日本人の高齢化に伴い、がんは急増し、いまや3人に1人はがんで亡くなる時代になりました。そこで、東京大学医学部附属病院放射線科の中川恵 一准教授(同病院緩和ケア診療部長)と、がん治療の先進国をめざして「がん対策基本法」の成立をリードしてきた公明党の浜四津敏子代表代行に、日本のがん 治療の現状と課題について語り合ってもらいました。

■■■「日本はがん大国だが対策後進国」中川■■■
■■■「早期発見へ受診率向上に取組む」浜四津■■■

中川東京大学医学部准教授
公明党の皆さんの尽力で「がん対策基本法」が施行され、その柱に放射線治療や緩和ケアが位置付けられたのは画期的なことです。一人の臨床医として素晴らしい法律ができたと感謝しています。

浜四津代表代行
中川先生には「国民の皆さんをがんの苦しみから救いたい」という熱い思いで公明党とともに、「がん対策基本法」成立に向 け、尽力していただきました。日本はようやくがん対策の夜明けを迎えたと確信しています。ところで、先ごろ出版された「がんのひみつ」(朝日出版社本体価 格=680円)が好評のようですね。

中川
ありがとうございます。「がん対策基本法」ができましたが、国民の皆さんが、がんのことをもっと知らなくては法律の実効性が少なくな ります。日本人の2人に1人はがんになり、3人に1人はがんで亡くなる時代です。日本は「がん大国」ですが、実は「がん対策後進国」でもあります。がんに ついてもっと知っていただきたい、という思いで書きました。

浜四津
お医者さんが書く本は難しいというイメージがこれまでありましたが、分かりやすく、ユーモアがあって、いろいろな角度からがんを考 えるヒントを与えてくれる本だと思います。本書では69の「ひみつ」が書かれていますが、「ひみつ」は実は欧米では常識ということですね。がんに対する日 本人の意識で何が問題なのでしょうか。

中川
一つは日本人の心の中に「がんイコール死」ということで、死を考えたくない、縁起でもないという風潮があります。現代は日本の歴史上、もっとも死に対する感覚がない時代のような気がします。

浜四津
最近は病院の中で亡くなる人が多くなっているので、人の死を身近に感じることが少なくなっています。つまり、やがて自分も死ぬということを考える機会が少ないのではないでしょうか。

中川
その通りです。結果的に病院が人の死を隠していることになります。

浜四津
中川先生は「よく死ぬことが、よく生きること」が持論ですが、逆に言うと、よく生きることがよい死を迎えるということですね。

中川
死を考えることによって生が輝きます。死をあまり考えたがらない最近の日本人の死生観は、結果的に損になります。この本を書いた大きな動機の一つです。

浜四津
一方、この本では「がんの半分は治る」と強調されています。公明党は乳がんの早期発見のために、マンモグラフィの普及に力をいれてきました。また、国会議員と地方議員のネットワークを生かし、各地でがん検診の受診率向上をめざし、さまざまな取り組みを行っています。

中川
それは極めて重要なことです。例えば、乳がんに関してはマンモグラフィの普及で早期発見ができ、死亡率が減っている。実のところ、がん治療の技術自体は劇的に進歩しているわけではないのです。なのになぜ死亡率が下がってきたか。結局、早期発見が何より大事なのです。

浜四津
がん検診が有効ながんと、あまり有効でないがんがあるそうですが。

中川
がん検診が明らかに有効なのは乳がん、子宮がんと大腸がんです。三つのうち二つが女性特有のがんです。子宮がんと乳がんは公明党の推 進で検診の重要性が浸透してきましたが、さらに推進していただきたいと思います。例えば、乳がん受診率を日米で比較すると、日本が2割なのに対し、米国は 8割です。米国では約6人に1人が健康保険に入っていませんが、がん検診は無料です。

浜四津
検診で早期発見、早期治療ができれば患者さんの生命を救うことができます。その上、国の医療費を安く抑えることになります。公明党は受診率向上とともに、がん予防も大切と考えています。

■■■「予防には野菜と適度な運動」(中川)■■■
■■■「子どものころから正しい知識を」(浜四津)■■■

中川
これも日米の比較ですが、1人当たりの野菜の消費量を見ると、1995年を境に米国が日本を逆転しています。日本人は一般的に米国が ハンバーガーの国であり、不健康なイメージを持っていますが、がん対策のため国を挙げて野菜をよく食べるようになり、がんも減っています。一方、日本では 肉をたくさん食べるようになり、乳がん、前立腺がんが増えています。がん予防には野菜を多く食べ、適度な運動を取ることが有効です。

浜四津
たばこはいかがですか。

中川
米国では、禁煙は当たり前で、がん予防の項目にも入っていません。今、たばこがなくなれば、男性のがんは3分の1に減ります。

浜四津
愛煙家の方には耳が痛い話ですね(笑い)。ところで1月15日、先生の母校である暁星高校で、高校生を対象に「がんの特別授業」を行ったそうですが、生徒たちの反応はいかがでしたか。

中川
「がんイコール死」と考えていた生徒もいましたが、半分以上治ると聞いて認識を改めてもらえたと思います。また、緩和ケアの話もしま した。欧米ではがんはそれほど痛く、苦しむ病ではありません。末期患者の場合、モルヒネを使って痛み止めをした人の方が長生きします。日本人の一般的な考 え方では、モルヒネを使ったら命がすり減っていくと思っている。ところが現実はそうではない。痛みが取れればよく眠れるし、心も安定します。

浜四津
2人に1人が、がんにかかるわけですから、中学や高校の総合学習でがん教育を実施して、子どものころからがんについて正しい知識を 持つことが大事ですね。また特別授業の中で先生は、日本で放射線療法が進まない理由として、「痛みもなく、身体の負担も小さく、その上、費用も少ないこと を国民が知らない」と述べられています。これからは、先生が指摘されるように、がんの治療方法は患者が選ぶ時代になってくると思います。公明党も「がん対 策基本法」を踏まえ、がん予防、検診率向上など総合的な対策をさらに推進したいと考えています。

中川
私も公明党の皆さんと力を合わせて、がんをはじめ医療改革に取り組んでいきます。その一歩として拙著「がんのひみつ」を国民の皆さん全員に読んでいただきたいと思います(笑い)。

浜四津
本日はありがとうございました。

(了)

コメントは受付けていません。

Twitter
外部リンク