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揺れる古里の「声」記録 陸前高田出身の大学生が映画製作
 | 「きょうを守る」の撮影風景。被災者の戸惑いや本音が記録されている=2011年7月 |
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東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市出身で、山梨県立大国際政策学部3年の菅野結花さん(21)=甲府市=が、故郷の被災者の声を集めたドキュメンタリー映画を作った。母親や、帰省した同級生たち、その父母ら9人にインタビューし、揺れる思いを記録した。映画はDVD化し、上映希望者に提供する。
映画「きょうを守る」では、流失した実家跡地に立つ母佳江さん(55)が最初に登場する。津波について語る同級生の母親は涙ぐんで「顔を洗う際に(水が)怖くなる」と明かし、別の母親は先の見えない不安を訴えた。故郷を離れて暮らす同級生たちは、周囲で震災の話題が出ないことへの戸惑いを口にした。 菅野さんは震災時、甲府市内にいた。家族4人は無事だった。昨年3、5月に帰省し、避難所で手伝いをするうちに「今を生きる被災者の姿を記録したい」と思うようになった。 同学部の前沢哲爾教授が甲府市で毎年開かれる「やまなし映画祭」の事務局にいる縁で、映画祭のボランティアスタッフを務めていた。昨年5月に映画監督の崔洋一氏を囲む会合があり、思いを伝えると、崔氏から「自分の手で撮るべきだ」と映画製作を勧められた。 企画書を出し、映画祭での上映が決まった。前沢教授のビデオカメラを借り、昨年7、8月に計5日間、撮影。編集やナレーションも1人で務め、11月の上映日当日に完成した。 上映時間は1時間10分。やまなし映画祭を皮切りに、都内や山梨県内の震災復興イベントなどで上映された。菅野さんは「震災の記憶を風化させず、被災者の思いについて考えるきっかけにしてほしい」と話す。 上映会へのDVD提供は原則として有料だが、開催趣旨によっては無料の場合もある。上映希望は山梨県立大地域研究交流センターの電子メール (ucre@ml.yamanashi−ken.ac.jp) で受け付ける。
2012年01月30日月曜日
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