吹き出しうっすらと黒い煙が上がっていることが分かります。また、映像を詳しく見ると、一部の区画では、作業員とみられる人の姿も確認できます。「樫」を含む海域について、日中両政府は、平成20年6月、共同開発に向けて協議を行うことで合意しました。しかし、翌年の平成21年1月になって、「樫」の周辺の海面が茶色く濁るなど中国側が単独で開発を続けている疑いがあることが表面化しました。日本政府が「両国の合意を軽んずる行為だ」として抗議したのに対し、中国側は「開発作業を行うのは、中国固有の権利の行使だ」などと反論していました。今回、「樫」の施設から炎が出ているのが確認されたことについて、長年、技術者として石油・天然ガスの開発に携わってきた猪間明俊さんは「生産段階にあるのかどうか分からないが、炎や煙を見ると、採掘施設で採れた天然ガスを燃やしているとみられ、中国側が単独で開発を続けている可能性がある」と指摘しています。

外務省は、「日中の中間線の西側で、中国が、資源開発の可能性がある活動を行っていることは、認識しているが、実際に資源開発を行っているかどうか、断定できる状況にはない。ただ、境界線が確定しておらず、日中間の合意もない状況で、中国側による一方的な開発は、認められない。中国政府には、抗議の申し入れを行っている」と話してしています。

現代中国論が専門の横浜市立大学の矢吹晋名誉教授は「中国側のねらいは、資源の確保に加えて、中間線付近の海域に構造物を造って海軍がそれを守ることで、この海域の実効支配を拡大していくことにあるとみられる。日本としては、これを機会に、中国の真意を確かめるため対話を早急に再開する必要がある」と話しています。

沖縄本島から北西に400キロほど離れた日中中間線付近の東シナ海には、天然ガスを埋蔵したガス田が複数あることが、日本や中国などの調査によって明らかになっていますが、このうち5か所については、日中両国によってそれぞれ名前がつけられています。5か所のガス田は、南から、▽「白樺」(中国名:春暁)、▽「樫」(中国名:天外天)、▽「楠」(中国名:断橋)、▽「桔梗」(中国名:冷泉)、▽「翌檜」(中国名:龍井)です。このうち、日中中間線より中国側に位置する「白樺」と「樫」について、中国は平成15年ごろから開発に着手しています。これに対し日本側は、平成17年に「白樺」や「樫」をはじめ4つのガス田について、中国側に共同開発を申し入れました。そして、平成20年、日中両政府は「白樺」「翌檜」の南側にある海域の2か所について共同開発を行うことで合意するとともに、「樫」を含む「東シナ海のほかの海域」についても共同開発に向けて継続して協議を行うことで合意しました。しかし、その後起きた尖閣諸島沖での漁船の衝突事件の影響もあって、共同開発に向けた具体的な交渉はほとんど進んでいません。こうした間にも、中国は単独で「樫」の開発に向けた動きを進めていた可能性が指摘されています。