|
福島第一原子力発電所の事故を受け「脱原発」の声が高まっています。
しかし原発をやめても使い終わった「核のゴミ」の処分が課題となります。
福島の事故の後、真っ先に「脱原発」を宣言したドイツは使用済み核燃料など「核のゴミ」の処分で頭を悩ませています。
【細野豪志原発事故担当大臣】
「いわゆる40年運転制限性を導入する」
福島第一原発事故を受けて 運転開始から40年を過ぎた原子力発電所の原子炉は原則『廃炉』にすると決めた日本。
しかし廃炉の作業は長い長い道のりです。
14年前に営業を停止した日本初の商業用の原子炉を持つ「東海原発」はまだ原子炉本体の解体にさえ手を付けられず、廃炉完了は早くても2020年です。

【ドイツ・メルケル首相】
「できるだけ早く再生可能エネルギーに移行します」
去年6月、『脱原発』を高らかに宣言し、10年後にすべての原子炉を廃炉にすると打ち出したドイツも、残った「負の遺産」に頭を悩ませています。
1995年から廃炉作業が行われているラインスベルク原子力発電所。
原子炉はすでに撤去されていますが、現在も低いレベルの放射性廃棄物を一時的に保管した場所の土を掘り返して除染しています。

【EWN(原発解体公社)ヨーグメラー氏】
「発電所そのものの廃炉作業に20年はかかる」
「建物を40〜50年間放置して放射能が自然界レベルまで下がるのを待つ方法も検討している」
解体にかかる費用は日本円で576億円。
当初の見込みより25%も膨らんでいます。
ドイツにある全ての原子炉を廃炉にする費用は1兆1000億円以上とも言われています。
解体で出る莫大な廃棄物とあわせてやっかいなのが使い終わった核燃料いわゆる「核のゴミ」です。
ニーザーザクセン州ゴアレーベン。
ここには核のゴミを一時的に保管する施設があります。
容器に入った核のゴミ。
ドイツの使用済み核燃料の量は原発を全廃すると、これまでのものとあわせて1万8000トン近くになると予想されます。
原子力発電所で使った核燃料が安全なレベルになるには10万年以上かかるともいわれます。
気が遠くなる年月、管理しなければならないことから最終的に捨てる場所は決まっていません。
このためここが行き場のない核のゴミの一時しのぎの場になっているのです。

この町でひときわ目立つ温泉プール施設。
大きな産業のない町に不釣り合いにも見えるこの施設は7億円で建設され、住民の自慢です。
同じ規模の街よりも立派な公共施設、いわゆる「ハコモノ」が並びます。
町の予算の半分以上が「原子力マネー」でしめられているのです。
【ゴアレーベンを管轄するガートー郡・ウルリッヒフローター副郡長】
「町の年間予算140万ユーロのうち80万ユーロを(使用済み核燃料の)中間貯蔵施設の会社から受けとっている。直接的であれ間接的であれ、町のインフラ整備にそのお金使っている」
この町に「核のゴミ」が運ばれるたび、反対派と警察の間で大きな衝突が起きます。
ゴアレーベンの隣町で農業を営むハンス・ツァッホーさんも30年以上前から「核のゴミ」の受け入れに反対してきました。
【ハンス・ツァッホーさん】
「冬でも泳げる温泉プールなんて素晴らしいけれど普通の町は作ることができない。補助金を得ることで『自立』を失った。廃棄物事業に大きく依存してしまっている」
さらにゴアレーベンは「最終的な核のゴミ捨て場」の候補地にも名前が挙がっていました。
【記者レポート】
「こちらのエレベーターは最終処分場の候補予定地にまでつながっています。我々は万が一のためにこのように非常時のためのガスマスク、酸素を携帯して地下まで下ります」

最終処分場の候補地である「岩塩ドーム」の取材を許されました。
この岩塩の層はおよそ3億年前にできたもので、粘土層で覆われていて、捨てた放射性物
質が外に漏れ出しにくいと判断されました。
「核のゴミ」は地下840メートルから1200メートルの深さに埋められる計画です。
10万年以上、安全に封じ込めることができるのか。
調査は慎重に行われています。
「原子力を利用した以上、国民は廃棄物の処分についても責任を負っている」と、この町の幹部は話します。
【ゴアレーベンを管轄するガートー郡・ウルリッヒフローター副郡長】
「原子力発電を使っていながら自分の近くにそういう施設(処分場)を作りたくないというのは非常に大きな間違いであり、自分の子どもの世代にツケを回すことになります。私たちは安全な処分場をドイツ国内で責任を持って見つけなくてはなりません」
去年11月、この町で核のゴミを受け入れることや原子力の利用に反対するデモ行進が行われました。
【デモに参加した人は】
「放射性廃棄物はドイツ以外に運ぶべき」
「処分場の選定はオープンに行うべき。ゴアレーベンはこれ以上候補にしないでほしい」
「原発いらない!」
デモには日本からも俳優の山本太郎さんや福島県に住んでいた家族などが参加し、原子力の危険性を訴えました。
【西片嘉奈子さん】
「福島にいたら病気になっちゃう。病気になったらママを悲しませるし治療にお金がかかる(と子供たちがいった)。福島の子供たちはみんなこんなことを考えながら生きているのです。未来の子どもたちのために今、私は立ち上がり、原子力のない世界を作るために全身全霊をかけます。」
デモに参加した福島出身の大河原さんは、ドイツと事故の当事者である日本の国民の関心の差に思わず涙ぐみました。
【大河原多津子さん】
「日本は原発事故のあとも反対運動が大きなうねりになっていない現実の中で、ドイツは力強く、ある意味羨ましい気持ちも正直あります。どうしてドイツのように私たちはならないんだろうと涙が出てきました」
ドイツ政府はゴアレーベンが最終処分場の候補地という前提を一旦、白紙にして、さらに慎重に様々な場所を調査する方針を表明。
核のゴミ捨て場探しは「ふりだし」に戻りました。
【山本太郎さん】
「『脱原発をしますよ』といっても核廃棄物の問題は終わりがない。一番に言ったドイツでさえもこのような課題を抱えている。脱原発がすすまなければ福島も日本は核廃棄物の置き場になってしまう。それができるもできないも、今の日本を変えるのは日本人しかいない」
除染することで出る放射能に汚染された土。
そして現在、日本は使用済み核燃料をおよそ1万7000tも抱えています。
この行き場のない大量の「核のゴミ」を最終的にどこで処分するか、何も決まっていません。
危険でやっかいな「核のゴミ」を未来の世代に押し付けていいのか…議論が必要です。
|