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自殺:51歳男性、正月に命断つ 死悼み、仲間が松江で偲ぶ会 /島根

 ◇失業、親の死、そして生活保護… 自転車で元気に走り回っていた君を忘れない

 松の内も明けていない4日、松江市内の公衆トイレで、首をつって死んでいる中年男性を清掃作業員が見つけた。死亡推定日は元日。男性は独身で、生活保護を受けながら1Kのアパートで暮らしていた。読書や映画、音楽鑑賞が大好き。友人らは「図書館へ行くために、いつもさっそうと自転車のペダルをこいでいた。人なつっこい姿が忘れられない」と口をそろえる。29日、松江市内で「偲(しの)ぶ会」が開かれ、参加者たちは、男性の好きだったフォークソングを歌って冥福を祈った。【元田禎】

 同市出身のSさん(51)で、高校を中退し、やがて市の臨時清掃作業員になった。福田純二さん(60)=NPO「島根出会い・無縁サポート」理事長=は、その頃、Sさんと出会った。「自分のことは話したがらなかったが、映画や本の話題になると目を輝かせていた」と振り返る。

 しかし、仕事は長続きせず、遺跡発掘の調査アルバイト、シロアリ駆除会社員などを転々とし、そのうち酒におぼれるようになったという。「酔って自転車から落ちて大けがをし、アルコール依存症に陥り、精神科で治療を受けた時期もある。30代で依存症は克服したようだったが」と福田さん。母親を介護しながら作業員をしていた時期もあった。しかし、母親の年金が途絶えて生活基盤がなくなったのか、約5年前から生活保護を受けていた。身元引き受け人が福田さんだった。

 Sさんの携帯電話に、福田さんは正月2日、「温泉に行こうか?」とメールを送った。返事はなく、4日、アパートを管理する不動産業者からSさんの死を知らされた。

 「彼の記憶を何かの形で残したい」。29日、松江市白潟本町のスティックビルで開かれた偲ぶ会には、映画、音楽などを通じて交流があった男女13人が集った。松江キネマ倶楽部(くらぶ)運営委員長の山本和美さん(64)は「彼は会発足当初からのメンバーで、映画の作品、監督、出演者の名前をよく知っていた。彼のおかげで映画を楽しめた」と懐かしんだ。同じ年だった友人男性は、「本当に読書が好きで、100冊くらい本を預かっていた。12月28日にメール交換したばかりで、どうして亡くなったのか、今も信じられない」と話した。

 Sさんはフォークソングが大好きだった。この日は、60~90年代に活躍した高田渡さんの「自転車にのって」などを合唱。森昌義さん(54)は「『今年の元旦は大雪にならずほっとしています』という内容の賀状をもらったばかりだった。その直後に命を絶ったんだと思うと、残念でたまらない」と悔やんだ。

毎日新聞 2012年1月30日 地方版

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