東日本大震災後の復興需要の拡大など新たな消費行動を受けて、東北の小売り各社が経営戦略を見直している。変化した消費者のニーズを反映した店づくりを進め、出店計画を大きく書き直した例もある。一変した市場にいち早く対応し、成長につなげようとしている。
■家電売り場設置
掃除機にコーヒーメーカー、炊飯器――。ドラッグストアチェーンの薬王堂が昨年10月、盛岡市郊外の新興住宅地で開業した盛岡向中野店には、医薬品や衛生用品と並んで家電製品が陳列してある。薄型テレビやエアコンなど大きな商品はないが、客が持ち帰れるサイズの商品を中心に10種類以上を取りそろえた。
来店客の反応も上々だ。機能を絞り込んで価格を5000円台に抑えた電子レンジには「これは安い」との声があがる。
ドラッグストアだからといって医薬品だけにこだわる必要はない。この店は医薬品などが並ぶのは入り口付近だけ。中程から衣料品や食品、家電コーナーが占めている。
東日本大震災の津波で損壊し、昨年12月にようやく営業を再開した釜石鵜住居店(岩手県釜石市)にも家電の売り場を設けた。「小商圏バラエティ型コンビニエンス・ドラッグストア」と名付けた新型店舗を、今後も各地に出店していく方針だ。
東京電力福島第1原子力発電所から30キロメートル圏内にあるホームセンター(HC)「ダイユーエイト原町店」(福島県南相馬市)。店内の一角には広さ約1000平方メートルと小型スーパー並みの広さを持つ食品売り場があり、飲料や冷凍食品、酒などがずらりと並ぶ。
元は別会社が経営していた食品スーパーが入居していたが、東日本大震災後に撤退。昨年4月からダイユーエイトが直営に切り替え、加工食品など品ぞろえを大幅に増やして営業をしている。
原町店では震災以降の衣料品の売上高は前の年の約3倍、コメも約2倍に急増している。浅野健二店長は「顧客の声をもとに、震災前は少なかった食料や衣料品の品ぞろえを大幅に増やしている」と話す。
東北の小売店で業種間の垣根が消え始めている。震災や原発事故で住んでいた街を離れる住民が増え、被災地では人口減少が加速する恐れがある。商圏人口が減っても店の経営を成り立たせるには「幅広く商品を置く必要がある」(薬王堂の西郷辰弘社長)。食品を扱うHCなどは全国的な傾向だが震災を経て東北では深化している。
被災地では震災から10カ月が経過した今もなお、休業したままの小売店も多い。ダイユーエイト原町店がある南相馬市原町地区も、休業中の食品スーパーや大型衣料品店が目立つ。周囲に店がなくなり、車で30分かけて日常の買い物に出る住民もいる。
■小さな商店連携
店の品ぞろえを増やせば、住民の不便さを解消でき、店の売り上げも増やせる。ダイユーエイトは食料品の取扱店を増やし、ホームセンターのサンデーは大船渡店(岩手県大船渡市)などで食品コーナーのスペースを3倍に広げた。コンビニエンスストアのローソンは被災地の店舗に鍋や茶わん、箸を置いている。
小さな商店が連携する動きもある。宮城県立女川高校(宮城県女川町)のグラウンドに3月、仮設商店街が開業する。食品や衣料品、雑貨店など50ほどの事業者が入居する計画だ。
このグラウンドでは昨年12月から金融機関や郵便局、交番が業務を始めている。仮設商店街が完成することで大型ショッピングセンターに引けを取らない商業・サービスの集積が実現する。同町商工会の担当者は「ここ1カ所で消費者の幅広いニーズを満たすことができる」と胸を張る。
スーパーやホームセンターなどそれぞれの業種の中で競争してきた小売業界。東北では複数の業種を巻き込みながら、業種の壁を越えた新たな競争が始まった。生き残りを目指して、消費者のニーズを反映させた店づくりが進んでいる。
ダイユーエイト、ドラッグストア、西郷辰弘、ローソン、コーヒーメーカー、東京電力、薬王堂、郵便局
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