実際、ユーロ圏諸国は2009年に自動安定装置を働かせた。そのおかげで、景気後退は非常に深刻だったとはいえ、少なくとも後退局面が過度に長引くことは避けられた。
■目標超える財政赤字でも景気後退
国際通貨基金(IMF)も先週初め時点では、スペイン政府の立場に同意していた。スペインの新聞エル・パイス紙は、さらなる財政調整は市場の緊張を和らげるどころか逆に悪化させるため望ましくないというIMF高官の発言を引用していた。
IMFはスペインについて、景気後退が2年間続き、財政赤字は昨年の国内総生産(GDP)比8%から、今年は同6.8%、来年は同6.3%に低下すると予想している。つまり財政赤字が目標を大幅に超える場合でも、スペインは2009年の景気後退とほぼ同じくらい深刻な景気後退に陥る。
ところがスペインのマリアノ・ラホイ新首相は先週ベルリンを訪問した際に、財政赤字を2012年にGDP比4.4%、2013年に同3%まで削減するという、合意済みの目標に対する政府のコミットメントを改めて表明した。ラホイ首相は今年、IMFのベースライン予想に対して赤字を追加で2.2%ポイント削減し、来年はさらに3.3%ポイントもカットしたいと考えている。これだけの赤字削減を、経済が縮小している間にやろうとしているのだ。
スペインはギリシャがたどったのと同じ道を進んでいる。もちろん、スペインの方が経済はかなり健全だ。だが一方で、スペインはギリシャにはなかった問題を抱えている。すなわち、多額の債務を抱えた民間部門だ。これが、赤字を過剰に削減する政策が大きな害を及ぼしかねない理由だ。
■公的部門が支えないと深刻な恐慌も
野村総合研究所の主席研究員、リチャード・クー氏は最近、米国、英国、ユーロ圏におけるデレバレッジ(負債圧縮)の影響について検証した(注)。スペインは同氏が「バランスシート不況」と呼ぶものの極端なバージョンを経験しており、その規模は米国や英国よりはるかに大きいという。
2007年第3四半期以降、スペインの民間部門はGDP比で債務を17.2%削減した。一方、公的部門はGDP比で債務を11.8%膨らませ、民間部門のデレバレッジを部分的に穴埋めした。その差は、対外部門のプラスの貢献という形でもたらされた。言い換えると、経常赤字の減少によってもたらされたわけだ。
1990年代の日本と同様、欧州諸国の政府は深刻な恐慌を回避するために、民間部門がデレバレッジを進める間、経済を支えることが不可欠だとクー氏は主張する。
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