不況が長引く中、公園やガード下などで多くのホームレスが生活している。一宮市で活動しているボランティア団体「のわみ相談所」は、ホームレスや生活困窮者、在日外国人のためにシェルター(一時宿泊施設)を設け、支援に取り組んでいる。どんな思いで団体を設立し、どういった活動をしているのか、所長の三輪憲功さん(65)に聞いた。【渡辺隆文】
--相談所設立のきっかけを。
95年春ごろ、名古屋市の公園で1人の男性を見かけた。公園のベンチに横たわり、自転車の両輪がパンクし、前カゴにパンの耳が少し入っていた。その光景を私を含め多くの人が眺めていた。いつか誰かが声をかけると思ってしばらく見ていたが、2時間たっても、3時間過ぎても、みんな避けるように通りすぎていった。私は、この男性を自宅に連れて帰った。これがきっかけになった。
--活動内容は?
定職や住居をなくした人に、仕事を紹介したりしながら社会とのつながりを取り戻してもらえるようにしている。この他にも、解雇された外国人労働者らの相談に乗っている。
ただ、住所がなく、連絡が容易ではない人に就職を紹介するのは大変だ。食事付きの住居を提供し、仕事を紹介する。ある程度の蓄えができると格安のアパートに転居してもらう。しかし、給料を手にするとそのままどこかへ行ったきり、連絡が取れなくなる人がたまにいる。ここに入居する人のほとんどがアルコールやギャンブルの依存症。入居の条件に「ギャンブルと施設内での飲酒は厳禁」といった誓約を書いてもらっているのもそのためなんだが……。なかなか守らない人もいるんです。
--何人が自立した?
大工や塗装工、引っ越しの手伝いなど自分の得意分野で仕事をしてもらえるようになり、これまで約400人が自立した。入所者の65%は生活保護を受けずに自力で生活している。よく立ち直ったと思います。
--相談所を設立して変わったことは。
最初のころはなかなか認めてもらえなかったが、徐々に認知されるようになった。今では支援してくれる人からお米をもらったり、地元の町内会からもさまざまな物を頂けるようになった。
ただ、私たちの団体は、早くなくならないといけない。行政がもっと手を差し伸べてほしい。お金を出せばいいというものではない。行政と私たちが一体となって何とかホームレスと言われる人たちを減らしていかないと。そう考えるともう少し続けていかざるを得ない。そのためにも入所者に安定した仕事を紹介し、自立へ後押ししたい。
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■人物略歴
名古屋市出身。一宮市内に4カ所のシェルター(3食付きで1日約700円)があり、約35人が生活している。炊き出しや断酒会も月2回開催する。人種差別や残業代未払いなどの労働相談といった外国人の支援も行っている。趣味はクラシック音楽鑑賞。
毎日新聞 2012年1月23日 地方版