ソニー、富士フイルムホールディングス、テルモが30日までに、損失隠しに伴う決算訂正で自己資本が目減りしたオリンパスに資本・業務提携を提案した。世界シェアの7割を握るオリンパスの内視鏡事業を足場に少子高齢化などで拡大する世界の医療ニーズを取り込み、成長戦略の柱に据える狙いだ。オリンパスの上場維持が決まり提携のリスクが下がったことを受け、業種の異なる3社が名乗りを上げる異例の争奪戦が始まった。
富士フイルムの中嶋成博専務執行役員は30日開いた2011年4~12月期決算会見で、オリンパス側に資本・業務提携の提案書を同日付で送ったことを明らかにした。
テルモの羽田野彰士執行役員も同日の決算会見で、2.1%を出資するオリンパスについて「今後も関係は強化していく」と発言。出資比率の引き上げを検討していることを明らかにした。ソニーもオリンパスに対して最大で2~3割の出資を目指す方向で資本・業務提携を提案済みだ。
ソニーは医療分野でほとんど実績がない。10年2月に細胞分析を手掛ける米バイオベンチャー買収を発表。11年9月には医療診断機器開発の米ベンチャー買収も発表したがいずれも小規模。
しかし同年1月には医療機器メーカーへの製品販売を統括する「メディカル・ソリューション事業部」を立ち上げ、今後3~5年をめどに医療分野の売上高を1千億円以上に引き上げる目標を掲げる。
デジタルカメラの「電子の目」である画像センサーで高い独自技術を持っており、提携を通じてオリンパスの内視鏡事業との相乗効果を狙っている。
富士フイルムは00年前後から主力だった写真フィルムの市場が“蒸発”。それ以降、医療機器や医薬品などのライフサイエンス分野に経営資源を集中投入してきた。過去約10年で総額約7000億円を投じ約30社を買収したが、その過半を同分野につぎ込んだ。
内視鏡ではオリンパスの70%に次ぐ15%の世界シェアを握る。鼻から入れる細型の「経鼻内視鏡」などが中心のため、口から入れる内視鏡を得意とするオリンパスと相互補完できるとみている。中嶋専務執行役員は「独占禁止法に抵触せずに相乗効果を発揮できる方法がある」と自信を見せた。
オリンパスとの距離が最も近いのが医療機器国内大手のテルモ。同社はオリンパスに2.1%を出資する大株主。オリンパスとは現在、人工骨の材料の共同研究などで協力関係にある。
今後具体的な事業計画を策定し提携関係強化を検討している。患者への身体的負担が少ない新領域の研究開発・生産で連携を目指すほか、互いの販売ルートなども活用できるとみており、「両社が提携するメリットは大きい」(羽田野執行役員)としている。
3社にとってオリンパスとの提携は成長戦略のカギになる。今後は上場維持が決まって「存続の危機」を乗り切ったオリンパスが提携相手を「選ぶ」、異例の展開になりそうだ。
オリンパス、富士フイルム、ソニー、テルモ、富士フイルムホールディングス
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