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【東京】

最後まで「良い靴を」 そごう八王子店 あす閉店

笑顔で靴の説明をする田中さん=八王子市で

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 JR八王子駅ビルのそごう八王子店(八王子市旭町)が三十一日の閉店を控え、普段の倍以上の客でにぎわっている。慌ただしく接客する店員たちの中に、高校を卒業してから二十年、ずっとこの店で働いてきた田中友紀さん(39)がいる。「婦人靴のカリスマ店員」といわれる田中さんは「最後の日までお客さまに良い商品を届けたい」と話す。 (加藤益丈)

 「本当に悲しかった。自分の店が終わってしまうよう」。昨年二月、そごう八王子店の閉店を知ったときのショックは大きかった。

 田中さんが入社したのはバブル経済の勢いが残る一九九一年。同年度の八王子店の売り上げは四百九十三億円と過去最高を記録した。だが、近年は二百億円台に低迷していた。

 田中さんの元には毎月のように客から感謝の手紙が届く。普通は半年に一通もあれば十分とされる中で、ずばぬけた数字だ。「足が痛い」と相談に訪れた客に適切な靴選びを助言して、「靴を全部買い替える」と言われたこともある。「田中さんはいますか」と指名する客までいるという。

 人気の理由の一つは知識の豊富さだ。国内にわずか約四百四十人とされる、靴選びの専門家シューフィッターの上位資格「バチェラー」を取得している。「お客さまとの会話から本当に欲しいと思う物に気づき、アドバイスできる」(販売促進担当者)とコミュニケーション力の評価も高い。二〇一〇年秋には販売員の指導係「トレーナー」に昇進していた。

 今後は別の店に異動する予定だ。閉店まで一カ月を切った今月に入り、十年ほどのなじみ客から「どこまでも付いていく」と励ましの手紙も届いた。今は、閉店セールで殺到する客に対応するため、売り場に戻っている。「いらっしゃいませ」。複雑な思いを振り払って最後まで笑顔で接客している。

 

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