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Standard Deck to Beat 2007 March
→「グルール・ビート」2007年GP京都 8位
→「青赤トロン」2007年GP京都 優勝
→「トリコロール」2007年GP京都 6位
→「トリコロール」2007年GP京都 7位
→「青赤トロン」2007年GP京都 23位
→「青緑トロン」2007年GP京都 5位
→「青単変異デッキ」2007年GP京都 3位
→「プロジェクトX」2007年GP京都 準優勝
→「発掘デッキ」2007年GP京都 10位
→「ソーラーフレア」2007年GP京都 4位
→「青黒トロン」2007年GP京都 9位
参照:2007年GP京都
GP京都前のことだが、プロツアーチャンピオンの小室 修はこんなことを言っている。「次元の混乱から新しいタイプのデッキが生まれる事はまず無い」と。彼曰く「次元の混乱というセットの中で、デッキの軸となるカードはごく僅か、さらに真の意味で構築レベルのカードと呼べるものは見当たらない。《滅び》なども、青黒コントロールを後押しするだろうが、それも従来のデッキの焼き直しに過ぎず、結局、次元の混乱がスタンダード環境に与える影響は小さい」
私の意見では、小室の言う事に半分賛成で、半分反対だ。確かに次元の混乱のほとんどのカードは、従来のデッキタイプの中に居場所を見つける事になるだろう。個人的な感傷としては、《野生のつがい》や《有り余る無》といったコンボ要素を持つ、デッキの軸となるカードの活躍を否定したくはないが、スタンダード最初のプレミアイベントの場で従来のアーキタイプを打ち破るようなサプライズを期待はできないだろう。ただ、それを差し引いても、スタンダードに与える影響が小さいという点に関しては、多少異論がある。次元の混乱の個々のカードには、メタゲームを左右するだけの力を持つものがいくつか眠っていると感じていたからだ。
事実、GP京都の結果を見れば分かるが、ベスト8を含め、上位は従来のアーキタイプを踏襲したデッキがほとんどを占めている。この点に関して、小室の言う事は非常に的を得ている。
ただ、このGP京都で象徴的なカードとして挙げられる《硫黄の精霊》を含め、次元の混乱の一部のカードはこのGP京都で確固たる地位を築いたのも事実だ。
今回はGP京都において、次元の混乱のカードがどのように活躍したか、それぞれにスポットを当ててデッキとともに見ていきたい。
■《硫黄の精霊》
《硫黄の精霊》は、基本的には白のクリーチャーを除去する用途で使われるクリーチャーだ。その存在は1体であっても《サバンナ・ライオン》、《アイケイシアの投槍兵》、そして《サルタリーの僧侶》を除去することができる。これらのクリーチャーは白系のビートダウン、特に赤白「ボロス・デック・ウィンズ」には欠かせない定番のクリーチャーであり、それが逆に現環境における《硫黄の精霊》がいかに効果的かというのを際立たせているのだ。
2体場に並べることができれば、言うまでも無く生き残れる白のクリーチャーはごく僅かになる。
《硫黄の精霊》を使える、代表的なデッキの一つが「グルール・ビート」だ。
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「グルール・ビート」
使用者:井出 克洋(8位)
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正統なビートダウンデッキが、この赤緑のグルール・ビートしか残れなかったというのも、《硫黄の精霊》によるところが大きい。赤白のボロス・デック・ウィンズは《硫黄の精霊》を利用できず、被害を被るのみだが、グルール・ビートはただ利用できるだけの色の組み合わせだ。それ以外、特筆すべき要素はグルール・ビートには無いが、苦手としていたボロス・デック・ウィンズが相対的な位置を下げた事により、ビートダウンでの1番手として浮上したのだろう。
また、《硫黄の精霊》のいいところは、その能力が恒久的なものであり、さらに本来が十分なパワーとタフネスを持ったクリーチャーであるという点にある。場に出た段階で、白のクリーチャーを除去できているならば、たとえ《硫黄の精霊》が除去されたとしても、あなたはアドヴァンテージを獲得している事になる。そして、能力が十分に生かせない場合や、その必要が無い場合でも、パワー3という攻撃力は十分大きい。その汎用性の高さが《硫黄の精霊》の強さを根底から支えている。対策カードという位置付けながら、グルール・ビートのビートダウンの要素を損なうことなく、使用することが可能なのだ。
そして、もう一つ《硫黄の精霊》の強さを鮮烈に印象付けたデッキが、GP京都を制した渡辺 雄也の「青赤トロン」だ。
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「青赤トロン」
使用者:渡辺 雄也(優勝)
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渡辺の使う青赤トロンは《硫黄の精霊》をメインに4枚投入しており、そして、その《硫黄の精霊》の働きが優勝の原動力となった。
しかし、何故この青赤トロンには、基本的にサイドカードと考えられていた《硫黄の精霊》がメインデッキで入れる価値があったのだろうか。
例えば、元々、青赤トロンはボロス・デック・ウィンを得意としていない。《サルタリーの僧侶》や《巨大ヒヨケムシ》に手を焼くことが多いことを考えると、《サルタリーの僧侶》を除去し、《巨大ヒヨケムシ》と相打ちを取れる《硫黄の精霊》は確かに強い。そして、コントロールデッキに対しても、瞬速と刹那という能力を備えている《硫黄の精霊》は、対戦相手のエンド前にカウンターされず、そして、隙をほとんど作らずに場に出す事ができる。
が、それらの要因は《硫黄の精霊》の強さをただ示すものであり、これだけではメインに入れてもいいかもしれないというレベルでしかないだろう。何故、パワーカードのひしめく青赤トロンの中で、4枚のスロットを割く事になったか。その本質は別にあるように思える。
私個人の見解を示すならば、現在の主流の青赤トロン(《燎原の火》などを含まない)はコントロールデッキではない。そもそも、《悪魔火》15点だとか、対戦相手のエンド前に《ボガーダンのヘルカイト》からの瞬殺などを平気で行うデッキが真っ当なコントロールデッキであるはずがない。常に、相手のライフを0にする事を考えるこのデッキは、バーンデッキ、バーン型のコンボデッキであるという方がしっくりくる。
バーンデッキと考えると、いかに《硫黄の精霊》によるダメージクロックが重要であるかが見えてくるのではないだろうか。青赤トロンから見て、相手のライフを引き下げる事は、勝ち筋を容易にする事になるからだ。20点のライフを《悪魔火》なり《ボガーダンのヘルカイト》で一度に削るのはさすがに難しいが、相手のライフが14点だとすると、ウルザ地形さえ揃えば十分《悪魔火》の射程圏内であり、残り10点ならば《ボガーダンのヘルカイト》1体でカタがつく。
即効性のある勝ち筋を持つため、青赤トロンを相手にした場合、自分のダメージの蓄積はそのままリスクの蓄積となる。ライフが危険水域になれば、隙を見せる事ができず、行動を大きく制限されることにつながるからだ。
それを踏まえると、今までの青赤トロンに欠けていたものというのは、序盤における効率的なダメージ源、クロックであると言えるのだ。そのワンピースを埋めてくれる存在である《硫黄の精霊》が刻む3点のダメージは、確実に相手を追い詰め行動を制約してくれるだろう。GP京都での活躍を見ると、《硫黄の精霊》はその単体の能力の高さもあるが、青赤トロンというデッキそのものが、勝ちにいくデッキへと完成するためのマスターピースであったと言えるのではないだろうか。
■《砕岩を食うもの》
GP京都イベントカバレージ内、直前のクイックインタビューで、森 勝洋も「次元の混乱の注目カード」として挙げていたクリーチャー。
《砕岩を食うもの》はクリーチャーの形態を取っているが、次元の混乱で5種存在する待機Xの可変型の待機コストを持つカードの一つ。待機カウンターを取り除く時に能力を誘発するタイプのカードで、実質、土地破壊カードとして機能する。待機の本来の概念とは逆に、待機が大きければ大きい程、その能力の恩恵を受ける事ができる。
その破壊できる土地は、特殊地形に限られているが、ウルザ地形の隆盛やコントロールデッキの多色化を考えると、実用性は高い。
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「トリコロール」
使用者:石川 練(6位)
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「トリコロール」
使用者:和田 淳(7位)
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しかし、《砕岩を食うもの》は赤いデッキにすべからく入るというカードではなく、デッキを選ぶクリーチャーに数えられるだろう。《砕岩を食うもの》の特徴として、通常のカウンターでは打ち消せない(待機カードであるが《ザルファーの魔道士、テフェリー》であっても、誘発型能力は止められない)、一度待機してしまえば、以後マナは掛からず、テンポで優位に立てるといったものがある。
が、その反面、待機コスト自体が重い。また、即効性が無いため「数ターン後の優位は確立できるが、その場の盤面に対しては何もできない」といった特徴もある。そのため、豊富なマナ、盤面に対する強さという点をクリアできるデッキにおいて真価を発揮する。
その筆頭が「トリコロール」だ。トリコロールは印鑑や2マナランドを使い、マナを伸ばす事に長けている。また、《神の怒り》を筆頭としたボードコントロール、《宮廷の軽騎兵》などの防御的なクリーチャーを用いる事で、《砕岩を食うもの》の即効性のなさを補う事ができる。
また、苦手とするソーラーフレアやトロン系デッキに対して、土地破壊戦略が有効であるというのも大きいだろう。「IR」こと石川 練のデッキは従来のスタンスに近いが、和田のデッキはメインで《壊滅させるものヌーマット》2枚、《爆裂+破綻》を4枚組み込んでおり、土地破壊に特化したスタイルになっている。こうなると、《神の怒り》と《ハルマゲドン》を駆使した往年のプリズンを彷彿とさせるものがある。中長期戦になりやすいコントロール同士の対決において、主導権を握れるこれらのカードの活躍は想像に難くないだろう。
《砕岩を食うもの》に目を付け、土地破壊型のコントロールに移行した青赤トロンも紹介しておこう。
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「青赤トロン」
使用者:板東 潤一郎(23位)
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板東のデッキは《併合》や《燎原の火》を用いており、土地を含めた盤面に対する攻撃的なコントロールを重視しており、特にトリコロールやウルザトロン系のデッキに有利になるよう設計されている。優勝した渡辺のデッキと対比させると分かりやすいかもしれない。青赤ウルザトロンというのは一緒だが、そのコンセプトは全く違うものになっているのだ。板東曰く「神社仏閣を回っていたら、この発想が降りてきた」と、常にオカルトを駆使する板東らしい意見だが、メタゲームを見るに、着想自体は悪くないと言えるだろう。
■《調和》
緑待望の優秀ドロー呪文であり、次元の混乱の緑で構築レベルのカードの一つである《調和》。
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「青緑トロン」
使用者:清水 直樹(5位)
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今回のGP京都では、《調和》を加えた青緑トロンで「シミックの王子」清水 直樹がベスト8入賞を果たしている。この青緑トロンは「セル」と呼ばれており、デッキ作成者は清水自身。清水は、この青緑トロンを駆り、予選ラウンド10連勝を含む完璧な立ち回りで決勝ラウンド進出を早々と決めている。しかし、これは驚く事ではない。すでに、彼のデッキ構築は世界レベルであるという事は証明されており、関東圏では、若手というくくりを飛び越えて、トップクラスの構築センスを持っていることで注目を集めているプレイヤーだ。
この青緑トロンも、構築センスの光るデッキに仕上がっている。例えば、《絹鎖の蜘蛛》や《デッドウッドのツリーフォーク》などだ。特に《デッドウッドのツリーフォーク》などは素晴らしい着想である。
青緑トロンというのは、最終的には《ヴェズーヴァの多相の戦士》を軸とした変異デッキのピクルスコンボ(《セロン教の隠遁者》や《塩水の精霊》との)を決めて勝つようにできている。ただ、サーチシステムを利用している分、コンボパーツの枚数は少なめになっており、クリーチャーが墓地に送られてしまうとコンボが成立しなくなるという問題もあった。しかし、《デッドウッドのツリーフォーク》はそれを解消し、特に除去に対する耐性を高めてくれている。むしろ《ヴェズーヴァの多相の戦士》と組み合わせる事で、無限の回収エンジンを構築することも可能だ。
ピクルスコンボに目を付け、青緑のトロンという形に昇華させた事は、素晴らしいの一言に尽きるだろう。
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「青単変異デッキ」
使用者:東 大陽(3位)
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もう一つ、逆にピクルスコンボを純粋な路線で突き詰めたのがこの東 大陽の使用した変異デッキだ。青単で組まれたこのデッキは、多くの打ち消し呪文とクリーチャーによって構成されている、さながらフィッシュのような動きをするが、それでいて一撃で相手をロックしてしまう刀を隠し持っている。マナが7マナに達した場合、決して隙を見せてはいけないデッキだ。
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「プロジェクトX」
使用者:岩崎 裕輔(準優勝)
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また、《調和》などの影に隠れがちだが、次元の混乱で緑のカードの恩恵を受けたのがこのプロジェクトXである。これは、本当に些細な事のように見え、実は重要な事だが、《魂の管理人》が《本質の管理人》へと変わっている。プロジェクトXの勝ちバターンは無限ライフ、無限トークンになるのだが、《オルゾフの御曹子、テイサ》のトークンは白、そして白の《魂の管理人》のままだと、2つのコンボが《硫黄の精霊》に完封されてしまう事になるからだ。
今の環境では《本質の管理人》のお陰でこのデッキは存続できているといっても間違いではないだろう。
■《バザールの大魔術師》
《バザールの大魔術師》は基本的に強いカードではない。2枚引いて、3枚捨てる行為はアドヴァンテージを得ていないからだ。しかし、この捨てる行為に意味がある場合、《バザールの大魔術師》はタップのみで2枚引くという最大の効率を持ったエンジンとなりえる。
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「発掘デッキ」
使用者:高橋 純也(10位)
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エクステンデッド環境では、発掘を使ったビートダウンデッキに「フリゴリッド」というのがある。ドローで発掘を繰り返し、墓地を急激に増やす事で、第2ターンにはもう《イチョリッド》が殴りかかってくるというデッキだ。その墓地活用型のデッキをスタンダード版にするとどうなるかというのを体現しているのが、この高橋「ラッシュ」純也が使った発掘デッキだ。
そして、墓地を肥やすという手段としてもっとも優秀なのが《バザールの大魔術師》だ。欲しいカードは墓地にあるという思想は、捨てる行為自体がメリットにすらなりえる。ただ、スタンダードには《イチョリッド》は居ない、むしろ、墓地から蘇ってくるクリーチャーすら居ないと言っていいだろう。実際、この発掘デッキは、基本的に墓地を溜める事で、ばかばかしい程に膨れ上がったサイズの《ゴルガリの墓トロール》や《安息の無い墓、スヴォグトース》に《裏切り者の手中》を付けて殴るという、もっとも、単純かつ原始的な手段で相手を倒すようにできている。いや、できていた。
本来、スタンダード版の発掘デッキの勝ち手段はそれだけに集約されていた。
しかし、高橋 純也は考える。
このデッキの潜在能力はこんなものではないはずだ、と。
そうして、できあがったのが《炎まといの天使》と《ズアーの運命支配》を組み込んだ、この新しい発掘デッキだ。《ズアーの運命支配》は発掘を邪魔しない。《ズアーの運命支配》も発掘も同様にドローを置換する行為であるため、自分でどちらを置換するか選ぶ事ができるからだ。発掘を繰り返すこのデッキは、運命に打ち勝つ事ができる、結果的に運命に支配されるのは相手だけになる。ライフの損失も《炎まといの天使》がすぐに補ってくれるだろう。《ズアーの運命支配》を張った段階で、文字通り支配権を得ることになる。ドローのランダム性などは無いに等しい、相手のサイコロは1しかでないが、自分のサイコロは常に6が出るようなものだ。
デッキ構築理念に関して高橋はこう言っている。
高橋 「デッキは自分の子どものようなもの。愛情も無く機械的にデッキを選んでいる人には共感できませんね。僕は自分が使いたいと思うデッキを使うし、無ければ作ります。もちろん勝つためにね」
今回、惜しくも10位に終わってしまったが、これからの活躍が期待できる逸材だ。
■《滅び》
《滅び》。最初に登場してもおかしくない、この次元の混乱のトップレアが、この位置での紹介となるのには訳がある。それは今回のベスト8で、1枚も見かけることが無かったからだ。
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「ソーラーフレア」
使用者:富井 翼(4位)
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もっとも《滅び》が入っていておかしくないソーラーフレアであるが、富井のリストでは採用されていない。とはいえ、このデッキでは、本家《神の怒り》がある以上、《滅び》である必要も同様に無いというのも事実だ。マナコスト以外に、効果に違いは無い。4枚以上の《神の怒り》が必要ならば入るだろうが、それもやりすぎ感の方が強い。
つまり、ソーラーフレアにとって《滅び》はあってもなくてもいいカードに過ぎないのは確かではある。このデッキで、むしろ注目すべきは、《影武者》だろう。この新手のリアニメイトクリーチャーは、普通のリアニメイト呪文よりも1マナ重いが、相手の墓地のクリーチャーも選べるため、《迫害》などの手札破壊と相性がいい。また、対象を取らないため、ピンポイントの墓地対策カードに対して強い(選択肢が1つではダメだが)といった特徴がある。柔軟性があり、思ったよりも活躍するタイプのクリーチャーに挙げられるだろう。
結局、GP京都のベスト8に《神の怒り》は12枚、《滅び》は0枚だった。
しかし、それでも、こう言い放つプレイヤーが居る。
「《滅び》は《神の怒り》より何倍も強い」
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「青黒トロン」
使用者:八十岡 翔太(9位)
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そう言い放つのは、「昨年度のPOY」八十岡翔太だ。GP京都では惜しくも9位という結果に終わってしまったが、そのデッキリストから放たれる一種の「禍禍しさ」は、もはや芸術に昇華されている。普通、デッキリストを見て、そのデザイナーの個人名が特定できるというのはほとんど無いことなのだが、この八十岡 翔太と森 勝洋だけは別格である。デッキから放たれる自己主張が他のデッキとは段違い、それも、2段も3段も違う、別格中の別格なのだ。
それは、今回の八十岡のデッキを見ても分かるのではないだろうか。筆者は一切の情報がない状態でGP京都の全てのデッキリストを一覧したとしても、はたしてどれが八十岡の使ったデッキであるかを言い当てる自信がある。もっとも、今回のデッキに関しては、筆者の理解を超えている部分もあるので、本人にデッキについて少し聞いてみよう。
まず、《滅び》が《神の怒り》よりも強いという点は、「もちろん概念的な問題である」ということだ。八十岡に言わせると、「青い《神の怒り》があれば最強」なのだが、黒でも、手札破壊との組み合わせは凶悪だ。ただ、白に比べれば、黒という色は《神の怒り》があったとしてもタイトであるので、プレイングに自信のある八十岡らしい発言と言えるかもしれない。
そして、デッキリストに目を向けると最初に疑問に感じるのはウルザ地形が3枚づつという点だ。それを「何故4枚では無いのか?」という質問をしてみたが、
八十岡 「ウルザ地形が必ず4枚必要? つまらん固定概念ですね」
と一刀両断されてしまった。
八十岡 「まず、ウルザ地形を何も考えなしに4枚ずつ入れるというのはありえない。結果的に4枚ずつ入れるならいいが、デッキに応じてそこも変える部分でしょう。青黒トロンの場合は、序盤では色マナをある程度必要とするし、早期に揃える事もメリットが薄い。大体、7〜8ターンを目処にトロン地形が揃えば十分。揃える事ばかりに目がいってしまうが、ウルザ地形を入れる事の副作用も考えるとそれがベスト。それに、3枚でも十分揃う」
確かに、デッキを常に円滑に回すための配慮だとすれば、理に適っている。八十岡のマジック理論の深さを垣間見る瞬間だ。また、1枚差しのカードや他のプレイヤーがあまり使わないカードに付いてもこう語る。
八十岡 「普通のプレイヤーは大会で勝ったとか、よく使われているとか、そういった基準に左右されています。左右されていないつもりでも、その手の情報に潜在的に支配、束縛されている事が多い。そのカードの本質的な強さを語っているつもりでも、その『外見』を語っている事がよくあるんですよ。分かりにくいかもしれませんが、マジックのネットワークが発達したせいで、逆に、真に強いカードが埋もれてしまうこともあるという事です。僕は、そういったカードの強さを知っているし、認識している。だから、別に不思議に思うのは周囲の人達で、僕は強いと思ったカードを使っているだけですよ」
また、最後にこう言ってくれた。
八十岡 「皆がどれだけウルザトロンを理解しているか知りませんけど、僕のウルザトロンには百八式まであります」
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